EIP-1559は、イーサリアム(Ethereum)のネットワークの手数料モデルの抜本的な変更提案です。7月頃に予定されるLondonハードフォークで実装が予定されています。
イーサリアムコミュニティでも多くの議論を呼んだこの提案は、イーサリアムにとってユーザーエクスペリエンスとETHの価格の2つの観点で大きな影響を与えます。
本コラムではEIP-1559について説明して、将来的な影響を理解することを目的とします。
手数料モデルの抜本的な変更提案「EIP1559」の概要
EIP1559に含まれる提案骨子は大きく分けて2つあります。
- BASE FEE (基本手数料)をベースにしたオークションモデルへの変更
- BASE FEEで支払われたトランザクション手数料のバーン
まず、「BASE FEE」という概念を設定します。日本語で訳すと基本手数料というところでしょう。プロトコルレベルでBASE FEEが設定され、これは1ブロックあたり800万のgasをターゲットにして常に変動します。例えば、あるブロックで900万gasが使われていた場合、次のブロックでのBASE FEEは上昇します。逆に、あるブロックで500万gasしか消費されていない場合、次のブロックのBASE FEEは減少します。
トランザクション発行者がBASE FEEに上乗せする手数料を支払う場合は、マイナーが優先してトランザクションを承認します。そして上乗せ手数料分はマイナーの収益になり、BASE FEEはネットワークからバーンされます。
マイナーは、イーサリアムネットワークの維持する対価として報酬を得ていますが、現在は、「ブロック報酬 + ブロックに含まれるすべてのトランザクションの手数料」であるものの、EIP-1559以降では、「ブロック報酬 + チップがあったときにそれを受け取るのみ」に変化します。
ユーザーエクスペリエンスとETH価格への影響
EIP-1559における最も重要なポイントは2つです。まず第一に、ユーザーエクスペリエンスの改善です。プロトコルレベルでBASE FEEが常に設定される場合、トランザクション発行者は手数料設定に迷うことがなくなります。
第二に、ETHのバーンが含まれているということです。ネットワーク手数料の大部分がバーンされるため、ETHはデフレーションする傾向になります。つまり希少価値が上がります。どの程度のETHがバーンされるかは、実際にメインネット稼働されないと読めませんが、EIP-1559が導入されていない現在のイーサリアムのネットワークのマイナーへの手数料は参考になるはずです。
参照:THE BLOCK
上記のデータによると、2021年第1四半期にかけては毎月6~9億ドル(約660~1,000億円)相当のETHがマイナーへの手数料として支払われています。図の赤い部分に相当します。
この部分の相当量、恐らく少なくとも半分以上がBASE FEEに位置づけられ毎日バーンされるのではないかと予想されます。市場に供給されるETHの総量は減少傾向となり、ETHの価格を押し上げることが期待されます。
冒頭で述べたとおり、EIP-1559は7月頃に予定されるLondonハードフォークで実装が予定されてます。ビットコインにとっての半減期と同じようなムードで市場供給のETHが少なくなり価格に期待する声も多く、相場への短期的・中期的いずれの影響もあるでしょう。