その動向が注目されるビットコインETF。
また、ビットコインETFが2021年中に申請されるか予想材料となる要素は何かについても解説ています。
これらを踏まえたうえで、今回のコラムではビットコインETFがSEC(証券取引委員会)に承認された場合の影響について考えます。
避けられないグレイスケールのGBTCに伴う影響
最も大きな影響としては、グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)が提供するGBTCが挙げられます。GBTCは現時点で最も残高の大きいビットコイン投資信託です。ビットコインの全供給量の1%超がこの投資信託で取引されています。
グレイスケールの投資商品の規模を、2020年末時点での数値で概観します。まず、グレイスケールの運用金額は2020年末時点で202億ドル(約2兆2,500億円)です。また、2020年の実績数値としては下記のようになっています。
- 2020年中にグレイスケールの投資商品へ投資された金額:57億ドル
- 2020年中の毎週の平均の投資額:1億980万ドル
- グレイスケール・ビットコイン・トラストの毎週の平均の投資額:9,000万ドル
- グレイスケール・イーサリアム・トラストの毎週の平均の投資額: 1,520万ドル
- グレイスケール・デジタル・ラージ・キャップ・ファンドの毎週の平均の投資額: 140万ドル
また、2013年の投資信託販売開始から2020年末までに至る資金流入フローは以下の通りです。
参照:Digital Asset Investment Report: Q4 2020
GBTCは二次流通市場でも取引されていますが、オープンエンド型ではなく償還ができません。そのためGBTCを売却したい投資家は額面で償還する選択肢はなく、市場で売却するしかありません。このため最近では、原資産のNAVに対してGBTCの市場価格がマイナスになっています。
参照:Ycharts
ビットコインETF承認後の影響
ETFが承認された場合、オープンエンド型でなく管理報酬も高額なGBTCは恐らく投資家に求められない金融商品になるはずです。これに伴いGBTCの投資家はETFを求める動きがでるでしょう。しかし、その際ビットコインの全供給量の1%もの量で資金移動が起こるとマーケットにも相応な影響を与えるだろうと考えられます。
グレイスケール・インベストメンツの会社としての立場では、ETFによって同社の主力金融商品が廃れないように策を講じる動きもあります。同社は新しくビットコイン ETFを申請し、その目論見書によると、そのETFではビットコイン単一資産に連動するETFではなく、ビットコイン投資信託(GBTC)を最大15%組み込んだバスケット型になっています。ETFの上場に寄るGBTCの行方は注視するべきでしょう。