
目次
この記事の結論
ストラテジー(旧マイクロストラテジー)のCEOフォン・レ氏とマイケル・セイラー会長が、MSCIによる暗号資産保有企業の指数除外提案に対し「深刻な有害な結果」をもたらすと強く反発。除外された場合、最大88億ドル(約1.3兆円)の資金流出リスクがあり、ビットコイン市場全体への影響が懸念されています。最終判断は2026年1月15日に下される予定です。
3つの重要ポイント
- MSCIが暗号資産保有50%超の企業を指数から除外する提案を検討中。ストラテジーは12ページの書簡で強く反対を表明。
- 除外された場合、JPモルガン試算で最大88億ドル(約1.3兆円)の資金流出の可能性。パッシブ運用ファンドへの影響が大きい。
- ビットコイン価格は10月の過去最高値12万6,000ドルから約9万ドルまで下落。市場は指数除外リスクを警戒。
MSCIの指数除外提案とは?背景と概要
この章でわかること: MSCIの提案内容、対象となる企業、除外基準の詳細
MSCIの提案内容
世界的な株価指数プロバイダーであるMSCIは2025年10月、「デジタル資産の保有額が総資産の50%を超える企業をMSCIグローバル・インベスタブル・マーケット・インデックスから除外する」という提案を発表しました。
MSCIは、このような企業が「事業会社というよりも投資ファンドに近い特性を持つ」との見解を示しており、現行ではインデックス採用対象外となっている投資ファンドと同様の扱いを検討しています。
対象となる主な企業
- ストラテジー(旧マイクロストラテジー):約66万BTCを保有(総資産の大部分を占める)
- ビットコインマイニング企業:クリーンスパーク社など、大量のBTCを保有するマイナー
- その他のビットコイントレジャリー企業:ストライブ社(7,500BTC以上保有)など
今後のスケジュール
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2025年12月31日 | 意見募集(パブリックコメント)期間終了 |
| 2026年1月15日 | MSCIによる最終判断の発表 |
| 2026年2月 | 変更が採用された場合、定期見直しで実施 |
ストラテジーCEOの反論と主張
この章でわかること: ストラテジー側の具体的な反論内容、他企業との比較、業界への影響
12ページの公式書簡で強く反発
ストラテジーのCEOフォン・レ氏と共同創業者マイケル・セイラー会長は、MSCIに対して12ページにおよぶ書簡を提出し、提案の撤回を求めました。
書簡の中で両氏は、MSCIがこの提案を採用した場合、「混乱、混迷」そして「深刻な有害な結果」が生じると警告しています。
ストラテジーの5つの主張
ストラテジーは自社が投資ファンドではないとする以下の理由を挙げています:
- 従来型の事業会社として組織されている(1989年創業、1998年上場)
- ファンドやETPのような構造や義務を有しない
- ビットコイン担保の信用商品を構築し、能動的な企業財務プログラムを管理
- グローバル企業向け分析ソフトウェア事業を運営(MicroStrategy ONE)
- 投資家が購入するのは「ビットコインを入れる器ではなく、同社の戦略と経営」
他業界との比較による反論
フォン・レCEOは、他の大手企業も資産の大部分を特定の資産クラスで保有しながら指数から除外されていない点を指摘しました。
| 企業名 | 主要保有資産 | 指数除外 |
|---|---|---|
| シェブロン | 石油(50%超) | されていない |
| ウェアーハウザー | 木材(大部分) | されていない |
| サイモン・プロパティ | 不動産(大部分) | されていない |
| ストラテジー | ビットコイン(大部分) | 除外検討中 |
レ氏は「石油を持つだけでシェブロンを排除するのと同じ」と述べ、暗号資産だけを差別的に扱う姿勢を批判しています。
市場への影響と資金流出リスク
この章でわかること: 想定される資金流出規模、ビットコイン価格への影響、市場の反応
JPモルガンの試算:最大88億ドルの資金流出
JPモルガンのアナリストは、MSCI指数からの除外が及ぼす影響について以下の試算を発表しています。
| シナリオ | 想定資金流出額 |
|---|---|
| MSCI指数のみ除外 | 約28億ドル(約4,400億円) |
| 他の指数プロバイダーも追随 | 最大88億ドル(約1.3兆円) |
ストラテジーの時価総額約500億ドルのうち、約90億ドル(約18%)がパッシブファンド経由の投資とされており、指数除外による影響は甚大です。
ビットコイン価格の現状
2025年12月現在、ビットコイン価格は厳しい局面を迎えています。
- 2025年10月の過去最高値:約12万6,000ドル
- 2025年12月現在:約9万ドル前後(高値から約30%下落)
- 円建て:約1,300〜1,400万円台で推移
市場ではビットコイン価格の下落よりも、指数除外による売り圧力を警戒する動きが強まっているとの指摘もあります。
ナスダック100は当面残留
一方で明るいニュースもあります。ナスダックはストラテジーをナスダック100指数に今後12カ月間残留させることを確認しています。この決定は2025年12月22日に発効予定で、当面の安心材料となっています。
今後の見通しと投資家への影響
この章でわかること: 専門家の見解、長期的な影響、投資家が注目すべきポイント
専門家の見解
CryptoQuantのCEO Ki氏:「マイクロストラテジーが破綻するのは小惑星が地球に衝突するときくらいだ」と述べ、現段階でビットコインが破綻水準まで下落する可能性は低いとの見方を示しています。
JPモルガンのアナリスト:ストラテジーの企業価値対ビットコイン保有比率(mNAV)が1.13と1を上回っている点を「心強い」と評価。配当や利息支払いのためにビットコインを売却する圧力は低いとしています。
ブロックストリームCEO アダム・バック氏:「我々はまだビットコイン採用の非常に初期段階にあり、最終的にはすべての企業がビットコイン保有企業になるだろう」と長期的な見通しを示しています。
ストラテジーの長期戦略
ストラテジーは2065年までビットコインを保有継続する姿勢を示しており、短期的な価格変動に一喜一憂しない長期投資戦略を採用しています。
- 現在の保有量:約66万BTC(ビットコイン総供給量の3%超)
- 評価額:約630億ドル(約9.1兆円)
- 平均取得単価:約6万ドル(現在も大きな含み益を維持)
よくある質問(FAQ)
Q1. MSCIとは何ですか?
MSCIは世界的な株価指数やESG指数を提供するインデックスプロバイダーです。機関投資家向けベンチマークと分析ツールを展開しており、MSCIの指数に連動するパッシブファンドは世界中で数兆ドル規模の資産を運用しています。
Q2. 指数から除外されるとどうなりますか?
MSCIなどの指数に連動するインデックスファンドやETFは、指数の構成銘柄を機械的に保有します。そのため、ある企業が指数から除外されると、これらのファンドはその企業の株式を自動的に売却することになり、株価に大きな下落圧力がかかります。
Q3. ビットコイン価格への直接的な影響は?
ストラテジーが指数から除外されても、同社が直ちにビットコインを売却する必要はありません。ただし、株価下落による企業価値の低下や、資金調達環境の悪化が間接的にビットコイン市場に影響を与える可能性があります。
Q4. いつ最終判断が下されますか?
MSCIは2025年12月31日まで意見募集を行い、2026年1月15日に最終判断を発表する予定です。変更が採用された場合、2026年2月の定期見直しで実施されます。
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まとめ
ストラテジーCEOのフォン・レ氏とマイケル・セイラー会長は、MSCIによる暗号資産保有企業の指数除外提案に対し、12ページの書簡で強く反対を表明しました。
主なポイントは以下の通りです。
- MSCIは暗号資産保有50%超の企業を指数から除外する提案を検討中
- 除外された場合、最大88億ドル(約1.3兆円)の資金流出リスク
- ストラテジーは「他業界との差別的扱い」として反発
- 最終判断は2026年1月15日に発表予定
- ナスダック100には当面残留が確認済み
投資家は2026年1月15日のMSCIの最終判断に注目しつつ、ビットコイン市場全体への影響を慎重に見極める必要があります。
参考資料・出典
- Forbes JAPAN「ビットコイン価格予測の見直しが続く中、ストラテジーCEOが厳しい懸念を表明」(2025年12月13日)
- CoinDesk JAPAN「ストラテジー、MSCI指数からの暗号資産財務企業除外に反論」(2025年12月11日)
- CoinPost「ストラテジー社に指数除外リスクか、最大1.3兆円流出の可能性」(2025年11月)
- Bloomberg「暗号資産大量保有企業のMSCI指数除外案、米ストラテジー創業者が批判」(2025年12月11日)
- Cointelegraph「ストラテジーCEO、MSCIの仮想通貨企業除外案に反論」(2025年12月11日)