業界自主規制における仮想通貨交換業の変化に関して:DMM Bitcoin代表(田口 仁)

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DMM Bitcoin 田口仁

株式会社DMM Bitcoinの代表をいたしております田口仁です。前回は、仮想通貨やトークン市場の成長進化の方向性について、大規模コミュニティーを有するプレーヤーの参入と台頭という可能性を中心に据え、ICOでの資金調達方式の成熟化、ポイント制度的なサービスコミュニティーの参入と台頭の可能性について、ご紹介をいたしました。

今回は、2018年6月18日に、日経新聞において取り上げられた業界の自主規制等に少し触れさせていただきつつ、仮想通貨やトークンの競争市場の変化と、交換業者の中心的な役割の変化の胎動について、少し掘り下げてみたいと思います。業界の自主規制という部分では、私どもDMM Bitcoinも日本仮想通貨交換業協会の一員ですし、時節的に非常にセンシティブなタイミングでもございます。あくまでも日経新聞社におけるニュースリリースを踏まえた視点という、ご理解をいただければと思います。

自主規制は金融業界への仲間入りの登竜門

仮想通貨業界自主規制

2018年6月18日の日経新聞記事によると、以下の内容がフォーカスされていました。最終的な内容は、これから確定されていくものとなりますので、不確実な内容を含むニュースリリースであると理解いたします。一方で、仮想通貨交換業の金融業界への仲間入りの(金融業界のスタンダードを遵守する)登竜門となる内容が明確となっていると感じます。仮想通貨やトークンを安全に保有し、活用したいと考える皆さんからすると、当たり前に映る部分もあるのではないかとも思います。


不公正取引

仮想通貨交換会社の役職員に対し、事前に入手した情報を基にした取引を禁じ、インサイダーの対象に仮想通貨の発生・移転の記録者に加え、株主や役職員、その配偶者や同居人まで含める。

資産管理

秘密鍵についてオフライン保管とする。また、分別管理を担当する部門を設置する。

取引システム

約定処理の遅延・停止が1分以上となった場合にシステム障害認定とする。乖離した価格となる場合に、注文・約定を一時中止する。

仮想通貨を新たに取り扱う際のルール

マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与に利用されるおそれが高い通貨や移転記録の追跡が難しい通貨のほか、公認会計士や監査法人による適切な監査が難しい通貨については取り扱いを禁止する。疑わしい取引は金融庁長官に届け出を行う。

広告

アフィリエイターによる勧誘の禁止。


7月にはG20において、仮想通貨やトークンに関して遵守すべきルールの骨格が明らかになるとされています。仮想通貨やトークンという産業に対し、通貨チャンピオンが歴史と経験からコモンセンス(法律で明文化されているか否かに関わらず、ルールの主旨を達成するための約束事を含め)としてきた内容に則し、金融業界への仲間入りを促すことが明確となる可能性は高いのではないかと推察されます。
高いボラティリティーを好む、好戦的な金融類似的な活動領域に留まり、ないしは、留まらせられていく、仮想通貨やトークン。

金融業界のコモンセンスを有した次世代の新たな金融ネットワークの中核者として受容され、その振る舞いに進化していく、仮想通貨やトークン。各々のトークンコミュニティー、また、各々の仮想通貨の価値交換に携わるものが、その選択を迫られる分かれ目の時期が、遠くない将来に設定された、ということだと思います。

仮想通貨やトークンがチャレンジする二大巨人

仮想通貨・トークンのチャレンジ
仮想通貨やトークンがチャレンジしている、もしくは、しようとしている領域は?通貨チャンピオンに対する壮大なチャレンジであるということは、皆さんも充分に理解されていることと思います。中央集権的な仕組みに対する壮大なチャレンジという旗印、これを、インターネットという社会基盤を通じて実現するという意味では、もう片方のチャンピオンがいることは想像に難くないのではないでしょうか?

仮想通貨やトークンがチャレンジする西の横綱は、この10年来において、フリーミアムビジネスモデルを中核として圧倒的な中央集権的な仕組みで成長進化を遂げてきた、いわゆるネットガリバーの企業群ということになります。現時点においては、ネットガリバーは、分散台帳技術を用いた仮想通貨やトークンを一定の距離をおいて静観しているようにみえます。

一方で、将来的に仮想通貨やトークンの適用が花開く巨大市場とされている、自動車産業、不動産産業、EC物販産業、それに付随する、広告活動を含めたコミュニケーションネットワーク産業の領域において、AIやIoTを含む新しい技術開発に対する投資や、シェアリングエコノミーというお題目のもとでの新サービスの投入に、ネットガリバーは積極的に取り組みを進めています。ネットガリバーにとっての分散台帳技術を用いた仮想通貨やトークンの適用価値はどこにあるのでしょうか?

ネットガリバーは、クレジット決済、収納代行、デビット決済など、多様なキャッシュレス決済手段を提供することで利便性を高め、また、利用者が消費するキャッシュの回転率を引き上げることに成功しています。

トークンを通じた形で仲介者を経ずとも直接的にキャッシュレス決済することができるならば、それはネットガリバーにとって、キャッシュレス決済の仲介者に支払うコストを削減し、最終利益を3%程度引き上げることにつながるかもしれません。キャシュレス決済の仲介者を経由した場合、実際のキャッシュは、1か月から3か月など、遅れて手元に来ることになりますが、トークンを通じて直接的にキャッシュレス決済を可能とすることで、キャッシュフローが大きく改善する点も魅力的にみえます。

すでに独自の価値交換のための経済圏を構築し、キャッシュレス決済については仲介する金融関連業者との連携と棲み分けをしてきたネットガリバーは、分散台帳技術を用いたトークンにより、金融事業者を介した決済に依存しない直接的なキャッシュレス決済が可能となる仕組みを採用する場合を想像してみましょう。

一つの選択肢は、中央集権でないとされコントロールが原則的に不可能な、新興的な他者が支配する、高いボラティリティーを好むネットワークやコミュニティーに依存することを由とし、それを採用する。もう一つの選択肢は、独自の価値交換のための経済圏とその延長線上の周辺で利用可能な、独自トークンをもって市場制覇を狙う。

もし、新興的な他者が支配する、高いボラティリティーを好むネットワークやコミュニティーに依存することを由とするのであれば、ビットコインなどは、ネットガリバーにおいて幅広くキャシュレス決済手段として採用されているようにもみえますが、実際にはそうなっていません。

充分に、グローバルな形で法制度が整備され、安定的な形でのトークンの利活用が望ましく受け入れられる土壌が整うならば、既存の仮想通貨やトークンのコミュニティーが望むか望まないかに関わらず、ネットガリバー自身がトークン市場に対する巨人のようなチャレンジャーとなり、既存の仮想通貨やトークンは、ネットガリバーの強烈なカウンターにさらされるという可能性は、相応に高いように感じますが、いかがでしょうか。

もし、中央集権的な信頼できる組織があるのであれば、それは買収という手段でイグジットできそうですが、非中央集権的な仕組みの場合、そのような方法はとれません。ネットガリバーにおいて採用されることで、キャッシュレス決済を目的値とした仮想通貨やトークンの価値は高まる可能性はあり、それを熱望している一方で、ネットガリバーは自分自身の資金力と信用力で、同じような仕組みを自由に構成することが可能な競争相手であるというジレンマが、通貨チャンピオンへのチャレンジと同等か、それ以上に重たい課題となるような気がします。

非中央集権型のキャッシュレス決済が、圧倒的な影響力をもって、世の中の価値交換の中核として支配力を有するにはどうすれば実現できるのか?そのような質問には、このような風にお答えしています。
もし、常温核融合に類する、無尽蔵のエネルギー手段を、非中央集権的なコミュニティーが有するなら、それは無尽蔵の価値に裏付けされ、おのずと価値交換の支配者となります。資源の有限性がある限り、有限な資源の製造に支配権を有するものが価値交換の支配者となり、ドルがドルの地位をオイル決済の専属的な通貨として振る舞うことで維持する様と、同じメカニズムが機能するのだと思います。

仮想通貨交換業の役割の変化

仮想通貨交換業の役割変化

冷静な眼で見渡してみるならば、非中央集権という点を取り除き、それに固執しないならば、仮想通貨やトークンの成長進化は、おそらく非常に短期間で実現する可能性があり、それは社会にとって有意義な可能性があるという仮説を、ステーブルコインの台頭、非中央集権を与しない可能性が高い、通貨チャンピオンとネットガリバーの本格的なトークン市場への参入という視点を交えて、本記事含め第一回から第四回までご紹介してまいりました。

第1回:仮想通貨・トークンの将来的可能性に関する考察
第2回:仮想通貨・トークンを取り巻く環境の変化の方向性について
第3回:ICOの成熟化、ポイント制度的サービスコミュニティー参入と台頭の可能性

それでは、それが実現した場合の、仮想通貨交換業の役割というのは?

仮想通貨やトークンは、利活用が進めば進むほどに、ないしは、それを本格的に進めようとする際には、実はボラティリティーを好まず、安定を好むことは、これまでのご説明で、凡そご理解がいただけていると思います。

これまでにおいては、ボラティリティーを好む仮想通貨やトークンにより、市場参加者が拡大し、この業界の成長が促されてきたということは、現実的にその通りなのだろうと思います。いっぽうで、ボラティリティーを好む市場参加者に対する、利便性の高い、取引しやすいサービス、ということが市場の成長をけん引することの限界は、もう間近か、もしくは、すでに現実となっている、という危機感を抱いているというのが正直な気持ちです。

仮想通貨やトークンが社会に幅広く受け入れられる状況を踏まえた場合、仮想通貨交換業は、多様な仮想通貨やトークンのECサービス(オークション含む)的なものとして取り扱い銘柄の豊富さや取り扱い銘柄の希少性、カストディアンとしての信用力と安全性が、競争優位の源泉となる可能性は高く、双方がそろっていない限り淘汰される確率は高いと捉えています。その意味で取り扱いトークンが圧倒的に日本よりも豊富な海外事業者は、グローバルには、一歩か二歩先にいっているように、みえなくもない気はします。

個人的には、仮想通貨交換業は、証券業(投資銀行含む)や商社に近いものとなっていくと捉えています。ボラティリティーの高い投資資産が中心ではなく、現実世界での利用価値がすでにあるか、将来的に合理的に利用価値が明らかであるようなユーティリティートークンを中心とした扱いをしっかりとふやしていく。

それを増やす活動として、利用者の代理的な目利き役となって責任をもって価値を評価・選別し、利用価値の高いユーティリティートークンの創出を支援(プライベートセールを通じた投資を含む)し、一方で、必要に応じて販売が適切なタイミング(例えば、利用者にとって利用価値が合理的に明確となる)までの投資リスクを取り、適切な利用価値や、合理的な価格形成のメカニズムが明らかになるタイミングで、利用者の方に販売するとともに、継続的な価値交換の場を提供する。この数年間を経て、そのような業態に変化をしていくものと捉えています。

今回は、日経新聞において取り上げられた業界の自主規制等に触れさせいただき内部的な視点での変化の方向性、二大巨人からの強烈なチャレンジによる外部的な変化の方向性などを踏まえつつ、近い将来における仮想通貨交換業の変化の姿の可能性についてご説明いたしました。是非とも、第一回から第四回までを通しでご覧いただければと思います。

次回からは、将来に対する展望という視点から、ガラッと視点を移しまして、足元の相場環境や、折々のトピック、例えば、こんな分野でトークンを活用するとおもしろそうだという空想的なお話、そのようなお話をさせていただきたいと思います。

第1回:仮想通貨・トークンの将来的可能性に関する考察
第2回:仮想通貨・トークンを取り巻く環境の変化の方向性について
第3回:ICOの成熟化、ポイント制度的サービスコミュニティー参入と台頭の可能性

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