米金融大手シティグループ(Citigroup)は、機関投資家にリスクの少ない仮想通貨のカストディサービスを提供する計画があることがわかった。同グループは、Digital Asset Receipt(DAR:デジタル資産証書)と呼ばれる新製品を開発して、リスクを懸念する投資家に提供するという。
シティバンクが機関投資に代わってデジタル資産証書(DAR)を発行
米メディアBusiness Insiderが、プロジェクトに精通した情報筋を話として伝えたもので、DARは「業界のゲームチェンジャー」と表現されている。プロジェクトは、シティグループの資本市場オリジネーションチームと保管証書チームのコラボレーションの産物である。
DARは新しい投資手段であり、リスクを回避したい投資家は、実際に資産(ここでは仮想通貨)を直接所有せずに取引でき、仮想通貨取引に銀行が代理人として仲介、保管する。機関投資家は、すべてこの保管サービスに安心して任せることができるという。
シティバンクが発行するDARを保持する米国の機関投資家は、顧客に代行してシティバンクが保有する株式もしくは資産(仮想通貨を含む)価値を表す手段(資産証書)を所有することになる。
DARの機能は米国預託証券(ADR)と類似
DARの機能は米国預託証券(ADR)や上場投資信託(ETF)と類似しており、DARに表示される株式や仮想通貨などその他資産は、投資家が直接所有する必要はない。例えばシティは、米国内の投資家が購入できない外国株式をDARで処理する。投資家がDARを購入すると、銀行からDARが発行されたことを長年使用のあるウォールストリートの清算・決算サービスのDepository Trust & Clearing Corp.に通知される。
シティは米国預託証券(ADR)の世界最大手発行者であり、1928年に早くも証書を発行している。DARの場合、シティグループは保管機関に保管されたという証明書を発行する。証明書が発行されると、シティグループはウォールストリートの仲介業者に清算・決算サービスが提供されたことを通報する。
このサービスは、投資家に一定レベルのセキュリティを保証し、システム上の仮想通貨取引が合法化される。
※この件についてシティグループ側からのリリースはまだ出ていない。
DARなどのサービスに期待、暗号市場の流動性やインフラ改善へ
大手金融機関は、今ではブロックチェーンや暗号化技術についてはかなりの関心を示しているが、ビットコインなど仮想通貨はその匿名性、ボラタイルな価格変動、セキュリティ不履行、犯罪活動などが理由で広く関心は薄い。シティも他の大手銀同様に、顧客向けにビットコイン先物取引を提供せず、銀行が発行するクレジットカードで仮想通貨の購入を禁じる動きに賛同した。
しかし、以前Linkedinに投稿された求人広告によれば、シティグループは、AML(アンチ・マネー・ロンダリング)部門担当バイスプレジデントもしくはシニアバイスプレジデントの募集を開始していた。求人広告には「仮想通貨およびビットコイン・モニタリング知識」や「ビットコインプロフェッショナル資格」を求めていたという。
DARは、米国の金融監督当局が求める保険、保護、取引監視などをシステムに備えており、機関投資家はこれに投資することで、例えばビットコインの価値を表す手段を保有することになる。仮想通貨を対象とするDARの発行はまだ初期段階だが、Coinbase Custody、Goldman Sachs CustodyそしてCitigroup DARなどのような幅広い商品の出現によって、世界の暗号市場の流動性やインフラストラクチャーは改善の方向に進むと期待されている。
(フリージャーナリスト、大手マスコミOB記者:長瀬雄壱)
参考
・NEWSBTC
・CCN