3月9日に8%以上の値上がりを見せたビットコイン(BTC)は、ほとんどの主要暗号資産(仮想通貨)を巻き込みながら再度下落しました。直前の1週間では強気傾向で、一時42,000ドル(約480万円)を超えましたが、そこから反転して現在は39,000ドル(約450万円)前後にまで下がっています。
時価総額で第2位のイーサリアム(ETH)もそれに追従して、現在2,500ドル(約29万円)近辺で推移しています。トップ100の仮想通貨のほとんどが、わずか数日前までは急上昇していましたが、一転して弱気市場の影響により下落しています。
原因の1つはロシアのウクライナ侵攻
仮想通貨市場を減速させている最大要因は、現在進行中のロシアのウクライナ侵攻です。ロシアによる侵攻は、株式市場とビットコインなどのデジタル資産との両方に重くのしかかっています。
一方でマーク・モビアス(Mark Mobius)氏などの一部アナリストは、今回の紛争がビットコイン価格を支えていた可能性は高いと主張しています。しかし実際には紛争が長期化すると、現在の値動きからも推測できるとおり、仮想通貨市場は大幅な下落に向かう公算が大きいと言えます。
限定的だったバイデン大統領令の影響
直近の短期的な強気傾向には、アメリカのバイデン大統領が出したデジタル資産の研究開発加速を促す大統領令が影響していました。しかし大統領令はすぐに署名され、そのニュースの影響もわずか数時間で消え去り、仮想通貨市場は弱気相場のもとに取り残されました。
紛争の脅威が増大するにつれ、投資家は資金を全面的に引き揚げたり、ビットコインのようなハイリスク資産への投資を見送ることにより、仮想通貨市場への脅威も大きくなっていきます。
バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)社のウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏は、紛争中にビットコインを買うべきではないという警告を発しており、大多数の投資家がそのアドバイスに従っています。
今後ロシアによる攻撃が激化した場合、アメリカやイギリス、ドイツ、フランス、中国などの各国がどのような対応をとるか、ウクライナ侵攻に関しては多くの不安材料があります。
ロシアに対する仮想通貨業界の動き
バイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)、クラーケン(Kraken)などの主要仮想通貨取引所は、今のところロシアのユーザーに対しての全面的な取引禁止は避けています。
しかしコインベースのCEO(最高経営責任者)ブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)氏は、「ロシアの通貨システムは崩壊してしまった今、ロシア国民のなかにはライフラインとして仮想通貨を使用している人もいる。彼らの多くは国家の方針に反対しており、取引禁止は彼らに大きなダメージを与えかねない。ただしアメリカ政府が禁止を決定するようならば、我々もその指示に従うことになるだろう」と述べて、必要に応じて仮想通貨業界が禁止措置に踏み切る可能性を示唆しています。
仮想通貨取引所は、現在制裁措置をくぐり抜けようとするアカウントをブロックしており、コインベースだけでもおよそ25,000のアカウントを遮断しているとのことです。1,700万を超えるロシア仮想通貨保有者からすれば、これは小さな数字に思えますが、もしもすべての主要取引所が禁止措置に踏み切ると、数百万という保有者が被害を受ける可能性があります。
2021年の調査レポートによれば、仮想通貨はロシア国内で5番目に人気のある投資資産であり、金の16%と株式の10%を超えて、全体の17%以上が仮想通貨に投資をしている状況です。
参考
・The reason why Bitcoin and crypto market at large is plummeting after a short-lived surge
・Analyst: Sanctions on Russia could push more people into crypto
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