ゴールドマン・ショックで仮想通貨(ビットコイン)急落は事実誤認か?

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ゴールドマン・ショックで仮想通貨急落は事実誤認?~実は「買い材料」と考えられる理由とは?

ゴールドマン・サックスが仮想通貨の取引デスク開設計画を中止したとの2018年9月5日にBusinessinsiderのニュース報道が市場を駆け巡り、ビットコインを始めとすると仮想通貨が軒並み急落の憂き目にあっています。ただし、この報道が急落の真犯人ではないとする見方もあり、情報が錯綜している様子もうかがえます。ゴールドマンサックスより公式発表は確認出来ていません。

ビットコイン 価格レート

そこで今回は、ゴールドマンを巡る一連の報道を整理し、その影響を探ってみたいと思います。

仮想通貨取引デスク開設中止は単なる誤解?

Businessinsiderは5日、ゴールドマン・サックスが仮想通貨取引デスク開設の計画を当面棚上げしたと報じています。このニュースが瞬く間に市場に拡散し、ゴールドマンの参戦で市場の拡大を期待していた投資家が失望したことで市場の急落を招いたのではないかと考えられています。

ゴールドマンの取引デスク開設はCNBCが昨年10月に「検討中」と伝えたほか、12月にはブルームバーグが今年6月までにトレーディングを開始すると報じるなど、その後も「ゴールドマンが仮想通貨に参戦」との報道が相次ぎました。

ただし、これらの記事はすべて観測記事であり、これまでのところゴールドマンが正式に取引デスクの開設を検討していると発表したことは一切ありません。ゴールドマンからのコメントは一貫しており、「仮想通貨サービスをどのように提供するのか模索中」とのことです。

このコメントを踏まえて、各種報道機関が「もうすぐ始まりそうだ」とか「いや中止になった」とか騒いでいるのであって、そもそもゴールドマンはトレーディングを開始するとは言っていませんので中止も延期もありません。

もちろん、火のないところに煙は立ちませんので、ゴールドマンがトレーディングを準備していることは事実でしょう。ただし、一連の報道を見る限りでは、以前から準備中であり今でも準備中であることに何ら変わりはないようです。

売り材料としての人身御供?

ウォール街は総じて仮想通貨には冷ややかですので、仮想通貨業界の期待をゴールドマンが一身に背負っていた面もあって、ゴールドマンの仮想通貨市場からの撤退を匂わす報道が仮想通貨の急落を囃したことは間違いなさそうです。

ただし、真相はやぶの中です。マーケットでは何の理由もなく相場が下げることはよくあるとは言いませんが、珍しいことではありません。また、仮想通貨交換業者ShapeShift(シェイプシフト)が運営方針を変更したことが売りを誘ったとの見方もあります。

ShapeShiftは、スイスに本拠を置くアカウント登録が不要な交換業者で、匿名でのピア・ツー・ピア(P2P)取引を提供してきましたが、これまでの方針を転換し、個人情報が必要な会員制プログラムを導入すると発表しています。この発表を受けて、匿名を理由に仮想通貨を保有していた向きが手持ちの仮想通貨を手放したのではないとみられているのです。

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また、ヘッジファンドの循環的なポジションの動きも指摘されています。米商品先物取引委員会(CFTC)が週次で公表している建玉明細によると、ヘッジファンドのポジションは7月24日に過去最大の売り持ちとなっており、逆に小口投資家が大きく買い越していました。
その後、ウィンクルボスETFの申請却下で相場が急落となり、小口投資家の投げ売りもあってビットコイン価格は8000ドル超から8月中旬までに6000ドル近辺まで値を下げています。

しかし、ヘッジファンドがこのタイミングで買い越しに転じると相場も反転し、月末までには7000ドル台を回復。するとヘッジファンドは再び売り越しに転じて相場の下落を待ち構えていました。大きな流れとして相場が上昇する過程ではヘッジファンドの売りポジションが積み重なり、何らかの売り材料が出ると相場が急落するパターンがうかがえます。

ヘッジファンドに未来を予言する能力があるとは思えませんし、急落のすべてをヘッジファンドのポジションで説明できるわけでもありませんが、安値を拾って買い越していたヘッジファンドが、大幅な売り越しに転じて相場が崩れやすくなっていたタイミングであったことも急落の一因となったのかもしれません。

今となっては後知恵ではありますが、ゴールドマンを巡る報道は売り方にうまく利用され、買い方のパニック売りを誘ったとみることもできそうです。

実は買い材料との見方、ETF承認に前進か

今回の報道では取引デスクの開設中止が大きく取り上げられましたが、ゴールドマンは開設を後回しにしてカストディ業務に注力するとも報じられています。この点に注目し、ウォール街のあるファンドマネージャーからは「これは買い材料ではないか」と声も聞かれています。カストディ業務の確立はビットコインETFの最後のピースと見られているからです。

これまでにビットコインETFの申請が何度となく却下されていますが、その多くが現物の裏づけのない先物取引に連動するタイプのETFです。また、現物連動型のETFではカストディが問題視されています。

こうした状況を踏まえて、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)はBakkt(バクト)という新会社を8月に設立しています。バクトでは現物をベースとした先物取引の開始と機関投資家向けのカストディ業務の提供が予定されています。

現在、仮想通貨業界が抱えている課題の一つがカストディ業務であり、少なくともビットコインETFに関しては最大にして最後の関門となっているようです。したがって、ゴールドマンの動きは仮想通貨業界が目指す方向と一致しており、ビットコインETFの承認に向けて大きな役割を果たすことも期待できそうです。

ビットコインETFではシカゴ・オプション取引所(CBOE)が申請しているVanEck SolidX Bitcoin Trust(CBOE ETF)の審議が9月30日にまで延期されていますが、審議は最大で来年2月まで再延長が可能です。また、バクトでの先物取引の開始は11月が予定されています。

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こうした中で、ゴールドマンがカストディ業務の確立に注力するとの報道はむしろ仮想通貨業界にとってはポジティブな材料といえそうです。

今回の一連の報道を見る限りでは、ゴールドマンがトレーディングを諦めたわけではなさそうです。実際のところ、トレーディングを始めようとしたものの、カストディ業務の整備が追いつかず、トレーディングはカストディ待ちとなっているのかもしれません。

そうであるならば、カストディの準備が整い次第、トレーディングにもゴーサインが出る可能性もありそうです。そうしたタイミングに合わせて、バクトでの先物取引がスタートし、さらにETFの承認がおりるようですと、このところ逆風の続く仮想通貨業界にも好循環の訪れが期待できそうです。

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参考
Bloomberg
Businessinsider

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