仮想通貨関連の技術、とりわけブロックチェーンは金融市場あるいはインターネットとモノの関係を大きく変える可能性を持っている。ブロックチェーン関連技術の研究開発には多くの国が乗り出しているが、その中でもひときわ大きな影響力を持つのが中国である。
アリババグループがブロックチェーン関連特許申請数で現在1位
中国企業の中でもひときわ大きな存在がアリババグループで、アマゾンと並ぶ世界最大手ECサイトのアリババを運営し、自社決済サービスであるアリペイは5億人以上のユーザーを抱えている。
日経アジアレビューでも報じられた調査報告によれば、アリババ社は2017年に登録されたブロックチェーン関連特許のうちの10%程度を占めていたことが明らかになった。
またIPR Dailyの報道によれば、2018年にアリババグループが申請した特許は90件で、米IBM社を上回り、現在特許申請数において1位となっている。
ブロックチェーン関連特許数でアメリカに迫る中国
ブロックチェーン関連特許の総数ではアメリカがリードしているものの、中国はここ数年、国家単位でブロックチェーン技術の開発研究に乗り出し、アメリカに迫る勢いを見せている。
仮想通貨や仮想通貨を利用した資金獲得手段であるICOに関しては当初から非常に厳しい規制案を敷いてきた中国だが、その基幹技術である、ブロックチェーンに対しては少し風向きが異なる。
2018年5月28日には習近平国家主席が、ブロックチェーンを既存の経済の在り方を一新する新たなテクノロジーであると語り、国家を挙げて研究と開発にあたるとの声明を発表している。
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アリババ社が中国国内でブロックチェーン利用の新たなプロジェクトを始動
こうした中でアリババ社は活発に活動を続けている。アリババ社は相次ぐ食品偽装を撲滅するためのブロックチェーンを利用したプロジェクトを2017年に立案。2018年4月から、会計・アドバイザリー大手の英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のニュージーランドとオーストリアにある拠点と提携を結び、試験運用を開始していた。
このプロジェクトに加えて、中国ローカルメディア「tech.huanqiu.com」の2018年8月28日の報道によれば、良質な米の生産地として知られる中国黒竜江省五常市はアリババ傘下企業である、アリペイ決済プラットフォームを運営している「アントフィナンシャル」とブロックチェーンをベースとしたパートナーシップを締結。ブロックチェーンを利用した食品偽装の防止、また消費者向けに食品の品質を保証するというプロジェクトを始動した。
同プロジェクトはIoTとブロックチェーンソリューションを活用したものだ。今後は五常市で生産された米のすべてをアリババ社が運営するBtoC向けECサイト「天猫(Tmall)」で販売することを目指している。
Tmallにはすでに、消費者がQRコードを介して食品の生産情報などを見ることができるサプライチェーンを作り上げており、食品偽装による影響を受ける五常市の農家を救うことが大きな目的のようだ。
五常市での取り組み以外にも、ヘルスケアの分野でもアリババ社は新たなプロジェクトを同時進行的に立ち上げている。今後も同行に注目していく必要がありそうだ。
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