中国版Amazon「アリババ(Alibaba)」のブロックチェーンへの取り組み

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中国版Amazon「アリババ(Alibaba)」のブロックチェーンへの取り組み

中国最大のECサイト「阿里巴巴集団(Alibaba/アリババ)」の創業者であり、圧倒的なカリスマ性で人気を集めた「马云(Jack Ma/ジャック・マー)」が2018年9月10日に会長職からの引退を表明したニュースは世界中に衝撃を与えました。

もっともこのジャック・マーが実はブロックチェーンに非常に注目し、積極的な実証実験を繰り返していたことは意外と知られていません。しかし中国国内で圧倒的な存在感をもつIT企業のブロックチェーンへの取り組みを知ることは、中国とブロックチェーン双方への理解を深めることにも繋がります。

そこで今回は彼およびアリババがブロックチェーンの分野においてどのような遺産を残してきたか、見ていきたいと思います。

ブロックチェーン分野にも取り組む“アリババ(Alibaba)”とは

アリババ(Alibaba)公式ロゴ
出典:https://www.alibabagroup.com/

事業内容

アリババは中国最大のIT企業で1999年にジャック・マーによって創立されました。240余りの国家・地域において5000万人以上の会員を保有しています(Alibaba公式)。

事業内容としては中国版Amazonとも言えるECサイト「淘宝網 (Taobao.com)」、中国版Google・Yahoo!とも言える検索サイト「Yahoo!中国雅虎」、日本で言うLine PayやKyashのような決済サービス「支付宝 (Alipay)」などを展開しています。

いわば単なる企業の枠を大きく超えて中国のインターネットサービス全体を覆うインフラとして機能していると言えるでしょう。

アリババの公式サイトはこちらです(中国語)

企業規模

アリババはインターネットサービスの中国国内での普及に伴い、2018年上半期の決算においても大幅に収益を伸ばしています。総収入は122億米ドル、営業利益は12億米ドル、 フリーキャッシュフローは40米ドルで、中国国内で騰訊(中国版LINEともいわれる「Wechat」を提供している企業)に続き、2位の時価総額を記録しています。

世界時価総額においても、常に時価総額10位以内には入っており、米国 FacebookやGoogleと抜きつ抜かれつの状態であることを考えると、いかに巨大な企業であるかが伺い知れます。

このような巨大企業であるアリババですが、ブロックチェーンについてどのような研究・事業展開をしているのでしょうか。

特許出願数世界一

民間企業が技術開発にどれくらいの力を入れているかを測る時には、単にキャッシュフローに注目するよりも、特許の申請数を見るのが効果的です。本当に研究開発を重視している企業はその技術を知的財産として守るために保護を求める(=特許の申請を積極的に行う)ためです。

そのような視点で2018年の世界のブロックチェーン特許出願数ランキングベスト100を見てみると、アリババはIBMやBank of Americaといった米国の大企業を抑えて堂々の一位を獲得しています。その数なんと90個で、IBMの89個と並び、米中それぞれのブロックチェーン開発をリードしています。

関連:中国アリババ、2018年ブロックチェーン関連特許出願数で米IBM上回りトップに

そしてアリババは単なる特許の研究開発のみならず、多様な業界でのブロックチェーンの実用を目指しています。アリババグループの中にはいくつかの子会社と複数サービスがありますが、それぞれにおいて独自にブロックチェーンが利用できないか考えているようです。

ブロックチェーン関連の特許申請の具体例

以下で具体例を見ていきましょう。

最近申請された特許としては要求されたパケットに対してネットワーク内のブロックチェーンノードを使用してコンセンサス検証を行うことができる技術(参考)などがあります。これは単なるパブリックチェーンではなく、アリババ独自のオリジナリティを出しているプライベート性が特徴となっています。

またトレーサビリティの分野では、2018年3月、アリババのECサービス「天猫」においてブロックチェーンを導入し、越境輸入品の物流情報の追跡管理を行うことで不正輸入・偽装品輸入の防止を目指す旨を発表しました。 公式の証書をブロックチェーンで記録する技術としてアリババ傘下でAlipayを提供する「Ant Financial(アントフィナンシャル)」が2018年4月に中国銀行との戦略的パートナーシップを締結し、住宅リースに関連する分野の金融サービスをサポートすることにしました。

同じく「Ant Financial」は、越境送信に関しても2018年6月25日に世界初のブロックチェーンベースのeウォレット国際送金サービスでの送金を完了しました。またデジタルコンテンツの著作権をブロックチェーンによって保護したり、サプライチェーン強化のための物流・企業サービスへのブロックチェーンの導入も進めており、これらのいずれについても根幹技術に関しては特許の申請をしています。町中をアリババのブロックチェーンが覆う日も遠くないかもしれません。

関連:アリババが香港-フィリピン間の送金サービスをローンチ、送金時間はわずか3秒

参考:IPRdaily

ブロックチェーン無きアリババは死んでしまうだろう

このようなアリババの積極的なブロックチェーンの活用には、ジャック・マーのブロックチェーンへの期待が大きく反映しています。

彼はビットコインが今後20年ないし30年の間に既存の金融システムを大きく変革することに加え、信用およびセキュリティが社会に非常に与えるインパクトもより大きくなるだろうと見ています。ゆえに、これら全てを実現できるブロックチェーンに対して金融業界のみならずあらゆる業界での活用を期待すべきであると見ているようなのです。

彼がブロックチェーンに寄せる期待は非常に大きいようで、「ブロックチェーン無きアリババは死ぬ(没有区块链的阿里巴巴,会死的)とすら述べています。

実際にアリババはグループ全体で1日に数十億もの取引を行う巨大企業であり、今後の事業拡大に向けてデータの取り扱いに関するセキュリティの問題やユーザーのプライバシーなど、考慮すべきリスクが大量に出現しています。

その中で、あえて中央集権型プラットフォームを提供しているアリババこそが分散型思考のテクノロジーであるブロックチェーンを取り入れるべきであると考えるジャック・マーの姿勢は非常に柔軟であると言えます。

ジャック・マーの遺産「ブロックチェーン」とアリババ

ジャック・マーが手がけたアリババには多くの財産があります。日本人にも馴染み深い「Alipay」を提供する「Ant Financial」、オークション・ショッピングサイト「淘宝(Taobao)」などはその代表例だと思いますが、さらなる事業の進化のためにブロックチェーンというプロトコルレイヤーの開発に目をつけた彼の先見性には目を見張るものがありますし、一方でジャック・マー無き後のアリババがどのように今後ブロックチェーンの活用を行なっていくのか、注目です。

参考:jinse

  • Cryptoeconomics:監修
  • CryptoAge:Meika Miyamoto氏

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