どうも墨汁うまい(@bokujyuumai)です。
イーサリアムはロードマップからマイニングを必要とせずブロックを生成するProof of Stake(以下PoSとする)に移行することとなっており、4月末に改善提案となるEIP-1011が提案されました。
これによりイーサリアムのPoSであるCasperへの完全移行前のProof of Work(以下PoWとする)とPoSとのハイブリッドにより、マイナーの報酬は段階的に減らされることとなります。
本稿では現状のマイニングの状況とイーサリアムがCasperへ移行することによる影響をわかりやすく初中級者向けに「前提知識」となる前編と「マイニングの今後」の後編にわけて解説を行います。
ETH速報:イーサリアムのPoS Casper FFGを使用したPosとPoWハイブリッドの仕様EIP-1011が提案される。(現時点での)バリデーターコストは最低1,500ETH約1億円で引出しは75万ブロック後(130日)、報酬は29%減少の模様 #イーサリアム #Ethereum #仮想通貨 $ETH #ブロックチェーン #Casper #マイニング https://t.co/9b4DRRILQ0
— 墨汁うまい(BlockchainUmai) (@bokujyuumai) 2018年4月21日
目次
マイニングとは?
イーサリアムやビットコインをはじめとするPoW仮想通貨はマイナーがGPUやASICの計算力をネットワークに提供することでブロックを生成し、その報酬として新規ETHを受け取ることができます。これは非中央集権である仮想通貨の経済圏を構成する重要なインセンティブであり、同時に今話題のセルフィッシュマイニングを利用した二重払い攻撃や51%攻撃などを防ぐ重要なセキュリティを果たします。
まずは簡単な例から今話題の攻撃を確認しましょう
ハッシュレートから比較する攻撃容易性
イーサリアムネットワークは現在270TH/sを推移しています。これを単純にGPU枚数に換算するとGTX1060 6GBを21MH/sと仮定すると約1285万台に相当します。対してビットコインゴールドは当時40MH/sを推移していました。ビットコインゴールドはZcashと同様のEquihashを使用しており、GTX1060 6GBでは300H/sなので、約1万3000台のGPUが計算していることになります。
つまりイーサリアムは約4500億円、ビットコインゴールドは約4.6億円に相当するGPUが使用されていると表すことができます。
攻撃コストとそのインセンティブ
ではここでマイナーが二重支払いを行うために攻撃を行いたいとします。51%攻撃を行いたい場合は過半数のハッシュレートを得る必要があるため、イーサリアムは2250億円、ビットコインゴールドは2.3億円分のGPUが必要となります。新規にGPUを追加するには非常にコストがかかるため、マイナー間で裏で手を組み、攻撃に必要な台数分用意するほうが簡単です。
2.3億円分のマイナーを買収するより1000倍の数を持つイーサリアムは高いコストがかかり、長期間かかるため現実的ではありません。つまり、よりマイナーが少なくコストや時間のかからないネットワークは攻撃しやすくなります。そのため「マイニングの中央集権化を避ける」などと良く聞くでしょう
またハッシュレートが低いのに対し、通貨の価値が高い場合は攻撃コストに対して利益が高くなるため、攻撃者にはその通貨を狙うインセンティブがあります。対してマイナーは自身のマイニングリグや設備投資から得られる収益を自ら破壊するインセンティブは低いため、イーサリアムなどのメジャー通貨を狙う確率は低いといえるでしょう。
イーサリアムから見るマイニングの分散
下記図は1週間でみた際のトップマイナーの割合となっています。1位のマイナーのEthermineを例に見ていきましょう。
マイニングプールとは?
EthermineはETHマイニングで最も人気の高いマイニングプール(以下プールとする)です。ETHを個人でマイニングするには膨大な数のGPUが必要となり、ほぼ現実的ではありません。そのためマイナーはプールに携わり、計算力をあわせることでマイニングできるブロック数を安定させます。
Ethermineには約13万のマイナーが携わっており、51万台のリグが動いていることがわかります。つまりプール=一個人というわけではないことがわかります。
イーサリアムは攻撃しやすいのか?
プールに携わるマイナーは簡単にプールを切り替えることができ、プールごとの違いは最低ペイアウト(報酬の支払い額の最小単位)と手数料くらいのもので、基本的にプール手数料は1%となります。
つまりマイニングプールの意向≠マイナーの意思です。たとえマイニングプールが攻撃を行おうとしても上記で説明したように、マイナーはネットワークを正常に保つインセンティブを持つため成功は難しいでしょう。
Ethermineは13万人のマイナーが計算を提供しており、その全部のマイナーを買収することはほぼ不可能と言えるでしょう。故にネットワークのハッシュレートが高く、かつ分散しているネットワークほど攻撃が難しくなると言えます。