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イノベーションの鍵はリーダーシップ
編集部:イノベーションを起こそうとすると、そのイノベーションが自分たちに不利になる人もいるわけで、彼らは全力で抵抗するというところまで銀行や郵政民営化、加計学園の例を挙げてお話していただきました。このような状況が起きてしまうのは分かりますが、変化を起こすにはどんな要素が重要になってくるのでしょうか?
竹中:何かを変えるときに重要なのはリーダーシップです。メディアからたたかれるリスクをとって自分から「みなさんどう思いますか」と声をあげるリーダーがいます。
小泉さんが典型ですがニュース見れば、郵政民営化をやらなくていいのか国民が聞きたい、やらなくていいのなら自分は辞めると言って、郵政民営化を実現させました。でも仮想通貨を含め改革がどんどん進んで行くと、最後に重要になってくるのは個人認証なんですよね。
今起きている変化の先には個人認証
竹中:要するにインターネット上の財産価値なわけですから、その財産価値が本当にこの人のものかという個人認証が必要になりますよね。この個人認証をマイナンバーでやることになってるわけですが、マイナンバーカード、持っていますか?
編:持っていないです。
マイナンバーカードの発行数が今1000万なので日本では12人にひとりが持っている計算になりますね。ところがインドでは12億人のうち11億人なんですよ。しかもカードではなく生体認証になっています。だからインドは10年後にはこのフィンテックを含めた第四次産業革命最先端を行ってる可能性があるのです。
なぜこれができたのかというと、やはりリーダーの力があったのです。
インドの個人認証実施にも強力なリーダーが
竹中:インドではインフォシスという企業の代表だったニレカニ氏が、前の新政権に働きかけ固有識別番号庁という役所を作り、その初代総裁にはニレカニ氏が就任しました。これがおよそ10年前のことです。
この状況を日本で例えると、マイナンバー庁を作って、その初代総裁にソフトバンクの孫正義氏が就任するようなイメージです。そしてニレカニ氏はこれが必要だと改革を勧めました。
もしも日本で一億人から指紋とるなんて言ったらマスコミは大騒ぎするでしょう。そう思って私もニレカニ氏に質問しました。反対があったでしょう?と。
インドでは個人情報やプライバシー、個人情報に対する認識は日本よりも低いようですが、もちろんそれでも反対はあったようです。
それに対してどうしたのですか?と尋ねると、「ひたすらメリットを説きました」とおっしゃっていました。これによって、あなたは指紋だけで銀行口座開けますよと。日本はみんな銀行口座を持ってますから、必要を感じないかもしれませんが、インドでは大きなメリットです。
編集部:例えば日本の場合は固定電話を持ってるから携帯電話の普及遅れましたよね。だから、日本はみんな銀行口座を持ってるから、こういう仮想通貨とかフィンテックの必要性をあんまり感じないかもしれません。
だからこそ、インドのような国、中国のような国で、リープフロッグ、カエル跳びのようにポーンと最先端にいく可能性があるわけです。なので中国で、今回仮想通貨を制限し始めたというのは、他の国にとってはむしろチャンスなのではないでしょうか。
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【竹名平蔵氏プロフィール】
1951年和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒業後に日本開発銀行入行。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣で経済財政政策担当大臣を皮切りに、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣兼務、総務大臣を歴任。2006年よりアカデミーヒルズ理事長、現在東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授。ほか(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役などを兼務。著書は、『経済古典は役に立つ』(光文社)、『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)、『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』(日本経済新聞社)、『研究開発と設備投資の経済学』(サントリー学芸賞受賞、東洋経済新報社)など多数。