Vitalikが提唱したDAICOの概要と考察・問題点

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ICOイメージ

Junya Hirano 平野淳也(@junbhirano

先日、EthereumのファウンダーであるVitalikが、現在のICOの問題点解決するモデルである新しいICOのコンセプトとして「DAICO」というモデルを提唱しました。

現行のICOの問題点については多々あり、その問題点はこれまで筆者がコインチョイスに寄稿したコラムでも度々取り上げています。
ざっと纏めると、ICOのプロジェクトチームは株式の規格化をせずとも、巨額の資金調達を実行でき、その開発の進捗にほとんど全くアカウンタビリティが機能していないことが問題でした。

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DAICOの概要

DAICOの大まかな流れは下記の通りです。

① DAOICOのコントラクトが含まれたアドレスでICOを実施する。
② 従来通り、ETHで資金調達が実施される。
③ 調達をしたコントラクトアドレスにはtapという変数が追加される。この変数によって、開発チームはコントラクトアドレスから必要な開発資金を引き出すことができる。
④トークンホルダーは投票によってtapの上限を引き上げる、または、コントラクトを停止してコントラクトアドレスに残っているETHをトークンホルダーに戻す

概要としては、ethresearchに詳しく纏められています。

DAICOが解決する問題は、

  • 開発チームに適切な開発資金を期間ごとに提供して、開発の進捗状況や能力が証明されるごとに、徐々に開発資金の供給を引き上げるというモデルにすることで、一気に◯◯億円をプロジェクトチームが手にするという現状を改善できる。
  • 開発チームに問題があるとトークンホルダーが判断した場合は、コントラクトを取り消し、ロックされている資金を回収できる

の2点になるといえるでしょう。

つまり、トークンホルダーによる投票性で民主主義的に資金調達のガバナンスを改善することが目的です。
ちなみにこのモデルはまだ実装はなされていなく、現時点で、コンセプトが提唱されたのみです。(とはいえ、さほど難易度の高い実装ではないので、近いうちにDAOICO実装コードもいくつか出るはずです。)

DAICOの考察と問題点

さて、このDAICOが提唱されたこと自体は素晴らしいと前置きを置いた上で、これが本当にワークするのかいくつか疑問を感じますので、考察していきます。DAICOのコンセプトは基本的に民主主義が機能するという思想の元で構築されています。

しかし、今の暗号通貨の市場を見れば分かるように、投資家は賢くありません。
現状、開発の進捗がほとんど止まっているリビングデッド案件にもICO案件でも、ICOで10億円資金調達したあと、さらにそこから三倍程度の価格がトークンについていることは珍しくありません。

この場合、例えば、「開発チームに問題があるとトークンホルダーが判断した場合は、コントラクトを取り消し、ロックされている資金を回収できる」という点は恐らく機能しません。

なぜならトークン価格>ICO価格(DAICOのコントラクトアドレスにロックされているETH)ならば、トークンホルダーにとって、返済を要求する経済的インセンティブはありません。

また、tapという変数によって開発チームに期間ごとに適切な開発資金を供給することが、DAICOの提唱するものですが、この「期間ごとの適切な開発資金」をいくらなのか見定めるのは一般投資家には不可能です。その不可能性は、これまで多くのICOが明らかに不要な開発資金である数十ミリオンや数百ミリオンを調達してしまっていること自体が証明しているといえます。

また、投票に参加するインセンティブ自体も提唱されていなくこれはThe DAOで指摘されていた懸念を引きづっているといえます。
熱心なトークンホルダーであれば、tapの切り上げなどの投票に参加するでしょうが、経済的インセンティブがなければ、その投票にほとんどの人は参加しません。

そういった意味では、少なくともすぐには、このICOのモデルが機能するとは自分には思えません。

しかし、それでもVitalikがこれを提唱したことにより、議論が起こっていることは良いことですし、その議論の中からより良いモデルが提唱・実装される可能性はありますし、期待しています。