ブロックチェーンと人工知能の融合が奏でる近未来の旋律 ~NYの「Japan×AI&Blockchain」レポート

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ブロックチェーンと人工知能の融合が奏でる近未来の旋律 ~NYで開催された「Japan×AI&Blockchain」レポート

去る10月11日、ニューヨークの国連本部近くあるジャパン・ソサイエティにて「Japan×AI&Blockchain」が開催されました。当日は米南東部を襲った大型ハリケーン・マイケルの影響が心配されましたが、開場前からロビーでは活発な意見交換がなされ、悪天候を吹き飛ばすかのような熱気が漂う大盛況となりました。今回はカンファレンスでの模様を交えながら、中心的な話題となったブロックチェーンとAIの融合にスポットを当てて最新のトレンドを紹介します。

AIは人間よりも上手にブロックチェーンを作れる

基調講演を務めたのはIBMでブロックチェーン事業の研究・開発を手がけるRoman Vaculin氏です。同氏は既に100本以上の論文と特許を取得している専門家ですが、最近はブロックチェーンとAIの相互作用に注目しているとのこと。ブロックチェーンとは何か、AIとは何かについて一通り説明した後、いよいよ「AIがブロックチェーンにできること」、そして「ブロックチェーンがAIにできること」についての解説へと移りました。

まず、意外と語られることの少ないAIをブロックチェーンにどう活用するのかですが、Vaculin氏によるとAIはブロックチェーンのより効率的な利用を可能にするとのことです。

よく言われるように、コンピュータは計算するのは得意ですが考えることは苦手です。そして、図らずも計算能力に頼り過ぎるところもあるようで、たとえば、ビットコインでの取引の承認には大きな計算リソースを必要とします。そこで、AIを使って計算アリゴリズムをよりスマート化することで無駄な計算を省力化できるとのことでした。

マイニングコストは仮想通貨とは切っても切れない問題として頭痛の種ともみられていますので、AIによるコスト削減に期待したいです。

また、AIは人間よりも上手にブロックチェーンを作れるとも考えられています。機械学習用(マシーンラーニング)のプログラムをAIを使って開発する試みが進んでおり、AIがAIを開発する日も近づいているようです。ブロックチェーンを作るには高度な専門知識が必要とされていますが、AIの助けを借りることで人間が作るよりも効率的な開発ができるのではないかと期待されています。

ブロックチェーンはAIのブラックボックスを解き放つ

ブロックチェーンがAIにできることは多岐に渡っています。最もよく指摘されるのが、透明性の向上です。AIは膨大なデータから結論を導き出しますが、インプットとアウトプットの関係はブラックボックスです。そこで、ブロックチェーンを利用してAIのブラックボックスを解き放そうとしています。Vaculin氏は「ブロックチェーンを利用すると学習過程を記録に残すことができるため、AIの意思決定の過程を追跡・理解・説明できるようになる」と指摘し、AIの改善に役立つだろうと述べています。

また、AIにとってデータは命です。ブロックチェーンではデータの改ざんが不可能に近いため、データそのものへの信頼性が高いほか、セキュリティ面でも高い安全性が期待できます。AIがいくら賢くなっても信頼できないデータからは信頼性のない結果しか生まれません。ブロックチェーンを利用することで、AIは信頼できるデータからモデルを作成し、信頼性と安全性の高い結果を導き出すことができるわけです。

AIイメージ

ブロックチェーン同士も相互運用へ

さらに、ブロックチェーンが分散型の台帳であることからAIも分散化させることができ、分散型AIによる共同作業も可能となるとのことです。ただし、カンファレンス後の懇親会でVaculin氏から直接お話しを伺ったところ、現時点では異なるブロックチェーンを相互に運用することはできないとのことです。したがって、分散型AIによる共同作業も閉じたブロックチェーン内のみでの話となります。金融機関を例に取ると、JPモルガンとシティバンク、ゴールドマンは別々のブロックチェーン上で作業をしており、「相互にデータを運用することはできない」とのことでした。

とはいえ、「ハイパーレッジャーとイーサリアム(Ethereum)での相互運用を目指したプロジェクトが既に立ち上がっており、この問題は解決に向かっている」とも指摘。近い将来、異なるブロックチェーンであっても相互に運用できるようになることを確信している様子でした。

また、同席していた大手金融機関勤務の参加者からは「共通のブロックチェーン構築の話はもう何年も前からあるが一向にらちが明かない。技術的な問題というよりも政治的な問題だ」との声も聞かれました。

このように、ブロックチェーンとAIの融合が模索される中、さまざまな問題点も浮き彫りとなりましたが、カンファレンスを通じてそれぞれが持つ断片的な知識がより高いレベルで統合している様子がうかがえたことは大きな収穫となったようです。

水と油から水魚の交わりへ

ところで、ジャパン・ソサイエティでの過去の講演者には、日銀の黒田総裁を始めとして、白川総裁(当時)、ニューヨーク連銀のダドリー総裁(当時)、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターを率いるレイ・ダリオ氏、ユーラシア・グループのイアン・ブレイマー氏、ノーベル化学賞を受賞した中村修二教授など、多くの著名人が並んでいます。

今回、ジャパン・ソサイエティでブロックチェーンとAIが取り上げられたことは、この技術が日本と米国、そして世界をつなぐ架け橋として世間一般でも注目度が高まったことの証左と言えるでしょう。

また、これまではブロックチェーンが分散型であるのに対してAIはより中央集権的と考えられてきました。たとえば、ぺイパル・マフィアとして有名なピーター・ティール氏は「仮想通貨は自由主義者、AIは共産主義者」、リード・ホフマン氏は「仮想通貨は無政府、AIは法の支配」と指摘するなど、ブロックチェーンとAIは一見すると正反対の関係にあります。

しかし、従来は水と油と考えられていた2つの最先端技術がいつの間にか水魚の交わりとなり、今ではその融合に心血が注がれて一大ブームとなっています。今後ともブロックチェーン&AIの動きに注目です。

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参考
IF Conference 2018: Japan X AI & Blockchain

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