米国テキサス州に顧客を有する暗号資産(仮想通貨)企業は、新しい州法により「プルーフオブリザーブ(proof of reserve)」が義務づけられました。今後は顧客の資産全額が引き出し可能であることを保証しなければなりません。
顧客資産の保証を求めるHB1666法案
新たに承認された州法によると、テキサス州でビジネス展開する仮想通貨取引所は、顧客に対する義務を果たすための十分な保証金を、今後は常に準備しておくことが求められます。
5月17日、テキサス州立法府は下院法案HB1666を承認。これにより州内の仮想通貨取引所は、監査済みもしくはオンチェーンの顧客資産を保障する、プルーフオブリザーブのルールに従うことになりました。プルーフオブリザーブとは、顧客から預かった全資産と同額か、それ以上の額を常に取引所が準備していることを保障する仕組みです。先週テキサス州下院は上院に法案を送り、投票をもって法案の審議は終了しました。
州の金融コードを修正する目的で、新法は仮想通貨関連企業に規制と責務を規定し、顧客の資産が常に全額引き出し可能な状態にあることと、その資産を顧客の取り引き以外に使用してはならないことを義務づけています。
さらにHB1666では、顧客の資産を分離保管して個別に会計処理することを求め、その資産を他のデジタル資産、サービスプロバイダーの資本、その他の顧客に属さない財産などと混合することを厳しく禁じています。
楽観視できないテキサス州の規制
テキサス・ブロックチェーン協議会の議長であるリー・ブラッチャー(Lee Bratcher)氏は、「テキサス州が仮想通貨寄りの規制スタンスをとり、専門のビジネス環境を醸成する中で、今回の法案は透明性を高めることになる」と述べました。さらに「デジタル資産分野での詐欺を防ぐのに十分とは言えないが、役に立つツールにはなるだろう」とも付け加えています。
仮想通貨擁護グループのデジタル会議所の副議長コディ・カーボーン(Cody Carbone)氏は、「この立法が可決されることで、テキサス州は米国内の仮想通貨取引で最も安全な地域になる。テキサス州で稼働するプラットフォームは投資家や顧客に、彼らのお金や資産が安全であるという、ハイレベルな基準を提供している」と述べています。
この今までにない法案は、FTXをはじめとする仮想通貨関連企業が破たんし、破産処理を進める過程で、自分の資産をどれだけ取り戻せるのかという、顧客の不安が高まる中で提出されました。
しかし今回の州法成立を受けても、全てのデジタル資産関連企業にとってテキサス州がバラ色の聖地というわけではありません。テキサス州では4月にも、上院法案SB1751が承認されています。この法案はマイニング活動を制限するもので、マイニング擁護団体からは批判の声が上がっています。この法案は上院での完全な承認を待ち、その後下院での審議を経て承認されれば、最終的に州知事グレッグ・アボット(Greg Abbot)氏が署名して成立することになります。
参考
・Texas Passes Proof of Reserves Legislation
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