米証券取引委員会(SEC)が仮想通貨ビジネスに冷淡な姿勢を貫く理由

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米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産(仮想通貨)の取り扱いに概して冷淡で、時には敵意さえ示してきました。SECは特に、ビットコインETF(上場投資信託)やテレグラム(Telegram)のTONネットワークなどのプロジェクトには厳しく当たっていましたが、規制の基準を明確に示すことが未だにできていません。

SECと仮想通貨プロジェクトの争いの歴史

多くの世界各国政府は、仮想通貨業界の発展と成長に好意的な条件を示そうとしていますが、SECはその正当性に疑念を抱き、ブロックチェーン技術や仮想通貨ビジネスを慎重に精査しています。SECはブロックチェーンの分散型台帳技術(DLT)や仮想通貨ビジネスに関する諸問題に長年厳しい姿勢を見せてきました。例えば2018年、SECはテレグラムの独自の仮想通貨グラム(Gram)の発行計画に異議を唱え、裁判に持ち込みました。この裁判の結果、Telegram社はグラムを購入した投資家へ払い戻しを行うと発表しました。

また2020年2月には、ウィルシャー・フェニックス(Wilshire Phoenix)が申請したビットコインETFの計画を拒否しています。拒否の理由は、ETFに限らず、仮想通貨全般が詐欺行為に関わる可能性が強いためとしています。これまで、ニース・アルカ社の「プロシェアーズ・ショート(Proshares Short)やシカゴ・オプション取引所(CBOE)傘下であるBZX取引所の「グラナイト・シェアーズ(Granite Shares)」など、同業他社が申請したETF商品が拒否された主たる理由の1つも詐欺行為のへ恐れでからした。

SECの強硬な方針は分からないでもありません。デジタル通貨に関連する詐欺行為はまん延しており、多くの人が犠牲になっているのが現実です。

2018年、米国の俳優スティーブン・セガール(Steven Seagal)氏は不法なイニシャル・コイン・オファリング(ICO)の広告塔となって販売を促進した容疑で有罪判決を受け、31万4000ドル(約3,454万円)の罰金刑を言い渡されました。また、マイケル・W・アッカーマン(Micheal W. Ackerman)というオハイオ州の男性が3300万ドル(約36億3,000万円)を騙し取った容疑でSECから起訴され、150人以上の投資家に返金することを命じられています。このような詐欺まがいの事例は後を絶ちません。

SECの仮想通貨への姿勢が変わる可能性

ただ、SECの職員すべてが、仮想通貨に敵対的というわけではありません。SECコミッショナーのヘスター・ピアース(Hester Peirce)氏は、2018年に上場が否決されたビットコインETFの再審査を認めるという異例の決定を下しました。ピアース氏は「クリプトママ」として知られ、ブロックチェーン技術やデジタル通貨に一貫して理解を示しています。同氏はまた2020年2月、分散型システムの構築を目指すDLT(分散型台帳技術)の開発計画に対して、米国証券法の適用を3年間免除するというセーフハーバー(免責)基準を提案しました。

ただし、ピアース氏は例外に属し、SEC全体としてはブロックチェーンや仮想通貨には依然として慎重に対処しています。米国で開発を認められるべき範囲について、規制上の明確な線引きが必要であることは明らかですが、SECはその枠組みを作り上げるのに必要以上の時間をかけています。ビットコインETFに関する問題が続いているのは、その好例でしょう。

参考
US SEC Continues its Campaign Against Cryptocurrency Businesses

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長瀬雄壱
フリージャーナリスト、大手マスコミのOB記者。在職中は社会部、科学部、外信部で記者活動を行なう。特に外信部では、10年余り海外特派員(3カ国)を務め、国際関係、政治、経済、社会、戦争取材など、あらゆる分野で記者活動を続けた。翻訳業務経歴は約50年あり、今でも海外ニュースを深くモニターしている。