第三弾:なぜ米国企業はセキュリティトークンに熱心なのか?~証券トークンについて知っておくべきこと

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第三弾:国別の動機の背景、なぜ米企業はセキュリティトークンに熱心なのか?~証券トークンについて知っておくべきこと

第一、ニ弾に続いて、セキュリティトークン(Security Token/証券トークン)についての解説を行います。セキュリティトークンというトピックには多くの投資が集まり、それにより様々なプロジェクトが立ち上がり、規制に関しても議論されている非常に重要度が高いトピックです。

セキュリティトークンの売り出しは、IPO(公開株式市場に上場)、ICO(トークンの売り出し)に対して、STO(Security Token Offering)と呼ばれます。

関連:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは何か?

前回は、セキュリティトークンに関わる主要プロジェクトを大まかに網羅しました。第三回目は、セキュリティトークンが盛り上がる背景について解説します。

▼連載
第一弾:セキュリティトークンとは何か?
第二弾:セキュリティトークンの領域にベットする主要プロジェクトリスト

なぜ米国企業は、セキュリティトークンに熱心なのか?

前回のコラムで紹介しましたが、セキュリティトークンに関わる企業や、プロジェクトはアメリカを拠点にする企業が非常に多いことに気づくでしょうか。

例えば、Coinbase、Polymath、OpenFinance Network、tZERO、TrustToken、Start engine、Templum、これらは全てアメリカを拠点としています。セキュリティトークンのプレイヤー全体を見渡せば、もちろんヨーロッパのプレーヤー、アジアのプレーヤーも存在しますが、この領域で大きな割合を占めるのはアメリカのプレーヤーです。

なぜアメリカのプレーヤーが多数を占めるか、それなりの背景があります。

それはアメリカの公開株式市場の成り立ちに由来します。
時価総額数十億円の企業が上場をする市場がなく、アメリカの高騰するコンプライアンスコスト、投資家保護の影響からアメリカの上場企業は絞られ、過去30年で上場企業数は1/3に減りました。

限られた会社しか上場ができず、スタートアップが上場をするハードルは非常に高くなっています。
これはVCや投資家にとっても問題で、アメリカではIPOまでに13年と長期化しており、VCの平均ファンド期間以上に長くなっています。

Financial Services Committeeで提出された意見書で引用されているアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)のScott Kupor氏によると、2016年にはアメリカのIPOの数は20年前の半分になり、中国のIPOでの調達金額は対アメリカの11%で、これはアメリカの雇用を犠牲にしているとしています。

これがアメリカで証券トークンが注目される背景の一つでもあります。
時価総額数十億円で上場ができる日本のマザーズのような公開市場がないアメリカでは、その代替を証券トークンというパラダイムシフトを言い訳に作りたがってるという動機があります。

オフショア金融の国がセキュリティトークンに前向きになりがちな理由とは

第三弾:国別の動機の背景、なぜ米企業はセキュリティトークンに熱心なのか?~証券トークンについて知っておくべきこと

こういった動き以外に、スイスやマルタなどの国も、セキュリティトークンに対して積極的な動きが見られます。

スイス金融当局は、トークンを、決済用トークン(BTC・LTCなど、有価証券ではない)、ユーティリティートークン(有価証券ではない、投資対象として機能する場合有価証券となる)、アセットトークン(有価証券)の3種類に分類して、適切な規制作りを行おうとしています。

スイス証券取引所は、デジタルアセットの取引所としてセキュリティトークンをサポートしていく予定であると発表しています。マルタ証券取引所に関しては、世界最大の取引所バイナンス(Binance)と、ドイツのスタートアップNeufundと提携をして、セキュリティトークンの取引所のオープンを目指しています。

これらの国がこういった動きを行なっている背景としては、もともとプライベートバンクやオフショア金融が盛んな地域であったが、そういった産業が斜陽産業になりつつという点があります。

アメリカやイギリスなどの主要先進国の減税や、監視強化のなか、国家として新しいビジネスモデルを模索している部分があり、そのひとつがセキュリティトークンだといえます。

途上国からのファンドレイジング

こういった国ごとの背景違いといった観点から言うと、新興国・途上国ではまた別の背景があります。まず、途上国には、新興企業に投資をするVCマネーが少ないです。なぜ少ないか?・・その理由は、公開市場がないため上場企業によるM&Aも少ないからです。

例えば東南アジアの中ですとカンボジア、アフリカの国などでは上場企業が10-20しかない国は少なくありません。そのような環境ですので、途上国に投資するVCの期限はすごく長く設定されていることが多いですし、EXITまで時間かかるので、個人もエンジェル投資はしにくいという事情があります。

こういったところでセキュリティトークンが使用できるようになると、現地企業の株式が流動性を持ち、グローバル市場とも繋がることができる可能性があります。

連載「証券トークンについて知っておくべきこと」
第一弾:セキュリティトークンとは何か?
第二弾:セキュリティトークンの領域にベットする主要プロジェクトリスト
第三弾:なぜ米企業はセキュリティトークンに熱心なのか?
第四弾:セキュリティトークン関連の最も重要な米国での議論
第五弾:分散型金融のプロトコルはどのようにスタックするか
第六弾:セキュリティトークンの中期予想
第七弾:セキュリティトークン情報収集おすすめサイト5選


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