今、何が起きているのか?
暗号資産(仮想通貨)運用会社HashDexのグローバル市場分析責任者、ジェリー・オシェア氏の調査によると、「圧倒的多数のファイナンシャルアドバイザーは、現時点でクライアントにビットコインや暗号資産への投資配分を推奨していない」ということが明らかになりました。
これは驚くべき事実です。なぜなら、2024年1月にアメリカ証券取引委員会(SEC)がビットコインETFを承認し、機関投資家も個人投資家も簡単にビットコインに投資できるようになったからです。しかし、金融のプロたちはまだ慎重な姿勢を崩していません。
ETFとは?
ETF(Exchange Traded Fund)は、証券取引所で売買できる投資信託のことです。ビットコインETFができたことで、実際にビットコインを購入・保管する手間なく、株式と同じようにビットコインに投資できるようになりました。

アメリカの主要ビットコインETF運用資産ランキング
出典: Visual Capitalist
質問の変化:理解から実践へ
アドバイザーたちの質問は、ビットコインやブロックチェーンとは何かを理解しようとすることから、デジタル資産が誰かのポートフォリオでどのような役割を果たすことができるかに焦点を移している
これは重要な変化です。以前は「ビットコインって何?」「ブロックチェーンってどういう仕組み?」といった基本的な質問が多かったのですが、今では「ポートフォリオの中でビットコインはどんな位置づけになるの?」「株式投資の一部として考えるべき?」「金(ゴールド)の代わりになる?」といった、より実践的な質問に変わってきています。
ポートフォリオにおけるビットコインの位置づけ
考えられる分類
- • 株式の一種として
- • 金(ゴールド)の代替として
- • 独立した新しい資産クラスとして
- • 通貨・決済手段として
検討すべき要素
- • リスク許容度
- • 投資期間
- • 他の資産との相関性
- • 税務上の取り扱い
アドバイザーが抱く3つの大きな懸念
1位:ボラティリティ(価格変動の大きさ)
最大の懸念は、ビットコインの激しい価格変動です。アドバイザーたちは「ビットコインが16年の実績を持つ発展途上の資産である」ことは理解していても、定期的に20%以上下落することに対して、クライアントに勧めづらいと感じています。

ビットコインの価格変動とボラティリティの推移
出典: Bitcoin Magazine
2位:エネルギー消費問題
2021年にテスラがビットコイン決済を停止するほど大きな問題だった環境問題への懸念は、現在では2番目に後退しています。興味深いことに、ビットコインマイニングが再生可能エネルギープロジェクトの発展を助けるという新しい見方も広がっています。
新しい視点:環境への貢献
- • 余剰の再生可能エネルギーを有効活用
- • 遠隔地の再生エネルギー開発を促進
- • エネルギー効率向上のインセンティブ
3位:犯罪利用への懸念
ビットコインは今でも、議会議員からも「薬物取引や制裁逃れを促進する決済システム」として見られることがあります。しかし実際には、現在のビットコインの大部分は合法的な投資や決済に使用されており、この認識は徐々に変わってきています。
世代による違いと教育の重要性
若い世代のアドバイザー
デジタル技術に慣れ親しんでおり、ビットコインへの理解も深い傾向
中間世代のアドバイザー
慎重ながらも学習意欲が高く、徐々に理解を深めている
ベテラン世代のアドバイザー
従来の投資手法を重視し、暗号資産全体に懐疑的な傾向
オシェア氏によると、「ここ数年間の活動の大部分は教育に基づいている」とのことです。アドバイザーたちはこの分野に対して受容的ですが、適切なデューデリジェンス(投資判断のための調査)には時間がかかり、比較的ゆっくりと行動するのが特徴です。

ファイナンシャルアドバイザーの暗号資産投資に対する意識調査
出典: Blockworks
2025年の注目テーマ:ビットコインとステーブルコイン
ビットコイン
依然として暗号資産の中心的存在。ETFの普及により、より多くの投資家にとってアクセスしやすい投資対象となっています。
- • 機関投資家の参入が加速
- • 決済手段としての利用拡大
- • 「デジタル・ゴールド」としての認識向上
ステーブルコイン
「最初のキラーアプリケーション」と呼ばれるステーブルコイン。価格が安定しており、直感的に理解しやすい特徴があります。
- • 価格変動リスクが低い
- • 国際送金での活用が拡大
- • 企業の決済インフラとして採用増加
多くの人がステーブルコインを最初のキラーアプリと呼んでいる。なぜなら、それは直感的に人々が理解できるものだからだ
ステーブルコインの成長に直接投資することは簡単ではありませんが、イーサリアムやソラナのようなスマートコントラクトプラットフォームは、ステーブルコインが機能するためのインフラを提供しているため、投資家にとって興味深い対象となる可能性があります。
日本の状況:まだ見えない承認の道筋
日本のビットコインETF状況
アメリカでビットコインETFが承認から1年半が経過した現在でも、日本では2025年6月時点でビットコインETFは承認されていません。そのため、日本の証券会社ではビットコインETFを購入することができない状況が続いています。
承認への課題
- 金融庁の慎重な姿勢
- 投資家保護に関する懸念
- 税務上の整理が必要
- 規制フレームワークの検討中
今後の展望
- 米国での成功事例を参考
- 段階的な規制緩和の可能性
- 機関投資家向けから開始か
- 承認時期は依然として未定
しかし、アメリカでのビットコインETFの成功や、暗号資産市場の成熟により、日本でも徐々に議論が活発化してきています。特に、機関投資家や年金基金がビットコインETFへの投資を始めていることは、日本の金融業界にとっても無視できない動きとなっています。
日本で認可された暗号資産取引所一覧
金融庁登録済み暗号資産交換業者について
日本で暗号資産の取引を行う事業者は、金融庁・財務局への登録が義務付けられています。2025年6月現在、全国で28社が暗号資産交換業者として登録されており、これらの企業のみが合法的に暗号資産の売買サービスを提供できます。
登録の意義
- 金融庁による厳格な審査を通過
- 顧客資産の分別管理義務
- 定期的な監査・報告義務
- 消費者保護体制の確立
業界団体
- JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)
- 自主規制団体として機能
- 業界の健全な発展を促進
- トラブル相談窓口も提供
登録番号:第00003号
所在地:東京都港区赤坂
特徴:国内最大級の取引量
取扱通貨:38銘柄
登録番号:第00014号
所在地:東京都渋谷区桜丘町
特徴:初心者向けアプリが人気
取扱通貨:27銘柄
登録番号:第00004号
所在地:東京都品川区西五反田
特徴:取引手数料の安さ
取扱通貨:38銘柄
登録番号:第00006号
所在地:東京都渋谷区道玄坂
特徴:GMOグループの信頼性
取扱通貨:26銘柄
登録番号:第00011号
所在地:東京都港区六本木
特徴:SBIグループの一員
取扱通貨:20銘柄
取引所選びの重要なポイント
安全性の確認
- 金融庁の登録を受けているか
- 顧客資産の分別管理
- セキュリティ対策の充実
- 保険加入の有無
利便性・コスト
- 取引手数料の水準
- 取扱銘柄の豊富さ
- 使いやすさ・機能性
- カスタマーサポート
変化の兆し:年末には状況が変わる?
オシェア氏の楽観的な予測
これらの人々(アドバイザー)は、このエコシステムがどれほど発達しているか、そして長期的にこの資産クラスへの配分がどれほど有益であるかを過小評価している。年末までには、その事実を理解するアドバイザーがもっと多くなるだろう
変化を促す要因
教育の進展
アドバイザーの理解が深まる
成功事例の蓄積
ETFの実績が証明される
クライアントからの要望
投資家の関心が高まる
規制の明確化
法的な枠組みが整備される
残る課題
ボラティリティ
価格変動リスクの管理
世代間格差
ベテランアドバイザーの理解促進
適切な配分比率
ポートフォリオでの最適な割合
税務上の複雑さ
納税義務の理解

2018-2023年における各資産クラスとの相関関係分析
出典: QuantPedia
まとめ:慎重さから積極性への転換点
ファイナンシャルアドバイザーたちのビットコインに対する慎重な姿勢は、決して否定的な感情からくるものではありません。むしろ、クライアントの資産を守る責任感と、新しい技術に対する適切な理解を深めたいという誠実な姿勢の表れです。
質問が「ビットコインとは何か?」から「ポートフォリオでの役割は?」に変化していることは、暗号資産が投資の世界で確実に市民権を得つつある証拠といえるでしょう。ボラティリティ、環境問題、犯罪利用への懸念は確かに存在しますが、これらの課題は徐々に解決されつつあります。
日本では、金融庁の厳格な審査を通過した28社の暗号資産交換業者が安全な取引環境を提供しており、投資家にとって信頼できる選択肢が整備されています。ビットコインETFの承認はまだ先になりそうですが、既存の取引所を通じて暗号資産投資を始めることは可能です。
2025年後半には、より多くのアドバイザーがビットコインの長期的な価値を理解し、クライアントに適切なアドバイスを提供できるようになる可能性が高いです。日本でも、アメリカでの成功事例を参考に、暗号資産に対する規制や理解が進展することが期待されます。