BreadのICOから考えるウォレット事業のビジネスモデル

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ビットコインのウォレットサービスを提供するBreadが、12月15日にICOを始めます。

*公式サイト
https://token.breadapp.com

特にiOSのモバイルウォレットのインターフェイスとしては、他と比べても使いやすく、利用してきたユーザーも多いのではないだろうかと思います。

僕も含む以前からのビットコイナーの間ではファンも多いです。

しかし、今のところICOをした企業で、ICOがその企業の成功に結びついた例はひとつもありません。

Breadがその例外になってほしいと思いつつも、同社のICOにはいくつか懸念も感じるので、本コラムではそれを簡潔にまとめます。

トークン設計と資金調達金額

公式サイトによると、ICOに参加した投資家がBreadトークンから享受できるものはなにか、という説明は以下のように簡潔に説明されています。

「Breadトークンを通じて、ユーザーの方々はプラットフォーム上の様々な特典にアクセスする事が可能となります。トークン保有者は割引特典や、保有トークン数のランクに応じた様々な機能に無料または限定でアクセスすることができます。特に保有数の多いユーザーは、最高レベルの限定サービスを受けることが可能です。」

ここで、Breadの資金調達額を見てみましょう。

12月11日現在、公式サイトによると、3200万ドルを資金調達の上限にしています。

発表当時は、1ETHあたり300 BRD発行するトークンで、最大160,000,000のbread tokenが発行され、約110億円を資金調達の上限にしていたと記憶しているので、調達金額の引き下げを行ったと筆者は理解しています。

Breadトークンのモデルは配当型でもなく、アプリの一部機能を使う使用券となっているユーティリティ型トークンで、クラウドファウンディングに近いです。

ウォレットは儲からないビジネスである

BreadのICOを考察するにあたり、知っておくべきことは、ウォレットプロバイダは、残念ながら今までビジネスモデルとしては、十分に利益をあげることが出来るモデルを証明できていないということです。

お読みの方のほとんどの人が、きっとハードウェアウォレット以外のウォレットサービスにお金を支払ったことがないだろうと推測しますが、ウォレットサービスは、無料でダウンロードでき、無料で利用できることが当たり前になっています。

ウォレットビジネスは、ビットコイン史上数々立ち上がってきましたが、いずれも利益体質なモデルはありませんでした。

Breadウォレットも、同様にこれまで恐らくマネタイズは積極的に行ってはおらず、少なくともウォレットサービスを通しての売上はありません。

この点で、ICOに参加する投資家の立場にたって考えてみて、今まで利益をあげてこなかったビジネスが、公募で30億円を資金調達をすることの妥当性はあるのかと考える必要はあります。

また、Breadはこれまで数億円の資金調達をしていますが、このICOの調達が完了をすると、株主の持ち分を希薄化させずに、既存株主の出資金額以上のキャッシュが会社に流れ込むことになります。

指摘で示したように、ウォレット事業は今まで利益をあげることが出来なかったビジネスモデルです。

それを利益体質にし、よりユーザーの利便性を高くするためにも、新しく機能を追加していこうとする試みは素晴らしいです。

しかし、それに伴うリスクを株を希薄化させず、ICOブームに乗っかってリスクをICO投資家(ユーザー)に押し付けているといえる構造になっています。

持続的なビジネスモデルが必要

ここまで否定的なことを書いてきましたが、Breadの取り組みで応援したい点はあります。

それは上述してきた通り、ウォレットビジネスは利益をあげる事例をつくる必要があるからです。

ビットコインのエコシステム全体にとって、ウォレットは必要不可欠で、それがビジネスとして利益体質にできることは証明されるべきではあります。

そのうえで、機能拡張をするという取り組みが、どのようになるかは興味深いです。

逆に今のところ、モバイルウォレットでBread以外で、その取組みをできそうなウォレットが他にないことも事実です。

その意味では、同社のICOを応援しています。

しかし、同社のICOトークンは将来に実装される有料機能のフリーチケットなどの役割を果たします。

つまり、これは前売り券です。

未来の売上を先に得るだけ?

これが事業体にとってどういったことかというと、この前売り券を使用されることによって、ICOで30億円を調達することによって、将来の売上を先食いしていることになります。

つまり、今まで利益をあげてこなかったのに、さらに将来の利益を大きく先食いしようとしているという状況です。

30億円を食い尽くし、そのときキャッシュフローを改善できていなかったら、将来の開発資金はなくなります。

また、中国の取引所のBnanceのCEOが下記のようなブログをsteemitにあげています。

ブログ:I Don’t Like Big ICO

東京で、とあるICOについて聞いたことを記し、それに対する批判的な意見を述べています。

あるICOがなにかは明記されていませんが、このブログが投稿されたのは、BreadのICOが発表された数日後であり、Breadだろうと僕は思っています。

(Breadの当初のICOの調達予定額は100Mでした)

彼のブログポストのICOへの意見は、僕と近いです。示唆のある内容なので、ICOに興味を持つ経営者は読んでみると良いと思います。

ちなみに、モバイルウォレットで「ICOゴール」を果たした事例として、Androidウォレットを提供しているMyceliumという会社があります。

まさしくBreadと同じように、これから様々な追加機能をウォレットに加えていくという内容のICOでしたが、ICO後、それらは実現せず、経営陣はICOで調達した資金を使って、スペインにバカンスに行ってしまったというスキャンダルも出ています。

しかし、今のところ、Meceliumはウォレット事業としては、十分に利益を得た事例といえます。ICOによってですが。

正直に言って、エクイティでの調達か、普通に有料での拡張機能を提供するべきだったのでは?と個人的には感じますが、Breadには、Meceliumと同じ道を歩まず、ぜひウォレットの成功事例になってほしいです。

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