暗号資産(仮想通貨)運用会社ギャラクシーデジタル(Galaxy Digital)のリサーチ部門トップであるアレックス・ソーン(Alex Thorn)氏は、「ビットコイン(BTC)10万ドルへのロードマップ」と題して、ビットコインの現状と今後10万ドル(約1,500万円)を狙う値動きの調査結果を公開しました。今回はその内容をピックアップして紹介します。
幅広く注目を集める今回の強気市場
ビットコイン価格はアメリカ大統領選挙前の11月4日から50%も上昇し、22日に99,860ドル(約1,498万円)の史上最高値を更新してから、24日には91,420ドル(約1,371万円)まで8%下落しました。
ビットコインは3月14日の73,835ドル(約1,108万円)から11月6日まで、237日という長期の下降トレンドにありました。また2012、2015~2016、2019各年の弱気市場では、直近の最高値から80%以上の下落があり、2020、2022~2023各年にも75%の下落を経験しています。それに比べれば8%の下落は小さなことですが、現在はビットコインへの注目度が高まっているため、市場関係者にとっては見過ごせない動きなのでしょう。
誰が今ビットコインを売却しているのか?
155日間以上の長期保有者からのビットコイン供給は、大統領選後に減少を続けています。これは3月の過去最高値更新前の、利益確定売りによる減少を明らかに上回ります。古いコインの動向を示すCDD指標も、目立った動きを見せていません。つまり長期間保有されているコインが、市場に出てきていないことになります。
では誰がビットコインを売っているのか、この疑問についてソーン氏は、前述した3~11月の237日間における購入者からの売り圧力が高まっているとの見解を示しました。またURPD(UTXO実現価格分布)指標も、52,000~72,000ドル(約780~1,080万円)の間で最後に動いたコインの所有者が多数にのぼり、彼らが10万ドルに近づく過程で利益確定に動いていることを示唆しています。
一方オプション市場では、ビットコイン現物ETFの新規未決済建玉が、コール買いが31億ドル(約4,650億円)の状態で、総額41億ドル(約6,150億円)以上に達しています。ほとんどのコールエクスポージャーは93,000ドル(約1,395万円)かそれ以上であり、市場参加者は強気でさらに高値を狙っているようです。彼らは価格上昇では買いで、価格下落では売りでヘッジする必要があり、106,000ドル(約1,590万円)までは市場のボラティリティを高め続ける可能性があります。
システムにレバレッジはあるものの、ソーン氏は市場は健全だと考えています。永久スワップ資金調達率も、直近の市場ピークだった3月のレベルには上がっていません。未決済建玉は史上最高レベルにありますが、大部分はシカゴマーカンタイル取引所にあり、ETFオーナーのベーシス取引とETF認定参加者のヘッジになっていると思われます。
ビットコイン10万ドルへのシナリオとは?
ソーン氏はビットコインの強気が定着したことに自信を見せています。機関投資家や企業、そして国家レベルでの採用増加と、好ましい規制環境と政策の進展がその根拠です。さらに彼は、今後の価格上昇につながる要素をいくつか指摘しています。
まず米証券取引委員会(SEC)による、デジタル資産保全義務に関するガイダンス(SAB121)が変更され、その結果大手カストディ銀行が仮想通貨市場に参入する可能性があることです。米国通貨監督局(OCC)も態度を軟化させる可能性があり、ますます大手の参入が増えるかもしれません。
またデジタル資産に対するSECの判断基準(Howey Test)が緩和されるか、仲買取引における取引可能な暗号資産証券が拡張されれば、伝統的金融の参入が増加し、アメリカ国内でさらに多様な現物仮想通貨ETFが許可されるでしょう。
仮想通貨全体の制度化が進めば、金融オプションが増えて流動性が高まり、既存の金融プラットフォームからのスポット市場へのアクセスも増えるでしょう。それがTradFi(伝統的金融)とDeFi(分散型金融)との融合を進める可能性もあります。
政治面では、次期財務長官のスコット・ベッセント(Scott Bessent)氏や次期副大統領のJ.D.バンス(J.D. Vance)氏などをはじめとする、新たな政府の実力者がビットコインを支持する立場を表明しています。トランプ政権ではSECに代わり、米商品先物取引委員会(CFTC)がデジタル資産の規制にあたる計画です。これは業界にとって好ましい変化と言えるでしょう。ビットコインを戦略的に保有する議論も高まっており、こうしたアメリカの姿勢は他国にも影響を与えています。
12月9~10日にアブダビで開催される「Bitcoin MENA」などのイベントでは、重要な仮想通貨の採用が公表される可能性があります。現物ETFオプションの導入も、流動性の上昇とボラティリティの減少に貢献し、大手機関投資家の参入を促すと同時に、アメリカの小売り株式オプションの44%を保有する個人投資家の興味を高めることにもなるでしょう。
最後にまとめとしてソーン氏は、この先12~24ヶ月にわたるビットコイン価格は独自の強気サイクルになると述べています。ビットコインは強固な支持基盤を構築し、近い時期に10万ドルを突破する可能性は十分にあるということです。
参考
・When Will Bitcoin Break The Sell Wall At $100,000? Galaxy Exec Answers
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