Junya Hirano 平野淳也
先日3月23日~25日に、東京にて、主にビットコインキャッシュ(BCH)の開発者向けイベントであったサトシズビジョンカンファレンス(以下:SVC)にお邪魔してきました。
当日の様子は、コインチョイス編集部でもレポートが書かれています。
【Satoshi’s Visionイベントレポート】
本コラムでも当日のレポートを何回かに分けて紹介したいと思いますが、各プレゼンテーション自体については、Youtubeにも挙げられていますし、重要なものはネットでも記事になっていますので、本コラムでは、当日にブースを出展していた会社を紹介します。
目次
ビットコインキャッシュのみにフォーカスしたウォレット「Yenom」
下記は、ビットコインキャッシュのみにフォーカスしたウォレットであるYenom(エノム)です。
旧会社名は「mikan」といい、同名の英単語アプリを提供していましたが、新規事業としてビットコインキャッシュのウォレットを立ち上げたといいます。
なお、事業ドメインは完全な転換ではなく、英単語アプリ事業も継続なようで、語学学習事業は黒字化しており、売り上げ成長率は前年比1000%とコメントされています。それでも、突如事業にしてしまうほどビットコインが面白く、立ち上げたのがこのウォレットアプリだといいます。
SVCの会場では、WBS(ワールドビジネスサテライト)などからも取材を受けており、注目が伺えます。(なお写真に写っているように採用中らしい)
Yenomに限らず、日本からウォレットアプリが複数登場していることは、競争によってより良いユーザー体験が生まれるはずで良い傾向といえます。
BCHが日常使いされることを目指し、シンプルな設計にされたウォレット
Yenomは、「とびきりやさしいビットコインウォレットアプリ」をテーマにして作られたウォレットだと言います。
筆者もデモ時点から紹介をして使用してみましたが、インターフェースは恐らくどのモバイルウォレットよりもシンプルです。日常的に気軽にビットコインキャッシュを使用するためのウォレットだといいます。
また、ビットコインではなくビットコインキャッシュにフォーカスをしているのは、ビットコインキャッシュのほうが日常使いや支払いにより適したブロックチェーンであると判断したと伺っています。同ウォレットでは、ビットコインは対応しておらず、ビットコインキャッシュのみの対応になります。
多くのモバイルウォレットが、複数通貨やERC20の対応が進む中、逆行して、単一通貨のみにフォーカスしていることは、よりシンプルさを際立てており、使いやすいと思った次第です。
その他の特徴として、このウォレットでの着金の反映はゼロコンファメーションです。
多くのウォレットではいくつかのブロックを経過しないと反映はされないですが、このウォレットではトランザクションが発行された時点でお金が届いたと感じることができます。ユーザー体験としては一瞬で、お金を受け取れたように感じれるようになっています。
ユーザーがYenomを使う際の注意点
本コラムはプロモーション記事でもないし、筆者はビットコインキャッシュのエバンジェリストでもないので、当該ウォレットに関していくつか使用上の注意点と正直な感想も書いておこうと思います。
シンプル重視、ユーザーが秘密鍵を持たない設計
1点目として、このウォレットは、ユーザーが秘密鍵を持たない設計になっています。
つまりユーザーとしては、アプリが消えた時にバックアップする手段を持たない他、資産の保全に関してアプリを提供する事業会社を信頼する必要があります。
基本的に一般的なウォレットアプリは秘密鍵の保存はユーザーに託されており、ウォレットプロバイダ会社は資産にアクセスもできないことが前提になっています。
しかし、Yenomは取引所ではなく、ウォレットアプリでありながら、ユーザーは秘密鍵を保持しないというアプローチをとっています。正確には、秘密鍵はアプリのローカルに保存されていますが、デバイス依存で保存しているといいます。
Yenom社の、誰でも使えることを目指したウォレットアプリを作ろうという世界観と、秘密鍵という概念自体も一般的な人には分かりにくい仕組みであることを理解したうえで、このようになったのだと推察します。ある程度の金額をデポジットすると下の画像のような通知がきますが、当該ウォレットはクローズドコードですし、秘密鍵を書き取って保管ができないことを考慮したら、このプッシュは過剰なくらい注意喚したほうがいいとは思った次第です。
ビットコインではなく、ビットコインキャッシュ専用のウォレットである
2点目としては、ビットコインキャッシュ専用のウォレットでありながら、ビットコインのウォレットであることを強調されている点です。
筆者は、政治論争をしたいわけではないですが、やはりビットコインキャッシュ専用アプリであれば、より注意書きは必要ではないかと思います。特に、初心者でも気軽に使えるアプリを目指すならばなおさらです。
というのも、それはよく論争になるブランド毀損の観点からのみではなく、間違って、ビットコインをビットコインキャッシュのアドレスに送金してしまったりした場合、取り出せない事態になりえるからです。ユーザーは気をつけるべきでしょう。
総論
ビットコインキャッシュ自体は様々な技術提案もされており、ビットコインキャッシュ専用のウォレットを作っていく事業選定は面白いと思いました。
また、ウォレットプロバイダ各社はこれまで、それがエコシステム全体としては必要不可欠なアプリケーションであるにも関わらずマネタイズの解を出せずにいます。
今回紹介したYenomは、通常のウォレットのセオリーではクローズドコード・秘密鍵をユーザーが保存しないという形式は邪道ですが、少額決済・日常使い特化のウォレットとして今後のアプローチを期待しています。