仮想通貨・トークンを取り巻く環境の変化の方向性について:DMM Bitcoin代表(田口 仁)

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DMM Bitcoin 田口仁

株式会社DMM Bitcoinの代表をいたしております田口仁です。前回は、仮想通貨が通貨としての振る舞いをするにあたり、通らざる得ない金融業界への仲間入りという視点から、仮想通貨やトークンが直面するジレンマ、ジレンマからの脱出に向けたシナリオの一つとして、ステーブルコインの台頭の可能性についてご紹介をしました。ステーブルコインとは、価格変動が小さく価値が一定の仮想通貨のことです。

前回:仮想通貨・トークンの将来的可能性に関する考察

今回は、ステーブルコインの台頭というシナリオが現実化した場合の、仮想通貨やトークンを取り巻く環境の変化の方向性について、少し踏み込んでご紹介をしたいと思います。個人的な考えを多く含み、また、なにか相場の変化の方向性を示すものではないこと、ステーブルコインの台頭というシナリオは変化の可能性の一つであり、他のシナリオの可能性も多く含むことをご理解いただければと思います。

ステーブルコインに対する様々なアプローチ

一般的に、資源が有限であり、欲しい人は競争をおこなって入手することになることから、供給量に対する需給の状況により、モノの価格はステーブルな状態ではなくなることになります。

需要と供給

基本的には、法定通貨に対してステーブルなコインを創出するという場合、発行された仮想通貨やトークンに対して、常におおむね等価になる形で法定通貨が担保された状態を維持することにより達成されます。法定通貨が担保された状態ないしは同類の状態を維持すべく、いくつかのアプローチにより、価格変動の低いステーブルコインを創出する取り組みが行われています。大きく分類すると、現時点では、後述のようなアプローチが採用されています。

中央集権的な仕組みによるステーブルコイン

基本的に、法定通貨に対してペッグ(安定していること)した状態を維持するステーブルコインを創出する場合、非中央集権的であり、トラストレスである、という理念から離れ、中央集権的に法定通貨の実物を担保としつつ、発行量を担保している法定通貨と同量にコントロールする方式がもっとも効率的となることは、おそらく皆さんイメージしやすいことと思います。

日本においては、三菱UFJグループが進めるMUFGコイン、みずほ銀行が主導するJコイン、SBIグループが主導するSコインが、これに該当します。また、米国では、テザー社が発行するUSDT、TrueToken社が発行するTUSD、また、ゴールドマンサックスからの出資をうけるサークル社が発行を計画するUSDCが有名です。

中央集権的な仕組みによるステーブルコイン

利点としては、トークン化された価値となっていることから、銀行ネットワークを通じた銀行口座間での価値(キャッシュ)の移動ではなく、インターネットを通じた分散台帳の更新をもって移動ができる点です。いつでも(銀行休業日という概念がなく)、容易な手続き(移動先のアカウントアドレスと数量を指定)で、迅速な形(数秒から数分程度)で、キャッシュ同等の価値を移動することができることになります。

いっぽうで、通貨チャンピオンが発行し管理する法定通貨同様に、発行体に対する信認が唯一の価値の源泉となることから、発行体の信任が得られない破綻状態となった場合に、その仮想通貨やトークンが無価値となる可能性があるという懸念は、完全に払しょくすることはできないものとなります。

非中央集権的な仕組みによるステーブルコイン

非中央集権的な理念を重視したアプローチとして、他の仮想通貨を担保としてステーブルコインを発行する仕組み、また、ステーブルコインの発行数量を受給に応じて調整する仕組みを採用するものがあります。この形態は、発行体が存在しない非中央集権的な仕組みとして構成されており、主に分散型取引所における取引の基軸通貨として利用できるものとして創出されていることが多いという特徴があります。

代表的なものは、イーサリアムを担保としてステーブルコイン(Dai)を発行するメイカー・ダオ、価格が1ドルを下回る際に債券を発行し発行済のトークンを償却する仕組みにより価格維持を行うBasisなどがあげられます。

Daiは分散型取引所であるOasisDexの取引基準通貨となっており、例えば、BTC/Daiという通貨ペアを取引する場合には、BTC/USDと同じ水準での取引が実現できるということになります。BasisはかつてBasecoinとよばれていたものがリブランディングしたもので、GoogleやAndreessenHorowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)などから133億円の投資を受け、アルゴリズムによる中央銀行の創出を目指すプロジェクトとして有名です。

ステーブルコイン台頭の可能性

現時点ですでに発行され流通しているステーブルコインは、仮想通貨やトークンの取引の際に銀行ネットワークを通じた銀行口座間での資金移動ではなく、インターネット上での分散台帳の更新を通じて取引を完結させることを主な目的に創られたものでしたが、特に日本においては、リテール分野におけるキャッシュレス化を促進する文脈の中で、仮想通貨、そして、ステーブルコインが取り上げられており、今後汎用的なリテール分野での決済手段としてステーブルコインの普及が、官民挙げて取り組まれていく可能性は、大いにあると理解されます。

中国の中央銀行である中国人民銀行においても、政府が管理する中国元との置き換えが可能な仮想通貨を発行する計画が進められています。日米の資金力がある事業者を中核としたステーブルコインの台頭は、汎用的な決済手段となることを主な目的としている途上にある、いくつかの既存の仮想通貨の価値をどのように変動させることになるのでしょうか。

中央集権型と非中央集権型

非中央集権型のトラストレスに固執し、通貨チャンピオンとの中央管理型の法定通貨の置き換え戦争を目指すトークン、汎用的な決済手段という通貨の置き換えという目的に固執せず、実経済活動の特定領域に対する分散台帳技術の適用拡大を中核的な目的として定義し、法定通貨が担う決済分野との棲み分けや融合を目指すトークン、どちらが社会に受け入れられていくのか?

その答えは、まだでていませんが、今後数年のとても短い期間に、その趨勢は明らかになっていくものと思われます。低金利が恒常化し、銀行ネットワーク自体が、一般市民から集めた資金の安定的な運用に非常に苦慮していることは皆さんご存知の通りです。分散台帳技術の実経済活動への適用拡大をもし早期に進めるのであれば、その基軸を担うトークンが高度なボラティリティーを有することが、その障壁になる可能性があることも、多くの人に理解できることと思います。

銀行が一般市民から集めた資金の運用先としてステーブルコインを発行し、そのステーブルコインが汎用的なリテール決済のキャッシュレス手段として活用され、そのトランザクション収入が金利として一般市民に還元されるというような道筋やステーブルコインの特徴が設定されるのであれば、銀行ネットワークが主導となって発行するステーブルコインを、相応の人が支持する可能性は高いのではないか、そのように個人的には理解をしています。

中国の政府機関の公表したトークン格付け

2018年5月18日において中国政府より、主要な仮想通貨プロジェクトに対する格付けが公表されました。イーサリアムが1位、ビットコインが13位となっていることなど、その格付けの恣意性などを批判する声が漏れ聞こえてきたように感じます。

中国政府機関公表のトークン格付け

しかしながら、法定通貨に対してペッグしたステーブルコインが、汎用的なリテール分野の決済手段として普及する可能性が現実的である、特に中国においては早期にそうなる可能性が高い、という仮定を大胆においたうえで、この格付けをみた場合、とても示唆に富んだ格付けであるという印象があります。

中国政府機関が公表した格付け表
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上位にランク付けされているのが、分散台帳技術をもとにしたスマートコントラクトを構成する基盤となることを中心的な目的としていること、また、すでに開発言語としてすそ野の広い開発者が存在する言語領域でのスマートコントラクト開発を容易とする基盤として構成されていること、多様な経済分野で創出されるトークンの高速な交換ハブとして機能することを目的としているもの、このあたりが重視されているという見方もできるのではないでしょうか。

第二回目は、仮想通貨やトークンの宿命的な課題をブレークスルーする可能性があるステーブルコインの台頭の可能性を少し深く、その私見をご説明するとともに、ステーブルコインが基軸的なトークンとして機能すると仮定した場合に、次に注目されるトークン基盤が保有したほうが望ましい特徴の示唆をご紹介しました。

次回は、もう一つの潮流として明らかになりつつある、すでに大規模な顧客基盤と独自経済圏(価値交換ネットワーク)を有するプレーヤーの新規参入と、参入により影響を受けるトークン市場の可能性について、少し深く、私見を交えつつご説明したいと思います。

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