「Decentralized Web」という新しい概念と関連プロジェクト

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「Decentralized Web」という新しい概念と関連プロジェクト

「Decentralized Web」を直訳すると「非中央集権型のWeb」となり、一般的にdWebと略称されます。以前からある類似した概念としてWeb3.0がありますが、Web3.0という概念そのものが曖昧であるが故にdWebとの違いも不明瞭です。今回の記事ではdWebとWeb3.0の違い、dWebプロジェクトの例をいくつかご紹介します。

まず従来からあるWeb3.0という概念はブロックチェーンコミュニティによって推進され、金融やeコマース、セキュリティ、エンタープライズ向けのビッグデータ、以上のような商業開発を意識した概念です。一方のdWebは非中央集権化、データ主権、セキュリティ、プライバシー、検閲耐性という言葉に焦点を当てたイデオロギーに近い概念として語られる場面が多いです。両者が将来のWebインフラに期待する技術領域は重複している部分があることは「Decentralized Web Developer Report 2020」による調査結果で示されています。

dWebの背後にある問題意識

dWebにしてもweb3.0にしてもですが、なぜ既存のWebから新たなWebインフラ構築を目指しているのか。その問題意識はどこにあるのかを説明します。

これらムーブメントの背後には、社会のデジタル化が進む中でデータ漏洩やデータ侵害の問題が未だ出口を見つけていないこと、また欧米を中心にプライバシー保護に対する意識が高まっていることが挙げられます。その問題意識の矛先が中央管理されたデータサーバーに向けられており、比較的若年層を中心としてWebの分散化を叫ぶ声がdWebという概念として浸透してきたという背景があります。

この問題意識に対して一部の熱狂的な若者が声高に叫んでいるだけと揶揄することもできます。しかし、Webそのものが従来のように情報を伝達・共有するだけのものではなく、フィンテックやDeFiにみられるように価値の貯蔵や移転がオンライン上で行われるようになってきていること、医療データのように個人の生命に紐づく情報がオンライン上で利用されるようになってきていること、公共交通機関や公共インフラがオンライン上で管理されていることは加味して検討する必要はあります。

またこれらのネガティブな要因に加えて、有効なデータを中央サーバーに埋没させずに、必要な場所に必要なデータを有効に再利用しようというポジティブな考え方も背景にはあります。これは商業利用の効率化という観点のためdWeb発というよりもWeb3.0発の発想と言えます。この考え方はクラウド型で解消するとも言えますが、プロバイダーのネットワークに依存するという点で限定的であり、その制限から解放するより自由なWebという点で新たな価値を提供する可能性はあります。

dWebプロジェクト

dWebの主要プロジェクトのいくつかはIPFS、イーサリアム、Dat、Libp2pなどのオープンソースプロジェクトです。つまり草の根的なムーブメントとしてdWebプロジェクトは進められる傾向にあります。そのため、黎明期における大手企業の採用は難しいという側面もあり、またキラーアプリになるものが未だ誕生していないことも現在の課題として挙げられます。

しかし、IPFSとイーサリアムの成長は顕著であり、それらを活用したアプリケーションは着実に多様化してきています。そのうちいくつかを以下例として紹介します。

IPFS、Libp2pを活用したP2P分散ストレージネットワークの「Filecoin(ファイルコイン)」はWeb3.0をうたうプロジェクトの一つです。IPFSそのものが分散型ストレージシステムと言えますが、Filecoinは他人のデータを保存する行動にインセンティブを与えるというIPFSには無い機能を補完するネットワークです。

プライバシーという視点ではSSI(自己主権型ID)の概念を踏襲するDID(分散型ID)が注目されます。DID関連プロジェクトとして「3Box」が挙げられます。概念としては自己主権型アイデンティティと呼ばれる自身に紐づく情報をユーザー自身が管理するという人間中心のデータ管理システムの構築を目指すプロジェクトです。この3BoxはCeramic Networkというプロジェクトも推進しています。CeramicはIPFSやさまざまなブロックチェーンで活用できるIDを提供するプロジェクトです。重要な役割としてIPFS、ブロックチェーンに情報をそのまま格納すると情報の書き換えが困難になるため、紐付けだけが行われること。そして複数のネットワークに対応する唯一の信頼できるIDシステムを構築しようとしている点にCeramic Networkの優位性があります。

開発者のコラボレーションツールであるGithubを分散型で提供するRadicleもdWebの文脈に組み込まれます。こちらは名前の通り分散型でリポジトリを管理するプロジェクトです。

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