ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?招待されたので現地まで行ってみた

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ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?招待され現地に行ってみた

ベラルーシ大統領令「仮想通貨合法化&5年間非課税」

昨年末、東欧のベラルーシ共和国で「デジタル経済の発展に関する法規案」がアレクサンドル・ルカシェンコ大統領によって署名された。この法規案の「仮想通貨合法化、非課税」という内容は日本でも大きく話題となり注目された。私のTwitterでも過去トップクラスの反響があり、たった1投稿で20万以上のインプレッションを記録した。

さて今回の法規案の一番の目的は世界のIT企業をベラルーシに誘致し、支社の設立を促進することであり、具体的には下記のような内容が盛り込まれている。

  • 個人がベラルーシルーブル、外貨、電子マネーを使用してトークンを保有、購入、販売すること、マイニング、トークンの譲渡、交換、相続を認める。
  • トークンを含めた取引は事業とみなされない。そのような取引の参加者は優遇税制の対象(所得税、収益税、付加価値税が非課税)となる。
  • マイニングや取引所とオペレータの事業は、ハイテク分野38種の一つと規定される。
  • 前項のような活動を行う企業はハイテクパークの居住企業となることができる。
  • ハイテクパーク居住企業はベラルーシ国内であれば同様の優遇が適用される。
  • ハイテクパーク居住企業が雇用したIT専門家は入国ビザが免除される。

さらに官僚的な面でも手続きが簡素化されるためペーパーワークを少なくできる。例えば資金移動に関連する金融取引に関してこれまで申請制であったのが報告制となる。

この法規案に対し、ロシアでも「恐らく一部のロシアのマイナーとクリプト投資家はベラルーシへ移るだろう」と話題になった。ロシアにとっては自国の規制を作る上で、隣国の試みを参考にできることはメリットである。これがうまくいった場合にのみロシアでも合法化に向けて進めるという判断ができる。

謎に包まれた国ベラルーシ

日本でベラルーシという国はほとんど知名度がなく、名前を聞いてもどのような国かイメージできる人は少ないだろう。実際ベラルーシは近年まで農業や一部の機械産業を主な産業とした、目立った特徴のない牧歌的な開発途上国であった。

アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は外国から「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれることがある。しかし国民からは「父」と呼ばれることもあり、意外と国民の満足度は高いようだ。

実際、今回初めてベラルーシを訪れてみて、元々抱いていたイメージと大きく違い驚いた。道にはゴミひとつなく景観は非常に綺麗。一度もホームレスも不良も見かけることがなく治安も最高だった。

夜になると若者たちはテラス席のある現代的なバーで音楽を聴きながら楽しそうに騒いでいる。そこには日本や他のヨーロッパと全く変わらない開放的な雰囲気があった。

▼以下、ベラルーシで撮影した写真を紹介

ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?現地に行って確かめてきた

ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?現地に行って確かめてきた

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ベラルーシの未来を担うIT産業の中枢、ハイテクパークとは

現在ルカシェンコ大統領が主要産業である農業よりも優先して取り組んでいるのがIT産業である。元々ベラルーシには旧ソ連時代から優秀なエンジニアが多いという環境があったが、IT強化の方針を決定的に強めたきっかけの一つはベラルーシ発の大手IT企業『EPAM system』の成功だと言えるだろう。

EPAM systemは1990年代にベラルーシでITアウトソーシング企業として創業した後、社員1万数千人の規模にまで成長、2012年には東欧のアウトソース業界として初めてニューヨーク証券取引所への上場を果たした。ベラルーシを代表する国際的大企業がIT分野から生まれたのである。

ベラルーシ全体としても昨年IT輸出額として過去最高の10億ドルを達成し、さらにIT強化の機運が高まっている。

ベラルーシハイテクパークに招待される

私がベラルーシのクリプトに関心を持っていた折に、友人が親しくしているという過去にベラルーシ大使館に勤務していたベラルーシ人と会う機会があった。その時に私の活動(クリプト関連)に興味を持っていただき、昨年の大統領令の話題で盛り上がったのだが、なんと後日彼を通じてハイテクパークから、ベラルーシに来て情報交換をしないかという話がきた。

ベラルーシには日本の情報がほとんど入ってこないため、非常に興味があるという。こうした経緯でGW前後の休暇を利用してはるばる東欧ベラルーシ共和国へ初めて訪れることになった。

ハイテクパークはヨーロッパ風の綺麗な建物が立ち並ぶミンスク都心からタクシーで10分ほど離れた、オフィスビルと緑が調和したような場所にある。ハイテクパーク周辺は複数のオフィスビルで構成されていてビルの正面には自動車数百台分の大きな駐車場が広がっている。ハイテクパークのビルは10階建てだが先述のEPAMsystemがそのうち実に6フロアを占めている。

ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?現地に行って確かめてきた

一階の守衛室を通過し、エレベータで最上階まで上がったところにハイテクパーク管理事務局は入居している。

ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?現地に行って確かめてきた

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ハイテクパークプレジデントインタビュー

ミーティング(インタビュー)には以前よりメールでやり取りをしていたヴァイスプレジデントのマキシム・ワルチェニャ副事務局長と、プレジデントのアンドレイ・コソフ事務局長が参加した。彼らは普段ハイテクパーク入居希望企業の審査や、入居企業の管理をしている。(※プレジデント=組織や団体の代表的存在)

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Q.ハイテクパークの規模とは?

「ハイテクパークは2005年に設立され、現在198社の企業が登録しています。平均で年に30社ほどの申し込みがありますが、今年は大統領令の影響でそれが加速して半年の時点ですでに50社からの申し込みがきています。例年の3倍のペースですね。また今年は海外の申し込みが多いのが特徴で全体の3割ほどを占めています。」

Q.昨年末の“仮想通貨合法化大統領令”の海外からの反響は?

「特に欧州からの反響が大きかったです。アジアからは韓国から1社問合せがあっただけで、日本から具体的なアプローチはありません。欧州ではエストニアがIT分野で積極的な取り組みをしていて目立っていますが、私たちはクリプト関連で先駆的な取り組みを打ち出していくことで、東欧におけるリーディングポジションを確立したいと考えています。」

Q.ハイテクパークに入居する、特に大きなメリットは?

「重要なポイントを2つ挙げるのであれば”税制面”と”ペーパーレス”という点でしょうか。ベラルーシでは通常13%の税率が課されますが、ハイテクパーク入居企業の場合、それが9%に優遇されます。

またこれまでベラルーシ登記の企業は海外銀行口座を開設するのに事前の申請が必要でしたが、事後報告のみでよくなります。さらにベラルーシ国内企業にとってもいくつかのルールが緩和されるメリットがあります。」

Q.どのような企業が入居している?

「世界的企業ですとニューヨーク証券取引所に上場しているEPAMsystemや、世界で5000万人以上がプレイするWorld of Tanksを開発しているWargaming.netなどが入居しています。Facebookに買収されたARアプリMSQRDを開発しているMasquerade Technologies, Inc、オフラインマッピングシステムのMaps.meなども有名です。」

Q.仮想通貨合法化・非課税を発表するまでの経緯について教えてください

「クリプト領域は世界的に注目度が高く、ITを強化しているハイテクパークとしては何かしらの取組みを打ち出したい、ということで2017年の夏くらいから検討を開始していました。その後、大統領とのミーティングがあり、そこですぐ青信号が出ました。」

Q.仮想通貨合法化・非課税が施行について教えてください

「昨年末の大統領令発表以降、様々な反応をいただきました。取引所の設立などクリプト関連の問い合わせは40件以上きています。しかし発表から現在まで世界中で様々な出来事があり、新たな議論が生まれ状況は変わっています。

仮想通貨に対する規制については世界各国で重要なテーマになっており、ベラルーシも国際社会のメンバーの一員である以上、マネーロンダリングへの対策などを徹底する必要があります。

その意味では昨年末の大統領令発表には細かい内容についてが規定されておらず、追加での議論が必要だと考えています。特に今は海外から審査が入る時期でもあります。そうした課題が解決されてから、実際の受付を開始することになると思います。」

Q.現在ベラルーシで仮想通貨関連の事業を行う場合はどうなる?

「IT事業の一つとしてハイテクパークに入居する必要があり、それ以外では原則的にクリプト関連の事業は認められていません。ハイテクパークへの入居申請はそれほど複雑ではありません。必要なのは会社の登記情報と最大15ページのビジネスプランです。提出されてから、入居申請を審査する部署にて2回の会議によって検討され、最短で40日後には入居が認めらます。」


ハイテクパークへの入居手続きはシンプルであるものの、実際は100以上の企業が登録を待っている状態であり、実際に入居企業として認められるためにはハードルがありそうだ。

さらに “仮想通貨合法化・非課税の大統領令” についても実際の運用に向けて内容の変更や詳しい内容の規定などの調整が必要になるため、すぐに施行されるわけではないかもしれない。

しかしいずれにしてもベラルーシのIT、クリプト分野に向けた積極的な姿勢は、これから法整備を進めていく諸外国にとって今後注目していく価値があるだろう。引き続き新しい情報を追いかけていきたい。

ベラルーシの仮想通貨合法化案、5年間非課税の実態とは?現地に行って確かめてきた