SECが任命した仮想通貨関連の上級顧問登用は、事態打開の救世主となるか?

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米SECが任命した仮想通貨関連の上級顧問登用は、事態打開の救世主となるか?

米証券取引委員会(SEC)は、難航している仮想通貨の規制問題を解決する隠し球として、ヴァレリー・A・シュチェパニク(Valerie A. Szczepanik)氏を登用した。シュチェパニク氏は企業金融部門のアソシエイツ・ディレクターと、デジタル資産・イノベーション部門の新設役職のシニアアドバイザーを兼務する。

彼女は仮想通貨の規制問題で、SECが抱える恐らく最も精通した人材であり、難航する事態打開の救世主になるかどうか注目されている。

「暗号通貨の皇帝」「クォーターバック」の称号に世論は真っ二つ

彼女はマスメディアから、「Crypto Czar(暗号通貨の皇帝)」「Crypto Sheriff(保安官)」「Crypto Quarterback(クォーターバック)」などの称号で呼ばれ、ブロックチェーン分野を掌握するSECを一手に握るほどの人材として期待されている。

対照的に、仮想通貨・ICO市場に利権のある人々の反応は、警戒心を募らせるのも無理はない。ブログサイト「Reason」は、「ビットコインやほかのデジタル通貨のファンにとってどうやら悪い知らせだ」と、彼女の昇進を分析している。「さてわれわれは、SECが仮想通貨の監視を強め、あるべき活力や有用性の妨げなるのではないか」との疑問は避けて通れないという。

しかし、果たしてそうだろうか?昇進発表後のシュチェパニク氏に対する業界全体のムードは、楽観的に見えなくもない。彼女のこれまでの発言の記録を見れば、彼女は「悪い警官というよりむしろ良い警官」かもしれないというのだ。

弁護士としてSEC入り、ブロックチェーンや暗号通貨に精通

シュチェパニク氏は、ペンシルベニア大学工学部卒業、ジョージタウン大学の法務博士(JD)などの学位を保持している。当初は連邦裁判官として、ワシントンDCの上訴裁判所判事などを歴任した。1997年に弁護士職としてSECに努めて20年の経験を持っている。

ブロックチェーンや仮想通貨に関する彼女の発言を2,3紹介しよう。

▼Consensys 2017会場にて
「トークンが証券か否かは、事実もしくは状況証拠に基づく事柄であり、さまざまな意見を出すべきだ」

▼SINET Innovation Summit, June 2018会場にて
「われわれは会合を開きたいという要求を断ることは決してない。皆が集まり実現したいと思う解決策を提案してほしい」

シュチェパニク氏は1997年に、試行弁護士としてSECに入りした。彼女が有名になったのは、インサイダー取引容疑訴訟判決(ニューヨーク南部地区連邦地裁、2011年11月8日)で、ヘッジファンドマネジャーのラージ・ラジャラトナム(Raj Rajaratnam)がインサイダー取引容疑で約9200万ドルの民事罰金刑を科せられた事件だ。それは彼女が担当した民事裁判で、SECが勝訴した最高額の裁判だった。

彼女が暗号通貨を取り扱うことになったことについて、デジタル資産・イノベーション部門のビル・ヒンマン(Bill Hinman)部長は「彼女は証券法の意味するものについて当初から精通し、ブロックチェーンと分散型台帳技術の発展が意味すること、そして仮想通貨、ICO、トークン化された証券などに通じている」と評価している。

シュチェパニク氏のリーダーシップで規制づくり進むか

シュチェパニク氏は、分散型台帳の世界のストレンジャーではない。むしろ仮想通貨やトークンなどあらゆる情報に精通していると、観測筋は高く評価している。彼女の昇進は、連邦職員が本気で暗号通貨の規制に取り組む姿勢を示したことだけでなく、ブロックチェーン業界と有意義な協力をする意思の表れともみれる。

シュチェパニク氏は規制当局と関連企業などとの和解を図る最適の人材かもしれない。彼女は4月3日、ワシントンで開かれたブロックチェーン会議で、「企業が証券法違反を避けて、金融技術を生みだすことを支援するようなSECの規範的ガイダンスを作成することは、恐らく多くの時間を無駄にすることになる」と語った。意味することは、彼女のリーダーシップの下で、単に「ICOは証券」と定義するだけにとどまらず、極めて近い将来に仮想通貨規制の大枠づくりを任されることになるだろう。

関連:米SEC、ICOの資金調達において発行されるトークンは証券とみなす方針が明らかに

(フリージャーナリスト、大手マスコミOB記者:長瀬雄壱)

参考
cointelegraph
米国証券取引委員会(SEC)公式リリース
BNA