米国商工会議所(The United States Chamber of Commerce)は5月9日、米国証券取引委員会(SEC)による暗号資産(仮想通貨)企業への不公正な扱いについて、連邦裁判所に申立書を提出しました。
仮想通貨業界に大きなインパクトを与える
米国商工会議所は、全米3,000もの事業者が加入する世界最大の事業連盟です。その組織がコインベース(Coinbase)とSECとの対立に介入して申立書を提出したことは、米国証券法のもとでの、規制当局によるデジタル資産およびその関連企業の扱いに対して、非常に大きなインパクトを与えています。
申立書の中で商工会議所は、議会および行政府、そして連邦裁判所に対して、会員たちの意見を代表して事態の重要性を強調しています。通常商工会議所による事業分野での問題提起は、このように法廷助言人による申立書という形で行われます。
今回の申立書では、デジタル資産を取り巻く環境の透明性の欠如と、これらの資産が連邦法下での有価証券に該当するかどうかが最大の焦点になっています。こうした不確実性は、1兆ドル(約134兆5,000万円)の経済価値を持つデジタル資産に広範囲な影響をもたらしています。
仮想通貨市場の大きさと将来性を顧みず、SECは関連企業の指導に失敗しました。その上で現在も、強圧的な権力行使と矛盾する公式声明とを繰り返しています。
それに対して商工会議所は、SECが法規制と体系的なプロセスの構築を拒んでいることが、適切なプロセス、行政法、最適な管理の伸展を妨げていると非難しています。
申立書の3つの主旨
今回の申立書で商工会議所が主張しているのは、主に以下の3つの点です。
まず1つめは、規制の不確実性が米国内での技術革新を阻害しているという点です。どのデジタル資産が有価証券に該当するのかの明確なガイドラインがなければ、企業は成長と発展を妨げるテクノロジーの探求をためらうことになります。
2つめの問題は、SECの対応がデジタル資産の規制環境を不安定にしていることです。明確な枠組みと、強制力への信頼性がなければ、事業者にとって予測不能な状況を生み出し、さらに情報に基づいた決定を下すことが困難になります。
そして最後の1つは、SECが「憲法上の適正手続きと公正な通知の権利」を侵害しているという点です。公式なプロセスで明確な指針を示せないことで、SECは裁判所が法的主張を審理したり、意義を申し立てたりする能力を制限し、規制の不確実性をさらに悪化させ、公正な処理を妨げています。
商工会議所は、SECの対応が有害で法に反すると強く主張しています。また法的な不確実性が、生産性の高い経営と革新を阻害しているとも述べており、これは裁判所の認識とも一致します。商工会議所の介入は、コインベースとSECとの対立が、いかに深刻であるかを仮想通貨コミュニティに再認識させました。今後の動向は、米国内でのデジタル資産分野とその規制枠組みに大きな影響を与える可能性があります。
リップル(Ripple)社のCEO(最高経営責任者)であるブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)氏も、仮想通貨分野における規制の透明性の欠如が、資産の海外流出を招き、技術革新を退化させることを危惧しています。SECはガーリングハウス氏を含む同社役員を、未登録の有価証券であるXRPを提供し、数十億ドルに及ぶ資金を調達したとして提訴しています。
参考
・SEC Is Acting Unfairly Against Crypto Firms Says US Chamber of Commerce
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