この1週間だけでビットコイン(Bitcoin)のマイナーが、中央集権型取引所に1億2,800万ドル(約185億6,000万円)相当のビットコインを送金していたことが分かりました。
オンチェーンデータ・プロバイダーのグラスノード(Glassnode)によると、この金額は1日のマイニング収入の315%に相当するもので、市場に前代未聞の作用を与えていると考えられます。
過去に例のないマイナーからの資金流入
今回取引所に流入した資金は、2021年の強気市場でも見られなかった規模です。マイナーは支出をカバーして収入を守るための安全措置として、利益を取引所に送金したと考えられます。
送金額がピークに達したのは、6月24日にビットコインが今年最高値の31,185ドル(約450万円)を記録したタイミングでした。クリプトクアント(CryptoQuant)のCEO(最高経営責任者)兼共同創業者であるキ・ユン・ジュ(Ki Young Ju)氏などのアナリストによると、直近の価格対収益比を見たマイナーが売りの機会ととらえたのではないかということです。
興味深いことに、取引所への多額な資金流入にもかかわらず、ビットコイン価格は回復力を維持しながら30,000ドルを超えたレベルをキープしています。ただし市場は、31,000ドルのレジスタンスラインを超えられなかった点を注視しています。強気市場がこのラインを超えられないと、特にマイナーが広範な清算を始めた場合、潜在的な損失が生じるかもしれません。しかもこの現状で、マイナーの収益性はかなりの困難に直面しています。ハッシュレートは377EH/sという記録的レベルに上昇し、難易度とエネルギーコストも高まり、マイニング利益に下向きの圧力を加えています。
結果的にマイニング利益は2022年7月比で30%以上、2021年の強気市場のピーク比で80%以上下落しました。こうした状況下でマイナーは、積み重なる支出をカバーするために、苦労して手に入れたビットコインを売る必要に迫られたのかもしれません。上昇するハッシュレートとマイニング難易度、そして上り続けるエネルギーコストがマイナーをこの窮地に追い込んだのです。
マイナーが多額の利益を取引所に送金した事実を前に、業界が示すビットコインの価格上昇予測とマイニングの展望ははっきりしません。
ビットコイン・マイナーが展開する新戦略
ビットコイン・マイナーは過去にない新戦略を採用し、ここ2週間で10億ドル(約1,450億円)を超えるデジタル資産を取引所に送金しています。しかし彼らの狙いは、単に販売目的だけではないようです。
ビットコイン・ブロックチェーンの完全性を保護する上で、マイナーの強固な計算処理は欠かせなく、マイナーは報酬の6.25BTCというブロック利益を資金化します。しかしクリプトクアントは、彼らがデリバティブの取引所に33,860BTCを送金し、今度はその大半を彼らの専用ウォレットに連続して戻したことを明らかにしました。
さらにマイナーは準備保有資産を8,000BTCほど減らし、ほんの一部をスポットの取引所に預けました。クリプトクアントは、マイナーが新規発行通貨をデリバティブ取引の担保にして、市場のコンセンサスに対するリスクヘッジ戦略をとっていると推測しています。
直近の20%に及ぶビットコインの値上がりは、ビットコイン現物ETFの申請や取引への興味の上昇のような、プラスの要素によって後押しされています。最近のオンチェーン・データは強気市場の始まりを示しており、それがマイナーに対して、積極的に準備金や保有資産を活用することを促しています。
今回の動きと同様の事例は過去にもあり、多額の資金が取引所に送金された場合、もしも買い手の需要が流入する供給を吸収しきれないと価格の反転を引き起こします。マイニングが進化してマイナーが新戦略を立案する状況が、広範なビットコイン・エコシステムに潜在的な影響を与えないかどうか、市場はじっと見守っています。
参考
・Bitcoin Miners Break Records, Sending $128 Million to Exchanges Amidst Mounting Challenges
【こんな記事も読まれています】
・【墨汁速報】運用資産71兆円超えのフィデリティ、ビットコイン現物ETFを申請準備か=リーク
・マイニング企業の復活をかけて、コア・サイエンティフィックの再建への取り組み
・ビットコイン(BTC)価格10倍の可能性、マイケル・セイラー氏が描く仮想通貨市場の未来