前回、規制についてお話をさせて頂きましたが、今回は先月12日のJ.P. Morgan CEOの Jamie Dimonさん(以下、Dimonさん)の発言をベースに考えて見ましょう。

大手投資銀行のCEOがビットコインを否定?

何と言っても、大手金融機関のトップがBitcoinについて、英単語でFraud(著者訳:詐欺)っと表現したことで、炎上となりました。

特に言い方として、会議の席上で以下のように言い放ったようです。

「”It’s worse than tulip bulbs. It won’t end well. Someone is going to get killed,”」
(著者訳:チューリップバブルよりタチが悪く、絶対いい終わり方はしない。そして、誰かが殺されるでしょう。)

Fraudという単語よりも、全くの可能性を否定するようなwon’tという言い方の方が、インパクトがあるかと感じます。金融系の人が普段、使うような言葉ではありません。

もともとDimonさんはBitcoinに否定的で有名です。

2015年11月にも会議の席上で、以下のように発言したとのことです。

“Virtual currency, where it’s called a bitcoin vs. a U.S. dollar, that’s going to be stopped, … No government will ever support a virtual currency that goes around borders and doesn’t have the same controls. It’s not going to happen.”
(著者訳:USDに取って代わるような仮想通貨は規制されるでしょう。… また、仮想通貨として国境を越え、同様に管理されないものを、政府が何かしらサポートすることは絶対にない。また、今後も起こり得ないでしょう。)

ここでも、Will を使っていますね。もしかするとDimonさんは、こういう言い方を好むのでしょうか? いや、そんなことはありません。動画を見る限りDimonさんは確信犯でこういう言い方を意識して使っていると見えます。

ブロックチェーンには好意的

否定的な言い方や今回のFraudという単語だけがニュースになっていますが、DimonさんはBitcoinのベースの技術であるブロックチェーンに関しては大変好意的な発言をしています。

では、ちょっと英語のお話は終えて、Dimonさんの言った言葉のチューリップバブルのお話をしましょう。

チューリップバブルに本当に似ているのか?

1636年11月から1637年の5月にかけて発生したバブルのようです。

残念ながらどこまでデータが正確かはわからないので、Wikipediaに頼りましょう。

1636年11月12日の値段を1とした時、以下のように動いたようです。

1636年11月25日   :100倍
1636年12月12日   :150倍
1637年2月3日     :200倍
1637年5月1日     :1倍

これだけ見ると、

・そんな短期間のデータで議論しても意味はない
・チューリップの球根のような全く実用性のないものとBitcoinを一緒にするな!

という声も聞こえてくるかと思います。

我々にとってチューリップの球根は、実用品よりも美術品に近い感覚で、

「マニアの間でレア化して勝手に値段が上がって、熱が冷めてバブルが弾けただけでしょ!」

と片付けてしまうとことも可能かもしれません。

レア化したトレーディングカードも同様かもしれません。

(ここできちんと謝っておくと、芸術品やトレーディングカードにも健全な実需市場があり、一緒にするな!とのお叱りを受けるかもしれません。1990年代のエアマックスバブルのようなことを例として言いたいということでご了承願います。)

チューリップ市場のこれまで

しかし、チューリップは違うようです。

あくまで残っている記録に頼ると、1600年代初頭から、オランダには、チューリップの市場が存在していたようです。

そして、それは実需、投機両方存在し、投機市場では証拠金取引までされていたようです。

実需、投機ということに関しては、以下の記事を参照してください。

>> 日本のビットコイン取引高が世界1位の理由

すでに、1610年の政令により空売りは禁止されていたようです。

空売りは、証拠金取引で売りのポジションを持つことですが、ここでは、「取引を抑制する」くらいの意味で理解してください。

そして1621年、1630年および1636年にも同じ命令が出されていた記録が残っているようです。

命令で規制しても、実際みんな取引をやめなかったということは、それだけ一般化して、日々の生活に浸透していたと認識していいと思います。

そして、さらに驚くことに、チューリップの球根はジン、ニシン、チーズに次いで4番目に取引高の多いオランダの輸出商品だったようです。

投機市場だけでなく、実需市場も十分にあり、それが数十年続いていたわけです。

少なくともこのころのチューリップの球根は、レア化した美術品やトレーディングカードではなく、現在の我々で言えば、小麦、大豆、石油などに近いものだったと思って良いと思います。

そのような品物であったチューリップの球根が短期間に、価格が100倍、200倍と数ヶ月で上がり、そして暴落したのです。

また、1610年から何度か取引抑制の命令が出ているように、数十年の中でも小さいながら暴騰、暴落を繰り返していたと推測できます。

ビットコイン価格の動きは

では、Bitcoinの値動きのグラフを見てみましょう。

(参考:CryptoCompare)

こちらは一年ぶんですが、取引が増えたのはようやくここ最近です。

2009年1月にスタートして、ようやくニュースにも聞くようになりました。

Bitcoinについて、実需の取引が少なく、ほとんどの取引が投機市場であるということを考えると、数十年の実績を持ったチューリップの取引よりむしろ、あくまで今の段階では、一過性の芸術品やトレーディングカードの取引に近いと考えられます。

そして情報を見る限りは、現在のBitcoinの取引よりも当時のオランダでのチューリップの取引の方が、一般に浸透していたと言えると思います。

むしろチューリップの方が、「一緒にしないでくれ」と言ってくるかもしれませんね。

では、それを踏まえた上で、最後に、もう一度英会話レッスンをしましょう。

Dimonさんが言った言葉のSomeoneとは誰か?

もう一度、Dimonさんの発言を見ましょう。

「”It’s worse than tulip bulbs. It won’t end well. Someone is going to get killed,”」
(著者訳:チューリップの球根よりタチが悪く、絶対いい終わり方はしない。そして、誰かが殺されるでしょう。)

「Someone is going to get killed」勝手に訳として「誰かが殺されるでしょう。」としましたが、この言い方は、「自分から殺されに行く」という意味が若干含まれています。

推測ですが、今から取引に参加かしようかな、と考え始めている人を指しているのではないでしょうか?

「チューリップの方が一般社会に浸透していて、実需もあり、その中で発生したバブルで、実需が弱いBitcoinはもっと簡易に暴落が起こるので今更参加しても損をしますよ」

っということをもしかすると言いたかったのかもしれません。

Dimonさんが本当に言いたかったことは本人でないとわかりませんが、上記と勝手に理解して、その上で意見を申し上げて終わりとしたいと思います。

先物商品取引所に在籍している人員として言えることは、健全な取引市場には、健全な実需と投機の両方が必要と考えています。

以前の記事でも記載しましたが、投機市場はとてつもなく大きいです。

日米国家間の1年間の貿易高より、GMOクリック証券の取引高が大きいわけです。

そして、その中でも特に実需市場における最低の取引量は重要だと感じます。普段Bitcoinの取引を身近に感じることは大変重要です。

実需の少なさという点から考えると、Dimonさんのいう、チューリップバブルより悪くそして、終えるという過激な発言に、少しばかりは同意できなくもありません。

また、今回のように炎上させてしまうことで、人々に良くも悪くも浸透し、その上でより多くの参加者によって健全な議論が行われています。

結果的にBitcoinがより透明性を持ち、いい方向に向かうように軌道修正されているように感じます。