イングランド銀行が中銀デジタル通貨「CBDC」に“消極的肯定姿勢”の報告書を公表

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イングランド銀行が中銀デジタル通貨(CBDC)に“消極的肯定姿勢”の報告書を公表

イングランド銀行(中央銀行)は2018年5月22日、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」発行に関連するリスクを行内スタッフの手で深く考察した、ワーキングペーパー「調査・研究結果報告書」を公表した。

報告書は、独自の仮想通貨発行の可能性をパブリック・アクセスの違いから、あり得る3つの可能性に触れているが、発行の可能性そのものについては「消極的肯定」という姿勢を貫いている。

CBDCへのアクセス権限で3つの可能性

CBDC発行の3つの可能性は以下のようになる。

●銀行およびその他の認定金融機関のみ利用可能な制限付きアクセスモデル(Financial Institutions Access Model)。最も限定的なCBDC発行モデルであり、アクセス権を銀行およびノンバンク金融機関(NBFI)に限定する制限付きアクセスを可能にする方式。金融機関はイングランド銀行と直接接触し、適格証券と交換する形でCBDCを売買する能力が与えられる。

●家族あるいは企業が間接的にのみアクセス可能な半制限付きモデル(narrow bank)。対象となる銀行は、ナローバンクとして活動して、家族あるいは企業にCBDCを提供するが、貸付を行うことはできない。

●すべてが自由に利用可能な完全な非制限モデル(Economy-Wide Access Model、経済全体のアクセスモデル)。最も幅広いモデルで、個人あるいは非金融機関に対しても、直接的なアクセスを許可する。このモデルの下では、CBDCはすべての関係者にとってマネー(通貨)として扱われる。銀行とNBFIは、中銀から直接CBDCを購入できる唯一機関である。CBDCを購入したいそのほかの法人は、預入金との引き替えでCBDCを売買する、CBDC取引所を経由する必要がある。

イングランド銀行は多少でも抵抗するスタンス

イングランド銀行は、独自の仮想通貨を「近い将来いつでも」発行できることを想定していない。報告書はさまざまなコンテキストの中で、仮想通貨がどのように機能するか、理論的な基礎を確立している。報告者はまた、スイス政府が議会に要請した仮想通貨「e-franc(eフラン)」発行検討について関心を示している。

関連:スイス政府が独自仮想通貨「e-franc (eフラン)」発行に向けて正式調査開始へ

にもかかわらずイングランド銀行は、独自仮想通貨の発行に多少でも抵抗を示している。つまり同銀は、そうなれば経済の中での中銀の役割に悪影響を与えるとの見解を捨てきれない。

CBDCの発行に反対する根拠がなくなりつつある

報告書によれば、イングランド銀行は独自仮想通貨発行という考え方に全面的に同意できない理由を、以下のように述べている。

「単一の銀行による運用は、金融部門のシステム上の諸問題の引き金になることは十分あり得ることである。CBDCは電子的にボタンをクリックするだけの性格であることから、CBDCの存在は、そのような運用をより一層容易にするとの説はあり得る。しかし、それは説得力がない。異なる金融機関の銀行預金もまた、電子的処理で利用しやすく、あるトラブルを起こした金融機関から別の金融機関に既存の預金を移すというような運用については、CBDCを経由する運用と根本的に異なる次元の話ではないというのが、その理由である」

報告書は結論として、「そのような運用はもちろん、CBDCが存在しない世界では、今日完全にあり得ることだ。従って、これはCBDCに反対する意見とはなり得ない」と述べている。

CBDCは、これまで以上に日常の現実に近づいているが、まだまだ近い将来のことではない。それ故に世界の多くの国は、選択肢を探ろうとする。例えば、ノルウェー中央銀行(Norges Bank)は最近、CBDCに関する調査・研究報告書を発表、スウェーデン国立銀行(Sveriges Riksbank)は、独自か総通かe-krona(eクローナ)の発行を探っている。中国でさえ、人民銀行が独自デジタル通貨のマイニング(採掘)を検討しているのだ。

(フリージャーナリスト、大手マスコミOB記者:長瀬雄壱)

参考
Cryptovest
Bankofengland

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