仮想通貨・トークンの将来的可能性に関する考察:DMM Bitcoin代表(田口 仁)

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DMM Bitcoin 田口仁


コインチョイスにDMM Bitcoinの田口社長がライターとして登場です。今後、定期的に田口社長が考える仮想通貨・ブロックチェーンに対しての考え方などをユーザーの皆様にお届けできればと考えています。(コインチョイス編集部)


株式会社DMM Bitcoinの代表をいたしております田口仁です。このコラムを通じましては、仮想通貨の相場動向から少しはなれ、冷静な眼で、仮想通貨やトークンを取り巻く大きな流れや枠組みをご紹介しながら、仮想通貨やトークンの将来の可能性について書かせていただきたいと思います。

個人的な考えを多く含みますので、その点については、なにとぞご容赦をいただければと思います。第1回は、仮想通貨は通貨としての振る舞いが十分にできて、通貨としての役割の一部を担う存在として進化するのか、その過程でどのようなトレンドがおこりうるのか、について最近の潮流からの示唆をご紹介したいと思います。

通貨チャンピオンからみた仮想通貨に対する認識の将来への示唆

G20財務相・中央銀行総裁会議

仮想通貨が通貨としての振る舞いをすることを目指すということは、法定通貨の発行と管理を司る通貨当局と、その交換ネットワークを司る銀行ネットワークに対する、壮大なチャレンジです。また、新しい産業が創出・発展・進化する際に、それが成功するには社会に受け入れられることが必要です。

仮想通貨がチャレンジする、通貨チャンピオンの集まり「G20財務相・中央銀行総裁会議」における、現時点での仮想通貨やトークンに対する認識は、どのようなものだったでしょうか。

2018年3月19日から3月20日にG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されました。仮想通貨は、「交換・決済手段」「価値の尺度」「価値の蓄積・保存」といった三つの役割のうち、そのボラティリティーの高さから、現時点で、「交換・決済手段」「価値の尺度」という役割を担えるものではないという評価をされました。

日ごろのボラティリティーの高さに直面されている多くの仮想通貨の利用者の方は、おそらく、この評価は納得、と思われるのではないでしょうか。また、「消費者や投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、テロ資金供与に関する問題を提起する」とされましたが、これは金融の役割を担う社会の仲間入りを目指すのであれば、保持するべき金融業のルールに準拠する必要がありますよ、ということを意味しています。

おそらく、安心・安全に仮想通貨やトークンの利活用をしたいと望む多くの人は、この指摘ももっともだ、と納得できるものでしょう。逆に、「交換・決済手段」「価値の尺度」という役割を担えるという点、金融の役割を担う社会の仲間入りを果たすという点、を満たすならば、仮想通貨やトークンは、通貨としての振る舞いをするに値するという見方もできます。

仮想通貨やトークンが基盤とする技術は分散台帳技術やブロックチェーン技術と呼ばれていますが、「G20財務相・中央銀行総裁会議」でも、「仮想通貨は未だ多くの問題があるものの、その背景にあるブロックチェーン技術は金融業界にイノベーションをもたらす新技術の一つである」と評価されていることからも、そのことは明らかです。

仮想通貨やトークンが、通貨チャンピオンとの全面的な戦争状態の道から成長進化を果たす選択をするのか?

仮想通貨 戦争状態

指摘される課題を早期に解消し、通貨としての振る舞いと、ブロックチェーン技術を利活用したイノベーションを早期に社会に根付かせる道筋をとっていくのか?あまり意識していないことと思いますが、仮想通貨やトークンの価格的な価値は、何によって支えられているのかという問いに対しては、現時点では、法定通貨との交換ができる道筋がある、という一点において支えられているのが現実です。

法定通貨との交換の道筋が全くない仮想通貨やトークンを誰も持ちたいとは思わないですよね・・・すでに選択すべき道筋は、「指摘される課題を早期に解消し、通貨としての振る舞いと、ブロックチェーン技術を利活用したイノベーションを早期に社会に根付かせる」ことが仮想通貨やトークンの宿命となるということになります。

仮想通貨やトークンのジレンマ、そして現実解としての割り切り

仮想通貨に関する取り組みが勃興した背景として、リーマンショックを起点とした通貨に対する信認の揺らぎ、そして、リバタリアン(新自由主義)的な哲学があったという指摘は、よく耳にされることと思います。

中央管理されない分散的な処理方式、また、多数決・民主主義的な処理方式、いわゆるトラストレスという思想により、仮想通貨やトークンのコミュニティーが形成され現在の基盤が構成されています。トークンエコノミーという言葉も、よく耳にされることと思いますが、これはコミュニティーに対する奉仕に対して、奉仕に対する対価が、コミュニティーにおいて利用価値のあるトークン(証票)により発行されるという仕組みのことを意味しています。

同じ価値観を有するコミュニティー内で利用価値のあるトークン(証票)を、コミュニティー内の価値交換の基盤である分散台帳の更新や管理といった奉仕活動(マイニング等)の度合いに応じて交付する仕組みとしてブロックチェーンを用いた分散台帳が構成される。ここまでは、論理的になにも矛盾がなく問題がありません。

しかしながら、トークンの経済的な価値は、法定通貨をより多く吸い上げることが出来て、また、旺盛に法定通貨との交換させることができないと、トークン自体の経済的な価値が向上ないしは維持できない、言いかえると法定通貨のコバンザメ的な存在でありながら、通貨チャンピオンの挑戦者である、という矛盾やジレンマを抱えていることは、耳に痛い事実でもあるのであまり語られません。

個人的には、金融業の仲間入りを果たせず、ないしは、果たさず、あくまでも通貨チャンピオンの挑戦者としてコミュニティーをアジテート(活動すること)しても、そう長くは存在できないと誰の目にも明らかになる日は、そう遠くなく訪れると思います。

そうでないならば、3月以降の継続的なグローバルでの規制強化のもとで、仮想通貨やトークンの法定通貨建の評価額が下落を継続していることがなぜなのか、誰も説明できないような気がします。

逆に、仮想通貨やトークンが基盤とする技術とイノベーションの普及を最優先し、リバタリアン的な哲学やトラストレスに過度に固執することがなく、金融村の一員として急速に発展する道筋を選択するようなトークンのコミュニティーが明確に選別される日もそう遠くないのではないかとも思います。

そんなことになったら、何も面白みがないよ、大幅なボラティリティーを伴ったトークンの価格上昇の期待が阻害されちゃうじゃないか、と思われる人もいるかもしれません。もしそのような人が大勢をしめるようであるならば、仮想通貨やトークンは、もはや長く利活用される存在ではないことをコミュニティー自身で証明することになってしまいます。

法定通貨建ての価格上昇がない仮想通貨やトークンは存在価値がない、ということであれば、もはや通貨としての振る舞いをする存在でなく、何の価値や権利の裏付けもない証票を交換し合う、嘘つきポーカーの賭博場のようなものということになってしまいます。

ステーブルコインが台頭する潮流

ステーブルコインが台頭

ステーブルコインとは、価格変動が小さく価値が一定の仮想通貨のことです。「指摘される課題を早期に解消し、通貨としての振る舞いと、ブロックチェーン技術を利活用したイノベーションを早期に社会に根付かせる」までの期間を、現在主流の仮想通貨やトークンの保有者が十分に多数になり、かつ、十分に時価総額を有するものとなるまで待たずとも短縮する可能性があるトークンが急速に台頭する可能性が高まっているようにみえます。

法定通貨に対して交換価値が固定化ないしは価格変動幅が非常に限定的な形となるよう設計された、いわゆる「ステーブルコイン」が、通貨チャンピオン自身であったり、通貨ネットワークの管理者である大銀行が大きな役割を果たして発行されるとの情報が、この2018年5月において急速にニュースを賑わすようになってきました。

日本においては、三菱UFJグループが進めるMUFGコイン、みずほ銀行が主導するJコイン、SBIグループが主導するSコインが今年から来年にかけて本格始動するといわれています。米国においては、テザー社が発行するUSDTが有名ですが、この他に、ゴールドマンサックス社、Bitmain社、百度が大株主といわれているサークル社(POLONIEX社の親会社)がUSDCを発行するとされ、また、信託銀行が価値保証を行うTUSDをバイナンス社が取り扱い開始しています。

シンガポールなどの金融ハブとなっている国においても、法定通貨のトークン化の検討が進められているなどのニュースがずいぶんと世間を賑わし始めています。法定通貨との交換価値が固定化した形で保証されているトークンが、汎用的な決済手段としての役割を担うトークンとして台頭する、そのような日はそう遠くない状況が明らかになってきたように思います。

法定通貨にペッグされたステーブルコインが幅広い支払いのために用いられるべく、ブロックチェーン技術が利活用され、発行体ないしは利用者により承認・信任された台帳管理者により適切に管理される。

このことが、従来のコミュニティーにとってどれくらいの脅威となるのか否かは現時点ではわかりませんが、「指摘される課題を早期に解消し、通貨としての振る舞いと、ブロックチェーン技術を利活用したイノベーションを早期に社会に根付かせる」ための、法定通貨に準じた基軸的なトークンとしての役割を担う可能性は非常に高いように感じます。

ステーブルコインの姿は、汎用的な支払い手段としての通貨としての振る舞いを目的とする仮想通貨やトークンのいわゆる最終形のようなものと捉えることもでき、ステーブルコインの台頭は、一部の汎用的な決済のみを目指している仮想通貨やトークンを、非常に短期間でレガシーの地へ追いやる可能性とパワーを秘めているのではないでしょうか。

第一回目は、3月以降の世界的な規制強化の流れと並行する相場の軟調の過程において、昨年までの高度な価値上昇において無視ないしは見過ごされてきた、仮想通貨やトークンの宿命的な課題、そしてそれをブレークスルーする可能性があるステーブルコインの台頭の足音について焦点をあててみました。

次回においては、様々なステーブルコインの特徴・課題や普及計画の進展状況をご紹介するとともに、もしステーブルコインが台頭する(個人的には非常に速いスピードで台頭すると思っています)場合の仮想通貨やトークン、トークンエコノミーの進化の方向性などについて、金融庁主催の検討会の動向も交えながら、私なりの考えをご説明したいと思います。

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