【前編】ロシアの経済危機は、ビットコイン(BTC)需要にどのような影響を与えるのだろうか?

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ロシアの経済危機は、ビットコイン(BTC)の需要にどのような影響を与えるのだろうか?

ロシア大手クリプトメディアForklogは先日、トルコ、南アフリカ、アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、ベネズエラでの経済危機が、ビットコイン(BTC)需要をどのように助長するかという記事を掲載した。インフレと不確実性のなか、ビットコインは貯蓄手段としてこれらの国の居住者にますます注目されている。

しかし前述の記事では、経済危機真っ只中のロシア情勢には注目していなかった。直近の経済危機は、主にロシア国家の肥大化した原材料の外需への依存性、公共部門が国全体の経済活動に占める非常に高いシェア、時には非合理な政府政策、そして勿論、諸外国による対ロシア制裁という外部要因に起因している。

ロシア経済の現状は前述の国々に比較するとまだ若干良好なほうではあるが、悪い兆候が既に見えているのは確かであり、また対ロシア制裁の影響は直ちに明白にならないことを忘れてはならない。

ForkLogの読者のほとんどはロシアに住んでいるので、ロシアの経済動向、そして同国の仮想通貨業界の特殊性と発展のうえでの問題点を紹介するのが適切であろう。

ロシア経済の現代風景

ロシア経済の主な特徴を手短かに見てみよう。ロシアの国内総生産(GDP)に占める国有企業の割合は70%。名目GDPでは、ロシアは世界第12位だが、1人当たりGDPでは昨年48位であった。

世界経済におけるロシアのシェアはかろうじて3%を超える程度で、世界の金融市場におけるロシアのシェアは約1%に過ぎない。

下記グラフから過去10年間ロシアのGDP成長率が着実に低下していることは明らかだ。

ロシアのGDP成長率出典:TRADINGECONOMICS

2014年~2016年の経済危機は、世界的でかつ本格的な経済危機であった2008年~2009年のそれほどではなかった。これはロシア経済がグローバル経済に大きく依存していることを示唆している。

ロシア政府が宣言した輸入代替政策と“革新的な道”への移行にもかかわらず、ロシアの輸出は依然として燃料とエネルギー関連製品が占めており、それは同国の全輸出の64%以上にもなる。同時にロシアの全輸入において最大の割合を占めているのは自動車および設備である(46%超)。

したがって、ロシア経済は海外からの石油とガスの需要に加え、海外の技術製品の供給に依存している。今年の年初からロシアの通貨ルーブルは米ドルに対して着実に下落してきている。

USD/RUBレート_investing出典:investing.com(2018年9月9日のUSD/RUBレート)

今年の米ドルの上昇の裏で、ルーブルは途上国の最安通貨の1つになっている。

米ドル基準での途上国通貨切り下げ指標:2018年 年初~
出典:Forklog(米ドル基準での途上国通貨切り下げ指標:2018年 年初~)

この表から分かるように、今年、途上国の中でルーブルより下落した通貨は、南アフリカのランド、ブラジルのレアル、トルコのリラとアルゼンチンのペソのみである。

法定通貨ルーブルの下落が加速、「笑える」制裁とは

前出のUSD/RUBチャートにて、新しい対ロシア制裁の発表を背景に4月と7月〜8月にルーブル下落が著しく加速したことが分かる。

米国は、今年4月にロシアのビジネスマンと国有企業のトップを制裁対象リストに追加した。新たにこのリストに加わったのは26名の個人とオレグ・デリパスカ氏の会社「En+グループ」を含む15社である。同年3月には19名の個人と5団体が制裁対象となっていた。

国立研究大学高等経済学院の専門家によると、対ロシア制裁のマイナス影響はロシア政府による報復にて大きく増幅する。というのも、前述のようにロシアは国として輸入に大きく依存しているからだ。にもかかわらず、6月4日プーチン大統領は製品の輸出入を禁止または制限する報復手段に関する法案に署名した。

米国による新しい対ロシア制裁は8月上旬に発行され、ロシアの石油・ガスセクターに影響を及ぼす国家安全保障関連の製品・サービスのロシアへの輸出を禁止した。また米国政府は相互貿易を最小減まで減らし航空会社「アエロフロート」の米国への就航を禁止し、ロシアで受けられる国際的な銀行融資を阻み、両国の外交関係レベルの低減を目的としたさらに厳しい制裁措置を3ヶ月以内に導入すると確約した。

対ロシア制裁拡大の可能性が高まるなか、ルーブルは2年ぶりの最安値まで下落し、株式市場も下落した。

経済戦争を予測、ロシア企業へ資産に関する調査実施

経済戦争を予測、ロシア企業へ資産に関する調査実施

ドミトリー・メドベージェフ首相は「経済戦争」の始まりを予測し、さまざまな報復措置にて米国を脅かした。しかし現時点ではロシア政府が取った措置は、自国の企業を脅かすだけになろう。

追加税金の形で冶金・鉱業業界から5,000億ルーブル(約8,400億円)を徴収するという政府の計画が報道されたあとの8月10日に、これら業界のモスクワ証券取引所での株式は暴落した。

一方、米国共和党のリンジー・グラハム上院議員は、追加の制裁を求める法案を提出した。この法案は、特にアメリカ人によるロシアの国債や国営銀行との取引を禁じるものである。

同時に、英国の監査・コンサルティング会社Ernst & Youngは、ロシア企業のリーダーへアンケートを実施した。それによると金融市場取引をしている回答者のほとんどがハイリスク資産の売却を予定しており、一方資産購入に意欲を見せたのは投資家の3分の1以下という結果が出た。

Ernst & Young社のパートナーであるアレクセイ・イワノフ氏は「市場の主な活動は中小企業の売却関連で、現時点では需要を上回っており購入を予定しているのは回答者のうちわずか32%だった」と語った。

同アンケートの回答者(アンケート対象者の84%)のうち33%は経済的に非効率な資産の売却を予定しており、51%が「活動中止のリスク」に関連する資産の売却を予定している。

今年はオフショアゾーンへの資本流出も急激に増加した。ロシア連邦中央銀行統計の今年第1四半期の結果によると、昨年第4四半期の6.3倍である172億米ドルがロシア人に最も人気のあるオフショア地に流出した。この金額は、ロシアの石油とガスの収入予算(約1.85兆ルーブル=約3兆10億円)の半分に相当し、年金支出予算(6,900億ルーブル=1兆1600億円)の1.4倍に相当する。

アメリカ合衆国経済分析局によれば、最も裕福なロシア人は、ロシアのGDPの60%に相当するオフショア資産を保有しており、その総額は約60兆ルーブル、すなわちほぼ1兆米ドルとなる。

世界全体の経済は上向き、一方ロシア経済は悲観的な予測

世界全体の経済は上向き、一方ロシア経済は悲観的な予測

世界銀行のアナリストによると、2018年~2020年のロシア経済の成長見通しは控えめで、1.5%〜1.8%の成長率との予測。ちなみに世界全体の経済の今年の成長率は3.1%に達する可能性があるという。アナリスト達は、ロシア銀行業界に占める国有資産の割合(現在約70%)が増えることを警戒している。

さらに専門家は、ロシアの重要な貿易相手国である中国の経済成長率が今年も引き続きゆっくりと低下すると予想している。貿易政策の不確実性が増すと金融市場のムードは悪化し、最終的には経済活動全般に影響を与える可能性がある。

国立研究大学高等経済学院の専門家によると、いわゆる制裁戦争がさらにロシア経済を分離し、同国の技術的後進と低成長を促す。ロシアの企業に対する米国の制裁措置により、今年のロシアからの民間資本流出は予想額を数十億米ドル上回る可能性がある。

不確実性と、どの国と、どの企業が米国の勧告に従うかが現在不透明であることが状況を悪化させており、資本の流出と輸出の減少は予測を上回る可能性がある。

また国立研究大学高等経済学院によると、ロシア経済は米国のそれと比べ物にならない程度であるため、ロシアによる報復制裁はまず自国を傷つけるという。

金融グループBCS Financial Groupのチーフエコノミストであるブラディミール・ティホミロフ氏によると、ロシア国営銀行と公的債務とアメリカ人が取引することを禁止する厳しい制裁法案を米国政府が可決した場合、ルーブルの今年の為替レート終値は1米ドル=76ルーブルよりも若干安値になる。

これはインフレ加速、貸出金利の上昇、投資削減、生活水準の低下や経済成長の減速など、ロシア経済にとって多数のリスクを伴うことになる。

前述のティホミロフ氏は「2019年の第一四半期から我々はおそらく経済の多くのセグメントでの減速を目のあたりにすることになるでしょう。特に、小売業の売上高と投資のダイナミクスにて。それは、インフレのスパイラル、ルーブルの弱体化と信用コストの増加から始まる様々な悪影響が出てくるほどです」と語っている。

また「BCS Financial Group」は、対ロシア制裁がなければ過去12カ月間ルーブルは15%以上の下落ではなく、原油価格の上昇により大幅に上昇していただろう、と考える。

ダンスケ銀行の経済学者ウラジミール・ミクラシェフスキー氏は前述のティホミロブ氏に同意しており、さらに対ロシア制裁がなければルーブルは1米ドル=60ルーブル以下で推移できただろうと考える。

ビットコイン(BTC)の需要はルーブル安になるほど高まる

ルーブルは、既に長期間において仮想通貨とともに最も活発に取引される通貨トップ10に入っている。

「CoinHills」のデータによれば、この意味でルーブルはトルコのリラより優位で、米ドル、日本円、韓国ウォン、ユーロ、ポンドに次ぐ通貨であり、ビットコイン売買に使用される通貨の中で6番目の人気を誇っている。

世界全体の経済は上向き、一方ロシア経済は悲観的な予測
出典:CoinHills(2018年9月9日時点)

ロシア人は仮想通貨のかなりの量をP2Pプラットフォーム「LocalBitcoins」にて購入している。

世界全体の経済は上向き、一方ロシア経済は悲観的な予測
出典:CoinDance(2018年9月4日時点のデータ)

ご覧のように、需要は一貫して高く、ロシアの投資家は仮想通貨市場の不況に脅かされてはいない。
また、EXMO、LiveCoin、Yobit、Simexなど、ロシア語圏のユーザーに人気のプラットフォームでは相当の量の取引がある。

CEX.IO取引所の代表者は「ForkLog」誌に対して、過去2年間のロシアからの新規ユーザー登録数が一貫して高い水準にある、と述べた。特に米国財務省がロシアのエネルギー業界と金融業界、そしてロシアの政府独占企業を対象とした制裁を発表した2017年1月にプラットフォームの新利用者数が大幅に増加した。

「2017年1月にロシアのCEX.IOユーザーの登録件数がデータベース全体のそれよりも大幅に増加したことは明らかで、ロシアからの新規ユーザーの成長率は全体の数字を30%以上、上回った」とこの代表者は述べた。

一方で、この期間中のユーザー登録変動が米国による制裁措置導入または発表によるものと確定は出来ないとも強調している。

ロシア向けにローカライズしている仮想通貨取引所の多くは、資金投入と引出しのために様々な支払いシステムを提供しているが、世界的に見るとこれらはすべて、Binance、OKEx、Bitfinexなどの大手よりまだ遅れている。

ロシアでマイニングに従事する企業や個人の数は着実に増えている。 2018年7月現在、ロシアのマイナーが世界のそれ全体に占める割合は約6%(前年同期比1%増)で、合計35万人のロシア人がマイニング関連の活動を行なっている。

2018年には、ロシア人の仮想通貨所有者数が2017年のデータ比で50万人増加しており、現在、約300万人にのぼる。

★後編(近日公開)へつづく・・>>

関連:仮想通貨に対して厳しい姿勢のロシアにおけるブロックチェーン事情とは?

参考:Forklog

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