ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社ICE(Intercontinental Exchange Inc.)が、デジタル資産に特化して円滑な売買、保管、支払サービスを提供する意欲的な新会社Bakkt(バックト)を立ち上げた。
Bakktにはすでに、マイクロソフト(Microsoft)、ボストンコンサルティンググループ(BCG)やスターバックス(Starbucks)が事業に資本参加して注目されている。
Bakktは一日先物取引で機関投資家を取り込む戦略
ビットコイン(BTC)は2017年末までに、天文学的に価格が高騰したが、多くの国で商品売買の決済手段として広く利用されるまでには至っていない。このような事情を受けて、ICEはBakktを通じて、世界のコマース部門とデジタル通貨を結びつける新しい事業に意欲を燃やしている。
Bakktのケリー・レフラー(Kelly Loeffler)最高経営責任者(CEO)は「Bakktは、より大きな効率、セキュリティ、有用性を促進することによって、企業、マーチャント、消費者がデジタル資産に参加してもらうスケーラブルなオンランプ(入口)としてのサービス提供を目指している」と語った。
ICEはメーンストリーム事業として、すでにCMEグループとCBOEが提供しているデリバティブとは異なる一日先物契約(取引)を米商品先物取引委員会(CFTC)の認可次第で2018年11月から導入する計画である。
一日先物契約は、現物引き渡しとなり、契約者は現金ではなくビットコインで受け取る契約になる。ビットコインの現行取引のように、規制されない市場を信用しない機関投資家などにとって、現物契約は重要なことである。ICEは規制当局の規制に準拠しており、機関投資家の信用を受けやすい。
消費者と直結するスタバに仮想通貨決済プラットフォームを提供
Bakktの事業で注目される側面は、スターバックスやマイクロソフトと事業提携したことである。ICEによると、これはデジタル資産を売買、保管、決済する消費者や機関投資家を支援する努力に協力した結果である。ICEとマイクロソフト両社のベンチャーキャピタル部門との協力関係のほか、BakktはFortress Investment Group、Eagle Seven、Galaxy Digital、Horizons Venturesら8社から出資されている。
Bakktが目指す事業で消費者に最も分かりやすいのが、スターバックスとの共同事業だろう。マイクロソフトのクラウドソリューションを活用して、デジタル資産向けのオープンで規制を受けた世界的エコシステムは、仮想通貨で支払いを受けることを目指すスターバックスの有力なツールになるはずだ。
企業、マーチャント、消費者を巻き込む新たな決済市場目指す
統合決済プラットフォームであるBakktの最初の利用分野は、ビットコインと法定通貨の取引と変換(交換)である。11月に始まる予定のこのプラットフォームは、企業、マーチャント、消費者を1つにまとめる意欲的なもの。レフラーCEOは「オープンプラットフォームを構築するため協業し、世界市場とコマース全体にわたりデジタル資産の変革の可能性を切り開きたい」と語った。
ICEはすでに、このプラットフォームを技術的に支援するため、ブロックチェーン技術開発会社のBlockstreamと提携して、世界の15の異なる仮想通貨取引プラットフォームでやりとりするリアルタイムの仮想通貨データフィードを作成中。この中には代表的なすべての仮想通貨の取引量や注文控え台帳などが含まれる。
(フリージャーナリスト、大手マスコミOB記者:長瀬雄壱)
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