
中国が2025年8月、人民元建てステーブルコインの発行承認を検討していることが判明しました。これは12年間続いた仮想通貨禁止政策からの大きな転換で、米ドル支配に対抗する重要な戦略として注目されています。香港では8月1日から正式にステーブルコイン条例が施行され、人民元建てステーブルコインの実現に向けた環境が整っています。
要点
- 中国政府が人民元建てステーブルコインの発行承認を初検討
- 香港で2025年8月1日からステーブルコイン規制条例が正式施行
- 米ドル支配からの脱却と人民元国際化が主要目的
- 日本では現在人民元建てステーブルコインの取扱いはなし
- 2025年末から2026年にかけて実際の発行が予想される
目次
人民元ステーブルコインとは
人民元ステーブルコインは、中国の法定通貨である人民元(CNY)に価値が連動するデジタル通貨です。2025年8月20日、ロイター通信が中国国務院による発行承認検討を報じ、世界的に注目を集めています。
基本的な仕組み
人民元ステーブルコインは、従来のUSDTやUSDCと同様に法定通貨担保型として設計される予定です。発行体が人民元を準備資産として保有し、1対1の価値連動を維持します。
主要特徴
- 裏付け資産: 中国人民元(CNY)
- 発行形態: ブロックチェーン技術による電子発行
- 管理体制: 中国政府認可の発行事業者による集中管理
- 利用目的: 国際決済・貿易決済での人民元利用拡大
中国人民銀行(PBOC)との協議では、人民元国際化の手段としてオフショア人民元ステーブルコインが急務であるとの見解が示されています NewEconomy。
中国の政策転換と背景
12年間の仮想通貨禁止からの転換
中国は2017年から仮想通貨取引を全面禁止し、世界最も厳格な規制を実施してきました。しかし2025年8月、人民元ステーブルコインの検討により大幅な政策転換が明らかになっています。
政策転換の主要理由
- 米ドル依存度の削減: 国際決済における米ドルシェア47%に対し、人民元は2.88%(2024年6月時点)
- 人民元国際化の促進: デジタル人民元(e-CNY)と連携した戦略的展開
- 香港金融センター強化: アジア地域でのデジタル金融ハブとしての地位確立
中国政府関係者によると、香港と上海での試験運用を含む国際化計画が今月後半に審議される予定です Reuters。
デジタル人民元(e-CNY)との関係
2024年6月時点で、デジタル人民元の取引総額は7兆人民元(約9,860億ドル)に達し、2023年6月の1.8兆人民元から大幅増加しています FIDX。
人民元ステーブルコインは、このデジタル人民元インフラとの連携により、国際的な活用範囲を拡大する戦略的意味を持ちます。
香港のステーブルコイン規制
2025年8月1日施行の新制度
香港金融管理局(HKMA)は2025年8月1日、「ステーブルコイン条例」を正式施行しました。これにより人民元建てステーブルコインの発行環境が法的に整備されています。
ライセンス制度の詳細
- 申請受付開始: 2025年8月1日
- 初回ライセンス発行: 2026年初頭予定
- 申請企業数: 40社超が発給枠を争奪中
- 対象通貨: 香港ドル、米ドル、人民元など主要通貨
香港では「フィアット連動型ステーブルコイン(FRS)」発行者に対するライセンス取得が義務化され、厳格な監督体制が構築されています JETRO。
規制要件と運用方針
主要な規制要件
- 準備資産の完全担保: 発行額と同額の法定通貨保有義務
- 流動性管理: 即座の償還要求に対応可能な資産構成
- 定期監査: 独立監査法人による四半期レポート提出
- リスク管理: サイバーセキュリティ・AML対策の徹底
モルガン・スタンレーは、オフショア人民元建てステーブルコインの実際の発行時期を「2025年末から2026年」と予想しています 日本経済新聞。
既存ステーブルコインとの比較
主要ステーブルコインの市場シェア
ステーブルコイン | 時価総額シェア | 裏付け通貨 | 透明性 | 主要取引所 |
---|---|---|---|---|
USDT (Tether) | 62.16% | 米ドル | 3ヶ月ごと監査 | 全世界対応 |
USDC (Circle) | 24.28% | 米ドル | 毎月監査 | 規制適合重視 |
人民元ステーブルコイン | 未発行 | 中国人民元 | 四半期監査予定 | 香港・上海先行 |
技術的・経済的比較
流動性の課題 現在のUSDT・USDCは数千億ドル規模の流動性を持ちますが、人民元建てステーブルコインは当初限定的な流動性からスタートする見込みです Pan News Lab。
規制適合性の優位性 香港の厳格なライセンス制度により、人民元ステーブルコインは既存のUSDTよりも高い規制適合性を持つ可能性があります Phemex。
日本市場への影響
現在の日本市場状況
2025年8月時点の取扱い状況
- 日本の主要暗号資産取引所では人民元建てステーブルコインの取扱いなし
- 金融庁認可の円建てステーブルコイン(JPYC)が2025年秋発行予定
- 規制当局は海外ステーブルコインに対して慎重姿勢を維持
今後の展望と課題
導入可能性の検討要因
- 金融庁の認可方針: 外国通貨建てステーブルコインの取扱い基準
- 投資家需要: 中国関連投資・貿易決済でのニーズ
- リスク管理: 中国の資本規制・政治リスクへの対応
日本の改正資金決済法(2023年6月施行)では法定通貨担保型ステーブルコインの枠組みが整備されていますが、外国通貨建ては慎重な検討が必要です SBI VCトレード。
投資リスクと注意点
主要リスク要因
政治・規制リスク
- 中国の急激な政策変更可能性
- 米中関係悪化時の規制強化リスク
- 資本流出規制による流動性制約
技術・運用リスク
- 新規発行体による運用実績不足
- サイバーセキュリティ・ハッキングリスク
- 準備資産の透明性・監査体制の信頼性
市場リスク
- 初期段階での流動性不足
- 人民元為替レート変動の影響
- 既存ステーブルコインとの競合激化
日本の主要暗号資産取引所
人民元ステーブルコインの将来的な取扱いに備え、日本で金融庁認可を受けた主要取引所をご紹介します。
BitTrade(ビットトレード)
主要特徴
- 金融庁登録済みの安全性重視の取引所
- 豊富な暗号資産ラインナップ
- 高度なセキュリティ体制
- 24時間365日の監視システム
- 初心者から上級者まで使いやすいインターフェース
取扱い銘柄: BTC、ETH、XRP、ADA、DOT など30種類以上
主要手数料
- 現物取引手数料: 無料
- 入金手数料: 無料(銀行振込手数料は顧客負担)
- 出金手数料: 330円
最小購入額: 500円から
SBIVCトレード
主要特徴
- SBIグループの信頼性と安定性
- ネット証券大手のノウハウを活用
- 手数料の安さが業界トップクラス
- 充実した投資情報とレポート提供
- 積立サービスの充実
取扱い銘柄: BTC、ETH、XRP、LTC、BCH、LINK、DOT、ADA など
主要手数料
- 現物取引手数料: 無料
- 入出金手数料: 無料
最小購入額: 1円から
CoinCheck(コインチェック)
主要特徴
- 国内最大級のユーザー数
- 使いやすいスマートフォンアプリ
- NFTマーケットプレイスを併設
- 自動積立サービス
- 貸暗号資産サービス
取扱い銘柄: BTC、ETH、ETC、LSK、FCT、XRP、XEM、LTC、BCH、MONA、XLM、QTUM、BAT、IOST、ENJ、OMG、PLT、SAND
主要手数料
- 現物取引手数料: 無料
- 入金手数料: 銀行振込無料、コンビニ入金770円〜
- 出金手数料: 407円
最小購入額: 500円から
bitbank(ビットバンク)
主要特徴
- 高い流動性と狭いスプレッド
- 本格的なチャート機能
- セキュリティの高さで定評
- API取引対応
- 板取引でのコスト削減が可能
取扱い銘柄: BTC、ETH、XRP、LTC、BCH、MONA、XLM、QTUM、BAT、OMG、XYM、LINK、MKR、BOBA、ENJ、MATIC、ASTR、ADA、AVAX、AXS、FLR、SAND、APE、GALA、CHZ、OAS、MANA、GRT、RNDR、BNB、ARB、OP
主要手数料
- Maker: -0.02%、Taker: 0.12%
- 入金手数料: 無料
- 出金手数料: 550円/770円
最小購入額: 0.0001BTC(約500円)から
GMOコイン
主要特徴
- GMOインターネットグループの安心感
- 各種手数料が無料
- レバレッジ取引対応
- 暗号資産FX取引可能
- つみたて暗号資産サービス
取扱い銘柄: BTC、ETH、BCH、LTC、XRP、XEM、XLM、BAT、OMG、XTZ、QTUM、ENJ、DOT、ATOM、ADA、MKR、DAI、LINK、FCR、DOGE、SOL、ASTR、FIL、SAND、CHZ
主要手数料
- 現物取引手数料: Maker -0.01%、Taker 0.05%
- 入出金手数料: 無料
- 送金手数料: 無料
最小購入額: 180円から
BITPOINT(ビットポイント)
主要特徴
- 各種手数料無料
- 高機能取引ツール「BITPOINT PRO」
- ステーキングサービス対応
- 豊富なキャンペーン
- 初回入金で暗号資産プレゼント
取扱い銘柄: BTC、ETH、BCH、LTC、XRP、BAT、TRX、ADA、JMY、DOT、LNK、DEP、IOST、JASMY、KLAY、SHIB、MATIC、FLR、GXE、ATOM
主要手数料
- 現物取引手数料: 無料
- 入出金手数料: 無料
- 送金手数料: 無料
最小購入額: 500円から
よくある質問(FAQ)
Q1. 人民元ステーブルコインはいつ発行されますか?
結論: 2025年末から2026年初頭の発行が予想されています。
中国国務院が2025年8月後半に承認審議を行い、香港でのライセンス発行が2026年初頭に予定されています。モルガン・スタンレーの分析では、実際の市場流通は2025年末から2026年にかけて開始される見込みです。
Q2. 日本の取引所で人民元ステーブルコインは買えますか?
結論: 現在日本では取扱いがなく、将来的な導入も未定です。
2025年8月時点で、日本の金融庁認可取引所では人民元建てステーブルコインの取扱いはありません。金融庁は外国通貨建てステーブルコインに対して慎重な姿勢を維持しており、今後の規制方針が注目されます。
Q3. 人民元ステーブルコインの投資リスクは?
結論: 政治リスク、流動性リスク、技術リスクが主要な懸念材料です。
中国の政策変更リスク、米中関係悪化時の規制強化、新規発行体の運用実績不足、初期段階での流動性不足などが考えられます。投資前にこれらのリスクを十分理解することが重要です。
Q4. デジタル人民元と人民元ステーブルコインの違いは?
結論: デジタル人民元は中央銀行発行のCBDC、ステーブルコインは民間事業者発行の暗号資産です。
デジタル人民元(e-CNY)は中国人民銀行が直接発行・管理するCBDCで、人民元ステーブルコインは認可された民間事業者がブロックチェーン上で発行する暗号資産です。両者は補完的な関係で人民元国際化を推進します。
Q5. 最新の香港ステーブルコイン規制の内容は?
結論: 2025年8月1日施行の新制度では、ライセンス取得が義務化され厳格な監督体制が構築されています。
香港金融管理局(HKMA)による「ステーブルコイン条例」では、発行事業者に対してライセンス取得義務、準備資産の完全担保、定期監査、リスク管理体制の整備が求められています。現在40社超が申請を検討中です。
まとめ
人民元ステーブルコインは、中国が12年間続けた仮想通貨禁止政策からの歴史的転換として注目されています。2025年8月の発行承認検討と香港でのライセンス制度施行により、実現に向けた環境が整いつつあります。
この動きは米ドル支配への対抗と人民元国際化を目的とした戦略的意味を持ち、グローバルなデジタル通貨市場に大きな影響を与える可能性があります。一方で、政治リスクや流動性不足などの課題も存在するため、投資判断には慎重な検討が必要です。
日本の投資家の方は、まず金融庁認可の国内取引所で暗号資産投資の基礎を学び、将来的な人民元ステーブルコイン導入に備えることをお勧めします。