なぜEYはパブリックブロックチェーン上でのトランザクション秘匿化にこだわるのか?

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なぜEYはパブリックブロックチェーン上でのトランザクション秘匿化にこだわるのか?

ブロックチェーンに積極的なEY

アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young:EY)社は4大会計事務所の1つです。近年では、業務アプリケーションの導入に関する幅広いITアドバイザリーサービス、データマネジメントコンサルティング、およびITプロジェクトマネジメントサービスを提供しており、ITコンサルティングファームになっています。

ITコンサルティングファーム、例えばIBMやアクセンチュア、デロイトなどもブロックチェーンに積極的ですがEYも例に漏れません。同社のブロックチェーン関連の案件では、ワインのサプライチェーン追跡をコンソーシアムブロックチェーンで実装したものなどが存在します。

同社はイーサリアム(Ethereum)のブロックチェーン上のトランザクションを秘匿化する技術であるナイトフォール(NightFall)をオープンソースで公開しています。EYのブロックチェーン領域での研究開発の開始は2016年のQ3までさかのぼります。2019年現在で、同社が関わるブロックチェーンプロジェクトの数は150を超えるとされています。

ブロックチェーンは複数の企業がコラボレーションできるプラットフォーム

EYが定義するエンタープライズ向けブロックチェーンの価値は、「エンタープライズ同士が電子契約をマネジメントするシステムであり、単一企業で行っていた役割を複数社間で可能にする」と定義をしています。現在では、情報システムが企業間で統一されておらず、それぞれが異なる定義でデータを保有しています。これによって発生するコストや複雑さによって、企業間取引の効率性が制約を受けていると指摘しています。

EYは、パブリックブロックチェーンでこのコントラクト(ビジネスロジック)を共有し、秘匿化と数学的証明によって、複数社間でそれをマネジメントします。ある契約に署名していた事実や契約内容、またはより広範なビジネスロジックを当事者間以外に公開せずに同意しているという事実だけはパブリックブロックチェーンで記録されます。つまり、EYはブロックチェーンを複数の企業がコラボレーションできるプラットフォームとして見ています。

パブリックブロックチェーン上でのトランザクション秘匿化にわだわる理由

複数の企業がコラボレーションとしてブロックチェーンを利用しようとした場合、センシティブなさまざまなデータをブロックチェーン上でトランザクションできない場合が多々あります。

パブリックブロックチェーン上であればブロックチェーン上のデータは全ての人が閲覧できますし、コンソーシアムブロックチェーンでもノード参加者であればブロックチェーンの情報は閲覧できます。だからこそEYは秘匿化の技術にこだわっています。前述したように同社はイーサリアム上のトランザクションの手数料を下げるNightFallを既にリリースしています。

同社はゼロ知識証明を利用した秘匿化トランザクションをイーサリアム上に載せることに成功しています。また、ゼロ知識証明を利用した秘匿化トランザクションはガス手数料が高くなることが欠点でしたが、このコストを100ドルから9ドル程度まで下げることにも成功しているとしています。今後、EYは秘匿化のトランザクションの費用をさらに安価にして、スケーラブルにするといいます。

そのステップは以下のように行われる予定です。

1.計算効率を高める。
既に100ドルから9ドル程度までコストが下がっていますが、ゼロ知識証明によるトランザクション生成をする際の計算コストをさらに下げる努力をするとしています。

2.トランザクションのバッチ処理。
複数の秘匿化トランザクションを1つにまとめてイーサリアム上にトランザクションをブロードキャストすることで1つあたりのトランザクションコストをさらに下げる。

3.ビジネスロジックが当事者以外に秘匿化されたプライベートスマートコントラクトの実装。

4.ユーザーは当事者以外にいかなる情報を公開しなくても(ただし正しい要件を満たしているかどうかは数学的に証明される)プライベートスマートコントラクトを使用できるようになる。

ビジネス利用を進めるための秘匿化技術の研究開発において、EYは最も先進的な1社です。パブリックブロックチェーン上で利用できる取り組みなので、EYが研究開発したプロジェクトを他のプロジェクトがさらに応用利用するという事例も増えるのではないかと予想されます。

参考
EY to help Blockchain Wine Pte. Ltd. build blockchain platform for wine distributors across Asia and worldwide

Inside EY’s radical plan to get major businesses using Ethereum

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