【前編】米国はデジタル資産をどのように規制するか?最近の米証券取引委員会(SEC)動向を考察

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【前編】米国はデジタル資産をどのように規制するか?最近の米証券取引委員会(SEC)動向を考察

仮想通貨は有価証券か否か協議してきた米証券取引委員会(SEC)が、結論を出す時期が近づいていると感じています。SECはこの問題をICO(initial coin offering)に絞り、仮想通貨を用いた資金調達で発行されるトークンを原則として証券と見なす中で、例外を認めることで決着させる方向が見えてきました。既存の仮想通貨については、ビットコイン(Bitcoin)に加えて、イーサリアム(Ethereum)も証券ではないとする結論のようです。

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仮想通貨を証券と定義することに世論は概して反対です。SECも規制の全容を固めることになお苦慮しています。SECが結論を出しても、他の管轄当局との意見統一が必要になり、議会が認めるかどうか、最終的に政府がどう出るか、なお問題山積です。

米大手メディアBloombergが「U.S. Crypto Regulatory Fight Has Everything But Rules(米国の仮想通貨規制論争はルール以外すべてやる)」(2018年5月14日付)と題した分析記事があります。米国政府と業界の思惑の違いをどう読み取ればいいのかよく分かります。

想定外のテクノロジー、ブロックチェーンの規制の難しさ

「ワシントンの多くの関係者は、仮想通貨をどのように判断するか明確にしようと努力してきた」と始まるこの記事は、政財界、法曹界、業界などを巻き込んだそれぞれの思惑を対比的に分析しています。米国が仮想通貨全体をどのように規制するかは、単に1国の問題ではなく、日本を含む全世界に大きな影響を与えます。ここではBloomberg記事のアルゴリズムに沿って、この問題を浮き彫りにしてみました。

仮想通貨の規制問題とは、ある人にとってはデジタル資産をいかに規制するかの問題に過ぎず、別の人にとっては、論争に影響力を行使していかに利得を得るかの問題です。しかし、議会は新しいルールを承認することを嫌い、金融規制当局は規制案作りに苦慮していれば、ホワイトハウスが力ずくで介入することにもなりかねません。そこには混乱があるだけで、仮想通貨発行人や投資家にとっては、混乱と法的リスクが残るだけです。

すべての問題の根源は、非集中型のブロックチェーンという想定外のテクノロジーが誕生したことにあります。匿名という形態の通貨を伴うブロックチェーンの性格上、一つ間違えれば、金融機関の礎を根本から揺るがす事態になりかねません。さらに政府が直面する困難に追い打ちをかける別の問題は、このシステムがすでに国際的に受け入れられていることです。米国が単独で、ほかの多くの国を指図することはほとんど不可能です。

政府は仮想通貨についてどう思っているか?

それは政府のどの機関に問い合わせるかにかかっています。米国のスワップ規制当局者である商品先物取引委員会(CFTC)は2014年以来、仮想通貨は「商品(commodities)」と定義しています。税務当局は課税対象となる「資産(property)」と見なします。財務省は、銀行秘密保護法(BSA)の下で反資金洗浄法に準拠すべきだと主張します。最も重要な役割を果たすのは、所管の証券取引委員会(SEC)の出方です。

SECは、ほとんどすべてのコインが「未登録証券(unregistered securities)」に相当して、法律(証券取引法)に違反していると主張していますが、どの仮想通貨が未登録証券か明確な線引きをしていません。しかし、ここに来て議論が煮詰まっている感があります。

ICOを通じてトークンを発売する際には、自社の権限のみならず提案しているプロジェクトに対する投資家のことも考慮する必要があります。SECの決定次第では、米国内の投資家に証券と見なされたトークンを販売する際には、米証券法に準拠しなくてはならなくなります。

業界は仮想通貨をどう見るか?

業界の多くは、規制に透明性がないことが、イノベーションの成長を阻害していると指摘し、ビジネスモデルに打撃を与えるとの理由で規制反対のロビー活動を続けています。

仮想通貨が証券か否かを判定する標準テスト「ハウィーテスト(Howey Test)」は、投資家がある企業から得られる利益を期待して、投資資金をプールするか否かで決まります。SECは今のところ、ICOで発行されるトークンが証券かどうかを判定するため、標準テスト以外の新しいテストを導入していません。もちろん、業界が求める証券法から除外する「セーフハーバー」措置にも同意していません。

2018年3月1日、SECはオーバーストック・ドットコム子会社ティーゼロのICO調査を開始したと伝えられた。「私募に関する覚書」を公表し、ICOは証券として規制される方針が明らかになりました。次いで、未登録証券XRPで損害を受けたという、Ripple Labsに対する集団訴訟もあり、ICOは証券であるとのSECの立場を強化する形になっています。

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米大手金融機関サスケハナ・インターナショナル・グループ(Susquehanna International Group)のデジタル資産グループ責任者のバート・スミス氏は、「ウォールストリートのクリプトキング」と呼ばれるほどの人物である。同氏は、規制上の「透明性」が得られれば、機関投資家は仮想通貨市場にマネーをもっとつぎ込み始めると、市場の行き先に楽観的です。


※編集部追記
本稿は前編となります。後編は近日公開いたします。