ブロックチェーンとは異なる新しい技術として、Directed Acyclic Graph(以下DAG、読み方はダグ)が話題になることがあります。
例えば、Byteballなどのプロジェクトのネットワークは、ブロックチェーンではなくDAGをベースにしています。
DAGは邦訳すると有向非巡回グラフと呼ばれていてブロックチェーンとは仕様が異なります。各トランザクションは、ハッシュを含んで署名することによって、1つ以上の以前のもの(親)を参照し、それが連続して連なるのがDAGの特長です。
一本の直線でブロックが連続するブロックチェーンに対して、DAGは、複数のトランザクションが繋がりあって網目のように構成されます。
参照:byteballホワイトペーパー
各トランザクションの前のトランザクションを親として、それに続くトランザクションが、子として扱われます。
このことから、スケーラビリティの問題を回避し、トランザクション処理性能が優れていることが特長とされます。
とはいえ、DAGにも解決できる問題がある代わりに別の課題もあります。
目次
データが蓄積されるにつれ、容量がブロックチェーンの比ではないくらい重くなる
DAGを採用した通貨であるByteballにおいては、ローンチから1年弱しかたっていないのにも関わらず、9GBほどの容量になっています。
これだと、このまま拡大して全てのユーザーがフルウォレットを使用することは困難です。
ライトウォレットの継続的改良と、安全性の強化が求められます。
Witnessの分散化がインセンティブ設計的に課題
ビットコインをはじめとした暗号通貨は、ネットワークに参加しトランザクションを承認作業をすると、新規発行のコインを貰うことができるというインセンティブがあります。
しかし、マイニングがないDAGの構想ではこのインセンティブ設計が難しく分散化を困難にしています。
witnessと呼ばれるノードはトランザクション手数料を貰えますが、この手数料も1トランザクションあたり非常に安価なので、インセンティブとしては弱いのが現状です。
DAGはスケーリングの課題に対しては優れていても、非中央集権化するには非常にハードルが高いと言えます。
現状、DAG通貨は将来的にこの問題の解決を目指しているものの、集権化の問題を残していると認めざるを得ません。
マイニングがないので、ネイティブ通貨のディストリビューション方式も課題です。
その点でいえば、ByteballはマイニングなしであるDAG通貨を長期でエアドロップや決済のバックで配分し、フェアになるように考えられていると評価しています。
また、パブリックで非中央集権化が難しい分、DAGをプライベートチェーンのような用途で使うのはとても相性が良さそうなので、今後応用例が出てくるのではないかと思います。
意図的な二重支払いの攻撃からの安全性は証明されてるといえない
DAGの二重支払いへの耐性は、正常なノードの参加が多數であれば各取引ユニットを改ざんすることはほぼ不可能です。
DAGのネットワークは、理論的には改ざんが不可能であるとホワイトペーパーでも述べられていますし、これまでいくつか議論もされています。
しかし、ByteballのDAGネットワーク自体はまだローンチから1年しか経ていません。
この攻撃耐性の検証という点では、ローンチから8年になるビットコインとは比べ物になりません。
ビットコインのネットワークは、これまで数々の攻撃を受けて、その耐性を証明してきましたが、DAGのネットワークはまだその検証プロセスを果たしたとは言えません。
今後の検証されて、攻撃態勢を証明していくべきところと認識すべきでしょう。
以上、あまり認識されていないDAGの問題点を記しました。
とはいえ、ブロックチェーンのオンチェーントランザクションの限界というスケーリング問題を、理論的に解決している点は大きく、実のところメリットの方もあまり認識されていないという事実もあります。
いずれにせよ、Byteballはサードパーティー製のアプリも増えてきて、プラットフォームとして認知が少しずつ高まるはずです。
その過程でこういった課題に対する議論や検証が行われ、将来的にネットワークが成長してほしいと思っています。