【後編】米国はデジタル資産をどのように規制するか?一目で分かる規制当局と業界の見解の差

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【後編】米国はデジタル資産をどのように規制するか?一目で分かる規制当局と業界の見解の差

本稿は下記前編の続きとなります。あわせて御覧ください。
【前編】米国はデジタル資産をどのように規制するか?最近の米証券取引委員会(SEC)動向を考察

ビットコイン(BTC)は証券なのか?

これに関して、そうではありません。SEC(米国証券取引委員会)も認めるように、ビットコイン(BTC)については、グレーではありません。ビットコインは、ほかの多くの仮想通貨と異なり、当初から特定の目的あるいは特定の企業のために資金を調達した訳ではなく、そこにはSECが法的にも証券ではないと言える「世界的な所有権」があります。

仮想通貨は証券か否かのSECの判断の基準は、ビットコインにも及んだというのが正しいと思います。SECが5月7日、仮想通貨全体の規制を検討する委員会を設置して、ICOを証券法で規制する方針を示した際、ビットコイン価格は9%ほどの下落、その後は1万ドルが心理的価格目標になっています。ビットコインも、SECの規制の影響を十分過ぎるほど受けているのではないでしょうか。

関連:イーサリアム(ETH)はビットコイン(BTC)と同様に証券ではない、SEC幹部が確認

管轄(支配)権はいかにして解決されるか?

管轄権の問題は議論が始まったばかりです。SECとCFTC(商品先物取引委員会)は、数多くの会合を通じて、これらの諸問題を解決するよう努め、財務省主導の金融規制当局者会議が作業部会を開きました。その結果として、仮想通貨取引関係者に対する一連の強制手入れ(捜査)がありました。

例えば、不正行為に関係した容疑の手入れ、グレーゾーンで事業続ける関係企業への召喚状、不審な取引に関係する弁護士や会計士に対するジェイ・クレイトンSEC委員長名の警告など相次ぎました。国家戦略がないことから様々なルールが生まれる可能性があります。

仮想通貨に対する規制当局の管轄は、仮想通貨は証券相当とするSEC、商品と解釈するCFTCに分断されています。さらにスポット市場に参入する仮想通貨交換業は、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)のライセンスが必要になります。分断状態を解決するため、上院銀行委員会は2月、「仮想通貨:CECおよびCFTCの監督機能」と題する公聴会を設置して、仮想通貨の包括的な規制の枠組みづくりを自発的に始めています。

仮想通貨業界は何をしているのか?

業界は度重なるロビー活動と商品販売のため何でもする構えです。規制議論が進む中で、多くの企業が2018年第1四半期中に、ICOを通じて約120億ドル(約1兆3000億円)もの資金を調達しました。

その方法も巧妙で、投資家にいわゆる「ユーティリティトークン(utility tokens)」として販売するケースが増えています。ユーティリティトークンは、発行母体が資金調達後に提供するサービスや物品を割引利用してもらえるという機能を付けたトークンであり、発行母体は証券と判定されずに資金を調達することができます。

別の企業は、いわゆる「配当型トークン(security tokens)」と称して、証券法に準じて売り出しますが、最初から富裕層の投資家に限って販売する商法です。

さらに「Simple Agreement for Future Tokens(SAFT)」という販売契約によって販売するトークンもあります。これは米国企業がよくするICOの一種であり、文字通りシンプルな投資契約スキームのことです。

このほかマネーロンダリングはじめ不正行為が、規制抜きの業界で盛んとなっています。SECはこれらすべての不正行為を、証券法の召喚状送付、手入れなどの規制措置で取り締まろうとしている訳なのです。

何が危うくなるのか?

大量のマネーが動きます。SECがイーサリアム(ETH)のような大きな仮想通貨を証券と分類したと仮定すれば、その価格は急落してロング待ちの一般投資家は大きな損失を被ってしまう可能性があります。その理由は言うまでもなく、米国の大手取引所はどこも、証券取引所としてSECに正式登録していないからです。

ビットコインだけ、あるいは未登録のその他仮想通貨を提供している取引所は、取引による収益に損害を被り、コインの価格が下落して、限られた人だけが取引できる結果になります。厳しいルールはまた、スタートアップの資金調達源に影響を与え、米国では打つ手なく外国に逃避することになりかねません。

これらすべての問題はどのようにして、いつ解決されるのか?

解決はまだ先のことになりそうです。規制当局者は仮想通貨に関する政策を決定するまでの特定の期限を明確にしていません。ですから、ここらで資産を売却しようとする機関は、例えば先物とかETFの形で持ち分を清算する余裕があるかもしれません。もし規制当局者が、証券にかかわる法的な問題を解決したとしても、訴訟行為は続くでしょう。

概して、米国の規制当局者は、(中国のように?)仮想通貨取引を非合法として、企業を捜査する一部の国家と比較すれば、それほど強硬なスタンスを取ってはいません。しかし明白なルールがなければ、予見できる近い将来、仮想通貨政策の大部分の作業は、「規制当局者が長期にわたるルール違反で訴える」相手探しに大方費やされるという、事態になりかねません。

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参考
Bloomberg
Cryptovest