ブロックチェーンはオンライン著作権侵害から映画を守れるのか?

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ブロックチェーンはオンライン著作権侵害から映画を守れるのか?

新規のスタートアップ企業が「ブロックチェーン技術と仮想通貨によって映画をオンライン著作権侵害から守ることができる」と主張しているが、この主張は現実的なのだろうか?

映画業界は、否定的なレビューや我儘な主演女優、嫌がらせを起こす人など、悩みの種は多い。しかし、その中でも最大の懸念は、上映中もしくは最近まで上映していた映画の海賊版がオンラインで広く流通していることにある。

ハリウッドのプロデューサーAndrea Lervolino氏によって共同創設されたブロックチェーン技術に基づく新しいプラットフォーム『TaTaTu』は、オンライン著作権侵害との戦いにおいて映画業界をサポートする為に設立された。果たしてブロックチェーンと仮想通貨はこのチャレンジを成功させる事ができるのろうか?

オンラインの著作権侵害による被害総額

Digital TV Researchが実施した調査によると、映画およびTV業界は2010年のオンライン著作権侵害によって67億USドル(約7328億円)もの損失を出しており、この数字は2022年には最大520億USドル(約5兆6874憶円)に達するとされている。

他にも驚くようなデータがある。リサーチ会社Statistaによると、アメリカの消費者の24%は映画館で上映中の映画の海賊版を利用したことがあるという。このパーセンテージは、上映終了後には48%にまで上昇する。2016年に最も著作権を侵害された映画は、「お喋りな傭兵」を主人公とした大ヒット映画「デッドプール」だった。

Lervolino氏は、エンドユーザーにコンテンツの対価の支払いを強制する現在の状態が、違法なストリーミングおよびダウンロード市場の形成を助長していると言う。その結果、コンテンツ制作者の収入減として表れている。TaTaTuによる彼女の解決策は、プラットフォームのコンテンツ全体で収益を得ながら無料のコンテンツを提供するというものだ。

Lervolino氏は、「TaTaTuはマーケットの声に耳を傾け、それに適応しています。つまり、コンテンツに対し無料でアクセスできるようにし、さらに自動化されたマネタイズシステムによってユーザーにリワードまで与え、最終的に著作権者に対する著作権侵害についての懸念を払拭します。ブロックチェーン上でIPを記録する明確かつリアルタイムな財務報告で、効果的な消費と実際の視聴数に基づき全てのコンテンツを収益化します。」と語る。

TaTaTuは映画業界を救うのか?

TaTaTuのプラットフォームは、ユーザーによるコンテンツの視聴とシェアに対してERC-20トークンの価値を与える。TaTaTu上のコンテンツをユーザーに推奨するためには、広告主はこのトークンを購入する必要がある。そして、Lervolino氏は、コンテンツの消費に関してブロックチェーンの透明性の効果を強く訴えている。

理論上は非常に興味深いが、このようなプラットフォームは実際にオンライン著作権侵害の解決に役立つのだろうか?正直なところ、いくつかの課題がある。

1つ目の課題

このプラットフォームでは現在たった250時間分のコンテンツしか利用できないという点だ。NetflixやHulu、さらにはYouTubeのようなその他のプラットフォームと比較すると多くはない。人々は質の高いコンテンツがある所に集まる。

2つ目の課題

もうひとつは、現在の映画配給方式にある。映画館は、上映からDVDになるまでの期間の短さに大きな憤りを感じている。映画館の経営者は、DVD化されるまでの期間が長いほど人々は、チケット代を払って映画館へ足を運ぶと考えている。

そうすると、映画は、DVDやストリーミングで配信される前に映画館でのみ利用可能な状態が保たれる。しかし、上述のデータで示されているように、多くの人々は公開初期に海賊版を利用することを躊躇しない。それを考えると、ブロックチェーンに基づいたプラットフォームがこの主要な問題に対処できるとは思えない。

3つ目の課題

最後は、人々の習慣を変えることは難しいという点にある。ブロックチェーンに基づいたプラットフォームで何かを無料で利用できたとしても、人々はさまざまな海賊版サイトで映画やTV番組をいとも簡単にダウンロードすることが出来てしまう。

さらに、TaTaTuのプラットフォームは収益化するために何らかの形で広告を出すことになるだろうが、これは多くの人が映画やTV番組の海賊版を利用する理由でもある。加えて、正直なことを言うと、対価を払わずにコンテンツをダウンロードできることに人々は喜びを感じており、また多くの国ではオンラインの著作権侵害に対して非常に寛容だという事実もある。

つまり、もしこのようなプラットフォームが映画やその他の娯楽コンテンツの収益化に成功したとしても、克服すべき大きなハードルがまだいくつも残されているのが現実である。

参考: Bitcoin.com