米証券取引委員会(SEC)の高官が、ETHは証券ではないとの見通しを発言しました。
これはEthereum(イーサリアム)にとってポジティブなニュースであり、これに反応してETHは価格を高騰させています。
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この見解の解説とおよび、どのような影響がありそうか整理をします。
SECは、ETHが証券ではない根拠として、まずひとつに、中央管理者がいない点、そして、現流通方法は証券として管理する必要性がない点を挙げています。
過去に証券の定義を巡ったハウイ・テスト
米国の有価証券の定義を巡る判例はハウイ・テストと呼ばれるケースが有名です。
1940年代、現在に続く証券法が成立をして時間が経たない頃に争われたケースです。
ハウイ・テストはフロリダでオレンジの果樹園を切り拓く人が、資金を募り、オレンジが実ったらそれを販売し、利益を出資者へ配当をするというものでした。ハウイ・テストは、株式会社ではないものの、資金を調達して将来利益を配当するもので、当時、議論を呼んだと言います。
現在ですと配当型クラウドファウンディングに近いイメージでしょうか。
ハウい・テストは、争われた末に、有価証券であるという判例が出ています。
その根拠は、特定の個人や団体の努力に依存をする性質のある約束性があるからです。
ビットコインの場合、これにあたらずコモディティであるという見解が強くなっていました。ビットコインはすでに分散化されており、過去になにか投資家と約束をしてICOをしているわけでもありません。
そういった意味で証券ではありませんでした。
”過去にICOをしたプロジェクトが(現状況で)証券ではない”と判断をされる初の事例
一方、Ethereumが証券ではないという事例は、ビットコインと異なります。
Etheremは2014年8月にその開発と初期のディストリビューションを行うために、目論見書とも言えるホワイトペーパーをリリースをして、クラウドセール(ICO)をしています。この時点で、ETHは、Vitalik(イーサリアム開発者)や数名の開発者チームの働きに強く依存していたといえます。
今も数名の開発者や財団に強く依存をしているかもしれませんが、今以上に依存が強い状態だと言えます。つまり、この時点のEthereumは、今より証券性が強いとも言えます。この時点、つまり2014年8月時点にSECに判断をさせたら、ETHは証券だったかもしれません。
しかし、2018年6月の状況においては、証券ではないと言え、元々証券性があったものが分散化されたネットワークになったような事例です。
「ETHは証券ではない」というこの見解は、”過去にICOをしたプロジェクトが(今の状況を見て)証券ではない”と判断をされる初めての事例と言えます。
では、これからパブリックプロトコルを作るプロジェクトはどのようになるのでしょうか?初期にICOをする場合、証券として販売を行う必要があるのでしょうか?一度、証券として登録をして行い、その後に十分に分散化されたら、そのときにコモディティになるのか、などの問いが発生します。
それらは非常に複雑な議論になり、Ethereumがコモディティとしての扱いを受けるこは、後発のパブリックプロトコルに対してさらに大きなリードになるかもしれません。
その一つとして、SECのスピーチの直後に、COBE先物取引所が、SECの見解はETH先物の取り扱いの障害を取り払ったとコメントをしています。
CBOE先物取引所は、ビットコインの先物を取り扱ったデリバティブ取引所です。
早ければ、年内にもETHの先物が上場をするのではないのでしょうか。
その点でEthereumにとってはやはり非常にポジティブなニュースだと言えます。
Ethereumが現状、その他のパブリックプロトコルに対し、どの程度を差をつけているか俯瞰した記事は、最近筆者のブログでもポストしました。あわせてお読みください。
▼データで見るEthereum、プラットフォームとしての競争にEthereumはなぜ優位性を得たか。
https://junyahirano.com/statistics_of_ethereum_how_they_become_platform/
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