第4回:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)に力を注ぐ仮想通貨取引所・証券取引所の解説

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第4回:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)に力を注ぐ仮想通貨取引所・証券取引所の解説

Node Capital調査センター
朱子川

本コラムは、いまブロックチェーン界隈でも話題となっている「STO(Security Token Offering/セキュリティ・トークン・オファリング)」という非常に重要トピックの解説記事で、今回で4回目の更新となります。前回まではSTOの基本概要、SEC登録届出プロセス、STO実施時に適用される免除規定、STO市場のエコシステムや主要プレイヤーたちについてをお届けしました。

4回目となる今回は、STOに力を入れている既存の証券取引所・仮想通貨取引所について見ていきます。

▼過去記事
第3回:STO市場のエコシステム~主要プレイヤーまで解説

STOに力を入れている取引所

金融業界ではライセンスを取得・保有することが常に最優先事項となってきていました。相対的に言えば、証券の発行はSEC(米国証券取引委員会)への登録申請を完了するか、適切な免除規定に対応することでのみ可能になります。いわゆる発行規格や発行プラットフォームは一連の技術的なプロトコルのセットを提供しているため、発行主体のライセンス制限は比較的小さいものになっています(将来的に規制当局が独自の発行規格を出したり、合意を定めたりする余地はあります)。

しかしながら証券取引は常に最優先事項であり、ライセンスによって課される規制はより厳格なものになります。ICO時代には、業界には対応する法的規制が欠けており、参入障壁はほとんど0であり、仮想通貨業界の中には非常に多くの取引所が存在していました。しかしSTOの時代には、ほとんどの取引所は対応するライセンスを得ることができなくなることは疑いありません。ゆえに、ライセンスを取得したかどうかは取引所にとっての第一の試練になります。

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)研究:技術革新の伝統金融への回帰

STOのビジネスに必要なライセンスは、ATS/ATLS(Alternative Trading System/ 代替取引ライセンス、トークンへの投資は代替投資先に帰属する)、RIA(Registered Investment Advisor、投資顧問ライセンス)、BD(broker dealer、ブローカーライセンス)になります。

STO市場に切り込む準備をしている取引所には2種類あり、一つは従来の仮想通貨取引所で、もう一つは伝統的な有価証券取引所になります。仮想通貨取引所はデジタル通貨事業に対する経験は豊富ですが、伝統的な規制に準拠したライセンスが必要になります。伝統的な証券取引所はより多くのライセンスを保有していますが、仮想通貨市場に切り込むためにはよりビジネスプロセスを実行するための時間が求められます。

現在、仮想通貨取引所がセキュリティトークン市場にいち早く参入し、コンプライアンスの面でリードしてきています。最近はNASDAQへの上場を予定しているCoinbase(コインベース)、またtZERO(ティーゼロ)とTemplum(テンプラム)という2017年に設立されたスタートアップ二社もこの領域に目を向けています。

その中でもCoinbaseは仮想通貨領域では最も古参で勢力のある取引所の一つであり、昨年から連続してBD、RIA、そしてATSといった金融機関のライセンスを取得しています。tZEROは米国でトップ10に入るEC会社Overstock(オーバーストック)の子会社であり、昨年の設立以後一貫してコンプライアンスを遵守した仮想通貨取引を提供することにコミットしてきました。特筆すべきはちょうど今年の10月にSTOを完了していることです。

取引所 概略 STOについての進展 ライセンス 資金調達先
Coinbase 2012年に成立した仮想通貨業界では老舗の取引所。アメリカにいては上場したアセットは少なく質の良いものが多い 企業M&Aを経て一通りのライセンスを取得。 BD,RIA,
ATS
YC,USV,
a16z,DFJ,
Tiger等から
tZERO 2017年に成立し、2018年にboxと合資会社設立。tZEROが取引における技術、資金およびマネジメントを提供し、boxが取引の執行、コンプライアンス遵守、ATLSライセンスを提供。 自身のSTOを終了した直後。 ATLS,RIA,
RAE
金沙江など
Templum 2017年に設立。セキュリティトークンの発行およびセカンダリーマーケット取引においてコンプライアンス遵守のためのソリューションを提供。 取引システムはすでに作動開始。 ATS SBIホールディングス

もう一種類のタイプのプレイヤーは、仮想通貨領域に切り込んでいる伝統的な証券取引所です。ロンドン証券取引所やNASDAQ(ナスダック)のような巨大プレイヤーに加えて、マルタやジブラルタルといった小国ながら非常に柔軟な政策をもつ国々もまた法令遵守取引に対して強い関心を持っている姿勢を見せています。

それ以外にも特筆すべきなのは、米国で2番目に大きいプライベートエクイティ市場ですでにATSやBDのライセンスを取得済みのSharespost(シェアーズポスト)で、彼らはプライベートエクイティ取引については約10年もの知見があります。

取引所 バックグラウンド STOについての進展 パートナー企業
ロンドン証券取引所 スタートアップNIVAURA
SIX DIGITAL EXVCHANGE スイスの取引所 2019年中にSTO取引所をローンチ予定
マルタ証券取引所 2018年中にSTO取引所をローンチ予定 Binance,neufund
Gibral Blockchain Exchange 2018年第4クオーター中にSTO取引所をローンチ予定
Sharespost 2009年に成立したトップクラスのプライベートエクイティ取引プラットフォームとして、5万名の適格投資家と40億米ドルの取引量を有する。現在ATSシステム開発中。 2018年下半期中にSTO取引所をローンチ予定
OpenFinance Network 2014年に成立。STO発行プラットフォームのHarborとOFNと共同事業を行なっている。 機能としては事業者トークンの登録・KYCが行えるのみであり、取引を行うまでには至っていない Huobi
NASDAQ 2015年には既にlinqという取引所という独自プロジェクトをローンチしていたが、特定の機関と投資家のみに限定されていた。現在は未確認の情報ではあるがSTO取引所を準備している模様。

プロジェクトサイド

先述したtZEROは最初のコンプライアンスを遵守したSTOプロジェクトであると考えられていますが、実は、レギュレーションDの免除規定を通貨したプライベートエクイティファイナンスの大部分はある意味でSTOと見做すことが可能です。

関連:レギュレーションDについてはこちらで詳しく解説してます>>

元々多くのサービスユーザーを抱えているわけではなく、トークン価値上昇をもたらすような強力な経済圏を作ることができないプロジェクトは、投資家を惹きつけるため、利益・収入の一部をホルダーに割り当てたり、利益・収入の一部を使用して公開市場でトークンを買い戻したりします(ファイナンス上、買い戻し自体は配当の変形版とされています)。

これはまさにトークンが証券的な性質を具備したということになります。確かにこれはプロジェクト側に幾らかの柔軟性を付与し、例えば多くのプロジェクトが当初はICOプロジェクトを志向し、このような市場の状況に鑑みてSTOプロジェクトに変更しますが、コンプライアンス遵守のためのコストが増加し、より長いロックアップ期間と投資家アクセスの厳格化がほとんどの通貨プロジェクトにとっては目下の課題になっています。

伝統的な通貨プロジェクトに加えて、別のタイプの取引可能になるであろうSTOは、非上場株式や不動産ファンドシェアといった、二次流通市場において比較的流動性の低い資産です。このような資産はすでに完全な法令遵守プロセスと取引市場を備えてはいますが、元の市場では流動性が不十分であるために、STOにトライしていると思われます。

今回はSTOに力を入れている取引所について概観しました。ここまでの流れを踏まえ、次回は連載の最後としてSTOが市場にもたらしうる変革についてのまとめとなります。

連載「STO解説コラム」
第1回:STOの基本概要~SEC登録届出プロセスまで解説
第2回:STOに適用の免除規定~コンプライアンス要求まで解説
第3回:STO市場のエコシステム~主要プレイヤーまで解説
第4回:STOに力を注ぐ仮想通貨取引所・証券取引所の解説
第5回:STOが市場にもたらす変革や発展の可能性まとめ

参考
一文读懂Security Token,以及Security Token 2.0堆栈

・Cryptoeconomics:監修
CryptoAge Meika Miyamoto氏(@meikamiyamoto97):執筆

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