スイスがマルタに次いで、仮想通貨・ブロックチェーン・ICOの世界中心都市に名乗りを上げる

9249

スイスがマルタに次いで仮想通貨・ブロックチェーン・ICOの世界中心都市に名乗りを上げる

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、2017年の発行された最大規模10件のICO(Initial Coin Offering)の内、4件はスイスで行われたというが、このような事実はあまり知られていない。

スイスは優れた銀行能力、低額の税金、エリート大学、そしてスイスブランドなど、米国ならシリコンバレー並みの知名度で知られる。スイスのツーク、チューリッヒを世界的な仮想通貨コミュニティー、ブロックチェーンの拠点、つまり「仮想通貨金融ハブ」にしようという構想が進んでいる。いわゆる「クリプトバレー(Crypto Valley)」をスイスの経済相が言う「クリプトネーション(Crypto Nation)」 に変える構想は、これまでのところ成功を収めつつある。

クリプトバレーからクリプトネーションへの変身目指す

スイス銀行協会(Swiss Bankers Association)によると、スイスの銀行数は過去10年に20%減少した。アルプスとともに超安全なスイスフランで有名な国が、今度はボラタイル(変動幅が大きい)な仮想通貨の国創りに夢中になっている。「Crypto Velley Labs」づくりに参集した企業数は、5年前の15社から2017年初めには100社に増え、サイト開発をしているLakeside PartnersマネジングパートナーのMathias Ruch氏は「私は毎日必ず、複数の契約書にサインしている」とまで語っている。

ツーク州の人口は約12万人で、一躍スイスのクリプトバレーとして台頭した。人口は2017年に最速の率で増加し、失業率もスイス平均の2.9%より低い2.3%である。法人税は14.6%となっている。

ツーク州の経済学者Matthias Michel氏は、クリプトバレーが決して壮大な計画ではなかったことを強調している。それは5年前、Monetas社のようなブロックチェーン先駆企業がツーク州に根を下ろし、ビジネスフレンドリーな環境を造成したのが始まりだった。シティーホールには「ビットコインを受け入れます」のサインボードさえ見当たる。Michel氏は「ツーク州の業績をコピー・アンド・ペーストすることはできない。強くしたのはシステマティック・アプローチによるもの」という。

規制当局と中銀の考え方の相違が発展のネックに

最近、スイスの金融市場監査局(以下:FINMA)は、ツーク州で業界代表者との会議を開催した。FINMAは、仮想通貨を受け入れようとしているが、中央銀行にあたるスイス国立銀行(以下:SNB)は仮想通貨に懐疑的で、それに伴うリスクを警戒している。その他大手銀行の経営者もこの心配に呼応している。

SNBのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は「われわれの見方からすると、これらすべての取引を追跡できるようになり、マネーロンダリング防止の厳格なルールが守られるまでは、極めて大きなリスクである」と懐疑的なコメントをしている。

スイスには別の障害もある。熟練労働人口があるにもかかわらず、スタートアップのカルチャーにかけていることだ。例えば、スイスは米国のそれと比較して新規企業の撤退が目立つという汚名を着せられている。生活費が高いこともビジネス拡大を阻むだろう。最大の恐れは、中銀の考え方や生活費ではなく、米国の規制当局と何らかの衝突に巻き込まれることである。

「マネー天国」の汚名返上はしたが・・・

スイスは、いかがわしい「マネー天国」との評判を切り崩すため数年を費やしてきた。スイスの多くの銀行は、米国からの損害補償要求に数十億ドルを支出した苦い経験がある。米国からのクレームは、脱税疑惑、不動産担保(モーゲージ)証券がらみであるという。例えば、仮想通貨のスタートアップ企業は、ビジネス用銀行口座の開設が難しいと嘆いている。

スイスが「クリプトネーション」になりたいというなら、これらの障害を乗り越える手立てを考えなくてはならないことは自明である。

(フリージャーナリスト、大手マスコミOB記者:長瀬雄壱)

参考:Coinnewstelegraph