ビットコインETFは人気復活の起爆剤となるのか?~金ETF登場の歴史が示唆する機関投資家の重要性

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ビットコインETFは人気復活の起爆剤となるのか?~金ETF登場の歴史が示唆する機関投資家の重要性

仮想通貨元年といわれた2017年は仮想通貨が軒並み驚異的なパフォーマンスを挙げ、その勢いでビットコインETFの上場申請が相次いだものの、SEC(証券取引委員会)から待ったがかかり、ひとまず上場が断念された。しかし、そのビットコインETFが再申請され、人気復活の起爆剤として期待されている。

ちなみにETFとは、Exchange Traded Fundの略で、上場投資信託のことを指す。株価指数、債券指数、商品価格などの指標に連動することを目的に運用されており、金融商品取引所に上場しているので、通常の株式と同じように売買取引が可能な投資信託のこと。

ビットコインETF、機関投資家を対象に再申請の動き

昨年は大いに盛り上がった仮想通貨市場だったが、価格の急落ともに人気に陰りが見え始めており、ビットコイン価格は年初来の安値圏に沈んでいる。ビットコインは昨年12月に2万ドルに迫ったものの、6月には一時6000ドルを割り込んだ。

年初からの急落にはさまざま要因が考えられるがその一つとして上場投資信託(Exchange Traded Fund/ETF)上場の挫折が挙げられる。ビットコインは昨年12月に世界最大の取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が先物取引を開始し、金融市場ではETF上場の期待が高まった。

しかし、米証券取引委員会(SEC)が裏づけ資産の流動性とバリュエーションを巡り懸念を表明したことで、1月上旬にETFの上場を申請していた4社が相次いで申請を取り下げ、上場への期待感は一気に萎むとともに、ビットコイン投資への安全性に疑問が投げかけられる格好となった。

しかし、最近になってETF上場の動きが再起動しており、人気復活への起爆剤として注目度が高まっている。1月に申請を取り下げていたヴァンエックとソリッドXの2社が機関投資家に的を絞った申請で条件をクリアしようと動き出したからだ。申請が承認された場合、1口当たりの投資額は25ビットコインとなり、1ビットコインが6000ドルだと15万ドルとなる計算だ。桁が2つ上がることから個人投資が簡単に手を出すことは難しく、大口投資の機関投資家向けと考えられている。

申請されたETFは物理的に裏打ちされたファンドで、実際にビットコインを保有する。ビットコインETFの認可は金融界が仮想通貨を本格的に受け入れるための試金石になるとも考えられており、申請の行方に注目だ。

参考:Bloomberg

ビットコインは“商品” 米連邦地裁が初の判決

なぜETF上場が重要なのかというと、機関投資家を呼び込める可能性があるからだ。残念ながら個人投資家の仮想通貨ブームは少なくともひとまず終了した観がある。仮想通貨に限った話ではないが、個人投資家の場合、単純に価格が上昇しているという理由で購入する傾向にあることが行動ファイナンスの視点からしばしば指摘されている。見方を変えると、価格が下がっているのに買いが集まるとは考えづらい。そうであるならば、ブームを復活させるためには機関投資家に頼らざるを得ないのが実情ともいえるだろう。

ETFが機関投資家の関心を集める理由はETFが証券だからである。仮想通貨は通貨なのか証券なのか商品なのかは依然として論争中であるが、少なくとも米国においてはビットコインは商品として取り扱われる方向にある。たとえば、米連邦地裁は3月6日、「ビットコインなどの仮想通貨は商品(コモディティ)である」との初の判断を下している。この判断に従えば、ビットコインは商品取引法で規制されることになり、米商品先物取引委員会(CFTC)が監督・規制することになる。

関連:「仮想通貨(ビットコイン)はコモディティ」と判決、この規制が及ぼす影響とは?

ビットコインが何であるかがはっきりぜず、ある意味無法地帯にいたことに魅力を感じていた向きからは法規制の対象になることにはネガティブな反応が見られている。ただし、ETFの作り手にとってはビットコインが商品であると決めてもらったほうがありがたい。市場には既に金や原油のETFなど商品を原資産としたETFに事欠かないからだ。

過去には金ETF登場で金価格が急上昇、“証券化”で機関投資家が参入

金のETFはいくつか存在するが、資産残高が最大のSPDRゴールド・シェア(ティッカー:GLD)が上場したのが2004年の11月となる。金価格は2004年まで400ドル前後(1トロイオンス当たり)をうろうろしていたが、金ETFの普及とともに価格が急騰し、2008年に1000ドルを突破すると、2011年には1800ドル台まで上昇し、一大ブームを巻き起こしている。

このブームを主導したのが機関投資家だ。一般に年金基金などの機関投資家はヘッジファンドなどとは違い、商品には投資できない。商品はいわゆる投機的な資産とみなされているため、保守的な運用者からは敬遠され、しばしば投資対象から除外されるからだ。ただし、金はインフレヘッジと有名であり、株価との相関が低いことでもしられている。分散投資としてポートフォリオに組み込みたい機関投資家からの潜在的な需要があることはほぼ明らかだった。

そこに登場したのが金ETFである。金ETFはアセットクラスとしては証券に分類されるので、これまでは商品であることから手が出せなかった機関投資投資家がこぞって購入した。たとえば、世界最大の年金基金といわれるカリフォルニア州職員退職制度(カルパース)がリスク分散の手段として金ETFを購入したのだ。もっとも、金ETFを作ったのはカルパースの元最高経営責任者(CEO)であり、彼らは自分たちの欲しかったものを作ったに過ぎないともいえる。

機関投資家がポートフォリオの一部に金ETFを組み込む流れができたことで、金価格が押し上げられ、価格が上昇したことで個人投資家からの人気も集まった。後知恵ではあるが、当時はS&P500連動型ETFを時価総額で抜いてしまうほど大人気となり、バブル的な相場となっていた様子が伺えなくもない。

ビットコインETF上場なら人気復活か?

ウォール街では5月にゴールドマン・サックスがビットコイン先物取引の開始を決定するなど、機関投資家向けの仮想通貨取引プラットフォームが着々と準備されている。ゴールドマンは仮想通貨は資産クラスとして無視できなくなっていることを取引開始の理由として挙げている。

参考:NYTIMES

米法律事務所フォーリー・ラードナー(Foley & Lardner)が6月下旬に公表した「2018年仮想通貨調査(2018 Cryptocurrency Survey)」によると、投資家の72%が仮想通貨ETFに投資したいと回答しており、仮想通貨が“証券化”されることを投資家が望んでおり、金ETFの上場当時と同じ潜在需要があることを匂わせている。

こうした状況を踏まえると、ビットコインETFがかつての金ETFのように機関投資家の需要を呼び込み、価格上昇の起爆剤とならないとも限らないだろう。ビットコインはデジタル・ゴールドとも称されており、金との類似性を指摘する声も少なくない。金ETFの上場が投資家層の拡大と金価格に及ぼした影響を振り返ると、ビットコインETFの登場がビットコインの人気復活のカギを握ると考えても不思議ではないだろう。

関連:支払い手段としての仮想通貨に期待、上場投資信託(ETF)に72%が賛成

6月28日にはSECがETFの上場簡素化を検討していることが伝えられており、ビットコインETFの登場を待ち望む投資家にとっては朗報だ。また、仮想通貨ETF申請の動きは欧州でも見られており、世界的な機運の広がりはSECの認可を後押しする可能性もあるだろう。

7月に入ってビットコイン価格がやや持ち直しているが、こうした一連の報道がビットコインETFの登場を予感させていることも背景にあるのかもしれない。

ちなみにビットコインの時価総額は1000億ドル程度しかなく、8兆ドル程度とされている金市場とは比べようもなく小さい。したがって、ビットコインETFが上場してかつての金ETFと同様に機関投資家のポートフォリオの一部に組み込まれた場合には一時的に急上昇となる恐れもありそうだ。

(海外在住コインチョイス編集部)

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参考:Bloomberg