先日、千葉県の幕張で、東京ゲームショウ(TGS)が開催されました。私は初めて参加することとなったのですが、色とりどりのブースが延々と並んでおり、午前10時から全身でネオンの光を浴びてきました。
会場を見てみると、 誰でも遊んだことのあるような大きなゲーム会社の新しいタイトルが大大と宣伝されており、緑のエナジードリンクの匂いが漂っているわけですが、その中にブロックチェーンを使ったゲームのブースもいくつか見受けられました。
目次
TGSで発見したブロックチェーンゲーム
HashRush
まだテスト版ですが、ゲームの中で探鉱を掘ってマイニングをするゲームで、木を切ったり、拠点を作ったりして採掘のための設備を作ります。
プレイするためには月に10ドル(約1,000円)ほど課金が必要で、実際にそのお金を使ってマイニングが行われます。ゲーム内での成績に応じて、実際のマイニング報酬がランキング上位者に分配される仕組みのようです。
出典:HashRush
Spells of Genesis (SoG)
ブロックチェーンを使ったゲームの中ではかなり老舗の「SoG」は、カードを使って敵をビームで倒すゲームアプリです。カードの一部がビットコインのブロックチェーンを使ったカウンターパーティートークンになっています。
出典:Spells of Genesis
a Table
これはSoGと同じ会社が現在開発中のゲームですが、ウサギやユニコーンがお菓子の島を探索するゲームです。過去にプレイステーションで出ていたノーマンズスカイ(無限に生成される惑星を探索してアイテムを集める宇宙探索ゲーム)に似たような印象を受けました。
ブロックチェーンゲーム開発が語る教訓
上記で紹介したゲームの他にもクリプトキティーやイーサエモン、くりぷ豚など様々なゲームが存在しますが「ブロックチェーンのゲームは結局ただの投機なのでは?」といった懐疑的な声も出ています。
確かにクリプトキティ―などは後から高値で売買できることを期待して買った人も多いと思いますし、そのような話題から大きく認知が広まりました。しかし今、ブロックチェーンのゲーム開発に取り組んでいる人達はギャンブルで終わらないようにさせなければいけないと考えているはずです。
今回は2015年にICOを実施し、ゲームもローンチした先駆者であるSpells of Genesisの CEO 、シャバン氏がTGS後のミートアップで語ったブロックチェーンゲーム開発での五つの教訓から、今後のブロックチェーン開発について考えてみたいと思います。
技術よりもユーザー体験にフォーカス
ブロックチェーン技術の可能性に興奮するあまり「なんとかこの技術を活かしたい」と考えてゲームの楽しさやユーザー体験が二の次になってしまってはゲームとして成功しない、ユーザー体験を大切にしよう、と語っています。ゲーム以外でも言えますが、手段であるはずのブロックチェーンを使うことが目的になってしまっているものは危険信号です。
ブロックチェーンを使う部分を選択する
ゲームの全部にブロックチェーンを使うと、まずは仮想通貨を買ってメタマスクを使えるようにならないといけない…など遊び始めるまでのハードルが高くなったり、いちいちコストがかかったりします。
SoGの場合はカウンターパーティが使われている一部のキャラクター(カード)と、仮想通貨やウォレットを知らなくても遊ぶことが可能な部分が両方あり「ブロックチェーン上でやるべきこと、そうでないことをきちんと分ける」ことを意識しているとシャバン氏は語っていました。
十分に使われているブロックチェーンを使うべき
ゲームで使うブロックチェーンのプラットフォームはきちんと開発され、使われたりテストされているものを使用することが推奨されています。プラットフォームに重大な問題が合ったり、機能しなくなってしまうとその上のアプリケーションも影響を受けてしまいます。
SoGはイーサリアムではなくビットコインのブロックチェーンを使ったゲームの一つですが、当時のイーサリアムはまだ準備もできていなかった状態だったためビットコインを選んでいます。
投機家ではなくプレーヤーを探せ
ユーザーはICOでアイテムやキャラクターを買ってくれるもののゲームでは遊んでくれないブロックチェイナー、ゲームでは遊んでくれるけれどウォレットを連携やブロックチェーンアイテム購入はしないゲーマーの大きく2タイプに分かれます。SoGはその中間にいるブロックチェーンへの理解もありゲームでも遊んでくれるブロックチェーンゲーマーをまずファンにつけ、徐々にユーザー拡大への施策を狙っています。
SoGがユーザーに対して行ったアンケート調査によると、ゲームにつかうブロックチェーンカードを購入する人たちの一番の理由はゲームアイテムを所有したいから、ブロックチェーンカードを購入しない層ではお金がないから、ブロックチェーンカードの意味がよく分からないからといった理由が上位にランクインしていました。
ユーザーが作り出すコンテンツの重要性
ブロックチェーンではレアぺぺ(RarePepe)の例のように一般のユーザーがブロックチェーンを使ったイラストなどを作りゲーム側がそれを取り入れるといったことも簡単に可能になります。これをどうやって使ってユーザーやコミュニティを巻き込んでいくかもユーザー獲得の上では重要になるでしょう。
シャバン氏は「いいブロックチェーンのゲームはユーザーにクリエイティビティを発揮してもらえるゲームだ。それをゲームに取り込んだり、交換できるようにしたい。」と話しています。
まとめ
ブロックチェーンゲームを見渡すと正直アクティブユーザーの数は全体的に少ない上、今回紹介したSoGもまだまだ改善点は抱えていますが、彼らの取り組みも非常に参考になりました。
また国内でイーサリアムをベースにしたゲームくりぷ豚はガス代や承認時間と言ったブロックチェーンゲーム特有の問題を解決するために、ゲームのキャラクターが登場する4コマ漫画で解説して、ゲームをプレイするための基礎知識やブロックチェーンの理解全般に役立つような知識をユーザーに伝えるなどの工夫をしています。
誰にでも親しんでもらえるゲームは、ブロックチェーンで何かをしようと思ってる人にとっても取り掛かりやすいと思います。ただこれまでのあるものの二番煎じだけではなくブロックチェーンの特性をどのように活かしながら、ゲームとして面白いものを作っていけるかが鍵になるのではないでしょうか。
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