ハッキング事件から三ヶ月超、コインチェックの新経営体制が発表されました。マネックスグループによる完全子会社と、同社からも経営陣派遣になります。取得価格は36億円です。
下記コインチョイスでも記者会見の模様を取材されています。
概要はそちらで確認ください。
・コインチェック&マネックスの共同記者会見:買収の経緯や今回のメリットとは?
なお、記者会見では、下記のように回答をされています。
質問:今回の買収は良い「買い物」をしたという認識でいるのか?
回答(松本氏):M&A(合併)は結婚とかと同じように、どちらがということではない。良い買い物というのではなく、一緒に新しい金融機関としてサービスを創っていくファミリーのようなものと考えている。今回は素晴らしい出会いだと思っている。
さて、今回のコインチェックの買収は、割安な買い物だったのでしょうか?インターネット上の議論ではほとんどの人は割安な買い物だと、発言しているのが僕の印象です。
日経新聞によると、コインチェックの営業利益について「直近の1年で1000億円を超えたもよう」と報じられています。この数字は、営業利益比較で、マネックスグループの100倍ほどになります。
日経新聞の報道の真偽は判断しかねますが、少なくとも三桁億円後半の利益は間違いないのでしょう。もちろんその後、XEMの補償にあててるので、手元に多くはキャッシュは残っていないかもしれませんが、足元の収益力は凄まじかったことは間違いありません。
単純にこの数字だけで見れば、とんでもない割安です。そのため、マネックスグループの株価は暴騰をしています。
コインチェックの適正価格はどうやって判断?
しかし、これを割安と断定的な判断をするのは早計に感じます。とんでもなく安い買い物かも知れないし、または高い買い物かもしれない。そう思っています。
というのも、バリュエーションは算定するには、変数が多すぎるし、前年より明らかに内部体制厳しくなって管理コストが桁が変わるくらい増えるのも明白だからです。
CCの買収金額の妥当性検討にあたっての変数はこんなところでしょうか。
1 .金融庁からどんな管理体制や報告義務が要求されてるか
2.信用減による顧客離反
3.従業員離反
4.訴訟リスク(売買停止を機会損失として複数の提訴を受けている)
5.いくつかの取り扱いコインがこれから中止になること。
6.これまでのインフラの潜在的脆弱性の有無
7.交換業登録は本当に二ヶ月後にできるのか
8.暗号通貨市場自体の伸びが踊り場になる可能性、かつ競争激化で、昨年より収益力は落ちるだろうこと
なにど簡単挙げるだけでも、不確実性は多々あります。1や5、7などに関しては、当事者と金融庁間では合意されている変数かもしれませんが、それ以外は当事者たちにも分からない変数です。
マネックスのリリースによると、下記の条件付対価に関する合意があるようですが、それは結局のところバリュー算出が難しすぎることからだと思います。
上記(36億円)に加えて、コインチェックの現所有者との間で条件付対価に関する合意がなされています。
今後3事業年度の当期純利益の合計額の二分の一を上限とし、一定の事業上のリスクを控除して算出される金額が追加で発生する可能性があります
なので、実際の買収価格は36億円より高いですし、そもそもその数字の裏には見えないコストも大きすぎるのです。
なお、コインチェック同様に、昨年に多額の利益を出した取引所として米国ではCoinbase、国内ではビットフライヤーがありますが、共に、次期は競争激化や投資により、減益見込みとコメントをしています。
コインチェックも昨年のような利益には当然ならないでしょう。なので、ネット上で散見するように、確実に安い買い物だ、のような感想はコメントできないのが筆者の個人的な意見です。
いずれにしても、コインチェックの創業経営者であった和田さんと大塚さんは、まだ大変な日々が続くでしょうが、ひとまずお疲れ様でした。と言いたい気持ちです。