第2回:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)に適用の免除規定~コンプライアンス要求まで解説

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第2回:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)に適用の免除規定~コンプライアンス要求まで解説

Node Capital調査センター
朱子川

本コラムは、いま重要視されている「STO(Security Token Offering/セキュリティ・トークン・オファリング)」というトピックについての概要解説記事です。今回で2回目の更新で、第1回ではSTOの基本概要~SEC登録届出プロセスまでをお届けしました。

2回目の今回は、STO実施の際に適用される免除規定についてなど、もう少し深掘りして解説していきます。ぜひ第1回とあわせてご覧ください。

▼過去記事
第1回:STOの基本概要~SEC登録届出プロセスまで解説

免除規定を適用した証券発行

第1回でも解説しました、SECへの登録届出を伴う証券発行は、プロセスが煩雑でコストも比較的高いため、セキュリティトークンのような新たな手法には適切とは言えないでしょう。そこで、以下のような免除規定を用いるのが一般的です。

レギュレーションD:私募

レギュレーションDを適用した証券発行は私募にあたり、以下の三種類が存在します。

  • ルール504:12ヶ月間の調達限度額は500万ドル(約5億6,000万円)以下で、不特定多数に対し勧誘を行ってはならない。適格投資家・非適格投資家共に勧誘できる。
  • ルール506(b):調達金額に上限はないが、不特定多数に対し勧誘を行ってはならない。適格投資家の人数に上限はないが、非適格投資家の人数は35人以下でなければならない。
  • ルール506(c):調達金額に条件はなく、不特定多数に勧誘を行っても良いが、販売は適格投資家に限定しなければならない。現時点で大多数のSTOが適用している規定。

◆レギュレーションD 506(c)のメリット

  • 調達金額に上限がない。
  • 不特定多数に勧誘が可能で、従来型ICOにも利用されてきた規定である。なお、レギュレーションS(後述)を適用し、海外で勧誘と販売を行う場合は、ターゲットとなる投資家居住国の法律に準拠しなければならない。
  • 資産担保証券は州法の拘束を受けない。

◆レギュレーションD 506(c)のデメリット

  • 販売対象は適格投資家に限定される。
  • 販売後12ヶ月間は二次市場での取引ができない。この規定は、ネットワーク参加権に当たるトークンを発行し、なるべく早く二次市場で流通させたいと考えている発行体にとって、最大のネックとなる。
  • 発行体は、全ての投資家が適格投資家の要件を満たすことを確認する義務を負う。

レギュレーションA+:ミニIPO

レギュレーションA+は、米国企業による一般への販売・勧誘と、販売後すぐの二次流通を同時に許している唯一の条項です。「ミニIPO」とも呼ばれ、この規定を適用し資金調達を行った企業の大部分がNASDAQまたはニューヨーク証券取引所への上場を目指すことになります。

レギュレーションA+には以下二種類が存在します。

  • ティア1:12ヶ月間の調達限度額は2,000万ドル(約22億円)で、発行体の既存株主による販売額は600万ドル(約6億8,000万円)を超えてはならない。
  • ティア2:12ヶ月間の調達限度額は5,000万ドル(約56億円)で、発行体の既存株主による販売額はc(約17億円)を超えてはならない。

ティア1には厳しめの調達上限があるものの、提出する財務諸表の監査が必要なく、投資家一人あたりの投資上限もありません。一方、ティア2は調達上限が多めに設定されているものの、監査済の財務諸表を提出する必要があるうえ、非適格投資家の投資額は年収または純資産の10%を超えてはいけないとされています。ただし、上限付きで既存株主による株式の譲渡も許しており、初期の投資家がポートフォリオの一部を流動化することもできます。

◆レギュレーションA+のメリット

  • 非適格投資家や海外居住者への販売ができる。
  • (ティア2)最高5,000万ドル(約55億円)の調達ができる。
  • (ティア2)州法の拘束を受けない。ただし、二次流通では州法の拘束を受けることもある(後述)。
  • 投資勧誘を兼ねた一般向けのマーケティングができる。

◆レギュレーションA+のデメリット

  • 審査に時間とコストがかかり、審査に12ヶ月を要すると言われている。
  • 発行申請時、監査済の財務諸表を提出しなければならない。
  • 発行後、発行体は年次報告と半期報告を継続的に公開しなければならない。
  • 発行体が米国・カナダ企業に限定される。
  • NASDAQのようなSEC認可の証券取引所に上場させる場合や、適格投資家に譲渡する場合を除き、二次流通において州法の拘束を受ける。

レギュレーションS:海外居住投資家向けの発行

レギュレーションSは、海外に居住する外国人または外国法人に向けた販売を想定した免除規定で、米国企業が米ドル建て債券を発行する際によく適用されてきました。海外居住投資家が二次流通市場で証券を米国内に譲渡しなければ、レギュレーションSの適用を受けることができます。

レギュレーションSの特徴は以下の二点です。

  • 証券の発行と勧誘、販売は海外で行われ、アメリカ国内での勧誘・販売は行われないものとされている。
  • 米国で登記している、または創立者がアメリカ人である企業が、海外投資家向けに証券を販売する場合、その販売分に対しては必ずレギュレーションSを適用しなければならない。
免除規定 対象投資家 勧誘方式 調達限度額 情報開示
RegD 504 適格投資家 不特定多数への勧誘不可 12ヵ月以内に500万ドル 投資家に財務諸表などを開示、場合によっては監査が必要
RegD 506b 適格投資家+最多35名の非適格投資家 不特定多数への勧誘不可 無し 投資家に財務諸表などを開示、場合によっては監査が必要
RegD 506c 適格投資家 不特定多数への勧誘可 無し 投資家に財務諸表などを開示、場合によっては監査が必要
RegS 国外投資家 不特定多数への勧誘可 無し
RegA+ ティア1 適格投資家
非適格投資家
不特定多数への勧誘可 12ヵ月以内に2,000万ドル SECに監査済の年次報告と半期報告を提出
RegA+ ティア2 適格投資家
非適格投資家(投資上限あり)
不特定多数への勧誘可 12ヵ月以内に5,000万ドル SECに監査済の年次報告と半期報告を提出

コンプライアンス要求

規制が行き届いておらず自由な販売・取引が黙認されていたICOとは対照的に、STOの実施や二次流通では、厳格な厳しいコンプライアンス要求が課されています。

  • KYC:発行体や取引所は、トークンを購入する投資家の身分、特に購入資格の有無や潜在的なリスクの有無を確認しなければならない。
  • AML:投資家の資金洗浄に関わるリスクの有無を確認しなければならない。
  • 中央集権的主体による監視:従来のブロックチェーン上においては、強い権限を持つ主体は存在せず、基本的に一度実行されたトランザクションの取消や訂正はできなかった。
    しかし、証券トークンの販売・取引においては、各国の法令遵守が優先されるため、必然的に中央集権的な主体が全ての取引を厳しく監視し、必要に応じて取引の中止や取消を命じることもあり得る。
  • プライバシーの保護:BTCやETHなどのパブリックチェーンでは、トランザクションの記録が公開され誰もが照会できるようになっており、特定のアドレスの取引記録をたどることで、それに紐づいた人物の背景や身分を推測する人もいる。しかし証券取引においては、取引情報は公開されず慎重に扱われるべきである。よってプロトコルレイヤーにおける高いプライバシーが不可欠となる。

今回は、STO実施の際に適用される免除規定と、実施時・二次流通時のコンプライアンス要求について解説しました。次回以降は、STO市場のエコシステム・主要プレイヤーを概観していきます。

連載「STO解説コラム」
第1回:STOの基本概要~SEC登録届出プロセスまで解説
第2回:STOに適用の免除規定~コンプライアンス要求まで解説
第3回:STO市場のエコシステム~主要プレイヤーまで解説
第4回:STOに力を注ぐ仮想通貨取引所・証券取引所の解説
第5回:STOが市場にもたらす変革や発展の可能性まとめ

参考
注册制倒计时!看看美国怎么做的
Game of Regs: The STO Context

・Cryptoeconomics:監修
CryptoAge こじらせ東大女子(@icotaku_utgirl):執筆

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