コインチェック(coincheck)NEM補償:強制損切りの場合の税金はどうなる?

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コインチェック(coincheck)事件で強制損切りされた場合、税金は発生する?

先日、コインチェックNEM(XEM)流出事件が起きました。

2018年1月26日、コインチェック株式会社から5億2300万XEM不正に外部へ送金されました。
Coincheckサービスにおける一部機能の停止について

2018年1月28日、不正送金されたNEMの補償について、自己資金より実施すると発表。
不正に送金された仮想通貨NEMの保有者に対する補償方針について

驚異的な早さです。
延納制度があるとはいえ、納税期限は3月15日ですから、納税資金が確保できない、ヤバいよヤバいよ、を回避できそうな状況です。

それとは別に、補償として強制的にNEMをJPYに換算してユーザーの口座に入金される場合、所得税法上の扱いがどうなるのか気になるところです。

強制損切りされた場合、所得税は発生するの?

結論は、

・購入金額 > 補償金額
差額は、資産損失として必要経費に計上し、他の仮想通貨の売却益からマイナスする。
但し、損失の繰り越しは出来ない。

・購入金額 < 補償金額
差額は、収入金額又は非課税所得となる。収入金額の場合、他の仮想通貨の損益と合算し、雑所得として計上、所得税等が課税される。
非課税となった場合、雑所得には含まれず、課税関係が生じない。

図解1

通常、仮想通貨を売却した場合の所得の計算方法は、
売却金額(収入金額)-購入金額(必要経費)=雑所得です。

実際に発生した「損失」を確認しよう

必要経費=資産損失と収入金額=補償金について、考える必要があります。

まず、NEM/XEMが不正送金をされたことによる損失です。
ユーザーは、NEM/XEMが無くなるという損失を被ることになりました。
(Coincheck利用規約 第17条 免責事項により)

雑所得の計算上、必要経費に算入することが出来るかどうかは、主に所得税法37条(必要経費)所得税法51条(資産損失)によります。

所得税法37条(必要経費)

(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

今回は、この(1)にも(2)にも該当しませんが、所得税法51条の資産損失の第4項によって必要経費に計上できると考えます。

所得税法51条(資産損失)

居住者の不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産(山林及び第六十二条第一項生活に通常必要でない資産の災害による損失に規定する資産を除く。)の損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの及び第一項若しくは第二項又は第七十二条第一項雑損控除に規定するものを除く。)は、それぞれ、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額(この項の規定を適用しないで計算したこれらの所得の金額とする。)を限度として、当該年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

ポイント

  • 雑所得の起因となる資産に損失が発生した場合、「損失が生じた年」に必要経費に算入する。
  • 但し、「損害賠償金」などにより補てんされる部分があれば、その金額は除く。
  • 雑損控除の適用がある場合は、この条文ではなく、雑損控除の条文により所得計算をする。

図解2

不正送金されたNEM/XEMの購入金額が100万円で、補償金が88万円の場合、資産損失として必要経費に算入される金額は、100万円-88万円=12万円になります。

また、雑所得がマイナスとなった場合、他の仮想通貨の売却益などで損失を上回る利益を上げなければ、損失はなかったことになります(翌年に損失を繰り越すことができません)。

大半の人は、雑所得に該当するので、このような扱いになります。
しかし、個々によって、事業所得などに該当する場合もありますが、必要経費とする流れは雑所得と同様です。違う点としては、損失を繰り越すことが出来る可能性があります。

また所得税法72条の雑損控除がありますが、残念ながらこれは適用できないのではないかと考えます。

雑損控除は、「生活に通常必要な資産」について、被害にあった場合の適用であるため、仮想通貨のトレードを目的としているような場合、適用を受けられる可能性は低いです。

もし「生活に通常必要な資産」であれば、なんでWalletに入れてないの?って事にもなりますし、生活に必要な分も含めて仮想通貨のトレードをすることを、自ら選択しているので、そこまで救済する制度ではありません。

従って、購入金額 > 補償金の場合、補償金は、資産損失に補てんされ、残額は雑所得の必要経費に算入されます。

一方、購入金額 < 補償金額の場合、補償金から購入金額をマイナスした後の金額が、所得税法上、課税対象になるかどうかを検討する必要があります。
購入金額 < 補償金額ということは、NEM/XEM保有時には「含み益」が生じていたということになります。

損失が生じた時点において、損失→補償となるため、例え、仮想通貨で補てんされたとしても、「含み益」というものは既になくなっていることになります。

課税対象または非課税所得になるのかを確認しよう

なので、補償金額が購入金額を上回った場合、その上回る部分の金額が課税対象になるのか非課税所得(所得税法9条所得税法施行令30条94条)になるのかという点で考える必要があります。

所得税法9条に該当すれば非課税。該当しなければ、所得として課税(収入金額)となります。

図解3

ポイント

  • 収入金額に代わる性質を有するものか否か
  • 逸失利益に対する賠償金は、被害者の純資産額を損害前より増加させるから、課税所得
  • 資産に加えられた損失を回復させるもので実損害を補てんするため、非課税所得

(※ここでは、「純資産」と「資産」、言葉を分けていますが、「純資産」は、時価評価していない購入金額に基づいて評価した資産であり、「資産」とは、時価評価した資産と捉えてください。実際の定義とは異なります。)

取得した補償金が「利益」の補償(収益補償)としての性格を有し、かつ、仮想通貨のトレードにより生ずべき所得、収入金額に代わる性質を有するか否かという観点から判断することになります。

通常であれば売却金額に購入金額をマイナスした金額が所得として、課税対象になります。

年末に仮想通貨を保有しており、購入したときよりも値上りをしていたとしても、売却するまでは「含み益」として課税されません。「含み益」は、まだ実現していないので自分の資産としては、買った時の金額だということになります。

この流れから考えると、自分の資産は、購入金額(純資産)であるため、購入金額を上回る部分は、資産の損失を回復するものではなく、資産を増加させる補償金であるため、課税所得に該当するということになります。

一方、自分の資産がいくらだろうと考えたとき、多くは「時価」で換算をすると思います。すなわち、自分が今売却すれば得られるであろう金額です。今回、1NEM/XEMあたり「88円」が補償金額という形になりました。

これを「時価」というのは、疑問が生じる部分ではありますが、1NEM/XEMが88円で売却可能な資産であったということを補償したという考えに立てば、収入金額に代わる性質の補償ではなく、また、資産が損失額よりも増加していないので、88円で売却できた資産の損失を回復させるものとして、非課税所得に該当するということになります。

損害賠償金が課税対象になるのか非課税所得になるのか、裁判で争われるケースは多々あります。
今回のケース、直感的に課税対象になるだろうなぁと考えていましたが、どちらになるのか、慎重に判断しなければならないところだと思います。

コインチェック(Coincheck)社や国税庁の発表に注意

額も額であることから国税庁から何らかの発表があってもおかしくありません。
それに、Coincheckからの補償に対する発表があったものの、まだ、どうなるのか決着した訳ではありません。補償により権利義務関係が解消されあと、奇跡的にNEM/XEMが戻ってきたら、どうなるのでしょう・・・。

状況が整理・決着されるまでわかりませんが、来年の申告に向けて、既に頭を抱える状況ですね。

なお、法人側は、法人税法基本通達 9-7-16。通達にはなりますが、故意又は重過失に基づかないものである場合には、経費(損金)になります。また、損失は9年繰り越すことが可能です。

所得税法9条17項(非課税所得)

  • 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

所得税法施行令30条(非課税とされる保険金、損害賠償金等)

  • 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
    一 損害保険契約(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項に規定する少額短期保険業者(以下この号において「少額短期保険業者」という。)の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この条において同じ。)に基づく保険金、生命保険契約(同法第二条第三項に規定する生命保険会社若しくは同条第八項に規定する外国生命保険会社等の締結した保険契約又は少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この号において同じ。)又は旧簡易生命保険契約(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第百二号)第二条(法律の廃止)の規定による廃止前の簡易生命保険法(昭和二十四年法律第六十八号)第三条(政府保証)に規定する簡易生命保険契約をいう。)に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)
    二 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(前号に該当するもの及び第百八十四条第四項(満期返戻金等の意義)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第九十四条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)
    三 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)

所得税法施行令94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)

  • 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので、その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする。
    一 当該業務に係るたな卸資産(第八十一条各号(譲渡所得の基因とされないたな卸資産に準ずる資産)に掲げる資産を含む。)、山林、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)につき損失を受けたことにより取得する保険金、損害賠償金、見舞金その他これらに類するもの(山林につき法第五十一条第三項(山林損失の必要経費算入)の規定に該当する損失を受けたことにより取得するものについては、その損失の金額をこえる場合におけるそのこえる金額に相当する部分に限る。)
    二 当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの
    2 第七十九条第一項(資産の譲渡とみなされる行為)の規定に該当する同項の行為に係る対価で法第三十三条第二項第一号(譲渡所得)の規定により譲渡所得の収入金額に含まれないものは、事業所得又は雑所得に係る収入金額とし、当該対価につき第百七十四条から第百七十七条まで(借地権の設定をした場合の譲渡所得に係る取得費等)の規定に準じて計算した金額は、当該事業所得又は雑所得に係る必要経費に算入する。
    (譲渡所得の収入金額とされる補償金等)
    第九十五条 契約(契約が成立しない場合に法令によりこれに代わる効果を認められる行政処分その他の行為を含む。)に基づき、又は資産の消滅(価値の減少を含む。以下この条において同じ。)を伴う事業でその消滅に対する補償を約して行なうものの遂行により譲渡所得の基因となるべき資産が消滅をしたこと(借地権の設定その他当該資産について物権を設定し又は債権が成立することにより価値が減少したことを除く。)に伴い、その消滅につき一時に受ける補償金その他これに類するものの額は、譲渡所得に係る収入金額とする。

法人税法基本通達 9-7-16

  • 法人の役員又は使用人がした行為等によって他人に与えた損害につき法人がその損害賠償金を支出した場合には、次による。
    (1) その損害賠償金の対象となった行為等が法人の業務の遂行に関連するものであり、かつ、故意又は重過失に基づかないものである場合には、その支出した損害賠償金の額は給与以外の損金の額に算入する。