テラの崩壊から改めて学ぶ仮想通貨のこと

テラUSD(UST)はアルゴリズムに基づいたステーブルコインのブロックチェーンプロジェクトであり、市場価格で第4位を誇る人気のステーブルコインでした。しかし現在は、1ドルの価値を維持することに繰り返し失敗したことで崩壊の危機を迎えています。ネイティブトークンのルナ(LUNA)の価値もほとんどゼロにまで暴落しました。

攻撃を仕掛けられる可能性によりネットワーク停止

USTを管理するテラフォームラボ(Terraform Labs)は、深刻なLUNAのインフレと攻撃コストの低下が引き起こすガバナンス攻撃を防ぐために、5月12日に新たなブロックの生成をストップしました。

ガバナンスの攻撃者は、無価値に近いほど安価になったLUNAを十分な額手に入れ、ネットワーク上の多数決の原理により、より容易に攻撃することができるようになりました。これはLUNAがビットコイン(BTC)のようにプルーフオブワーク(PoW)ではなくPoS(プルーフオブステーク)を採用しているためで、通貨の所有者は相応の影響力を得ることができるからです。ビットコインではこのような状況は生まれません。

このようにUSTとビットコインとの間には、ネットワークの仕組みに関する大きな違いがあり、USTでは少数の所有者が影響力を持つだけで、ネットワークがストップする危険性があるのに対し、完全な分散化に基づいたビットコインでは同様の危機は生じないのです。

USTはどのような原理で稼働するのか?

ステーブルコインは、米ドルのような法定通貨と1対1の等価値を持つように設計されています。テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)が市場のけん引役として、最も人気があり広範囲で使用されています。しかしこれらは中央の運営主体により発行やバーンが行われていて、通貨価値を保証する米ドルとの等価性も維持されています。

一方でUSTの発行やバーンは、アルゴリズムに基づいたプログラムで、自動的に行われることを前提にしています。1USTは常に、1ドルと等価値のLUNAと交換できることが約束されていて、LUNAの価値は需要と供給のバランスにより変動します。USTのペグ(法定通貨との連動)がプラスに傾くと、アービトラージャーは1ドル相当のLUNAと1USTを交換して利益を得られます。反対にマイナスに傾くと、トレーダーが1USTと1ドル相当のLUNAを交換して利益を得ることができます。

この状況でビットコインに何ができるのか?

2022年のはじめにテラフォームラボの創業者ド・クォン(Do Kwon)氏が、USTの準備金として100億ドル(約1兆3,000億円)相当のビットコインを取得すると公言して以来、ビットコインコミュニティーの間でUSTの認知度が高まりました。

一方ここ数年で、ビットコインに対する企業の資産割当が増加しています。例えばマイクロストラテジー社(MicroStrategy)が継続的にビットコインを購入している事例や、暗号資産(仮想通貨)プロジェクトが裏付け資産としてビットコインを購入する事例などです。こうした動きはコミュニティーの間でも賛否が分かれています。

当初からUSTのペグを維持するためのアルゴリズム戦略については持続可能性を疑問視する声もありました。当事者のテラフォームラボでさえ、アルゴリズムによるステーブルコインのペグの難しさを認識していたほどです。

テラフォームラボは、広範な仮想通貨エコシステムにおいて、テラのステーブルコインに十分な需要があるかどうかも議論していました。この解決策としてビットコインの購入があり、USTのペグの持続可能性を高める狙いがあったわけです。

テラはどのように崩壊したのか?

USTの崩壊は、短期的なストレスを支えきれないデザインに問題があったようです。USTのペグがマイナスに傾くと、USTを手放したり交換したりする動きが一気に高まり、結果的にはLUNAに対する圧力が大きくなります。するとトレーダーは、手持ちのUSTを1ドル相当のLUNAと交換して切り抜けようとします。しかし切り下げのペースが速すぎることと、あまりにも多くのUSTが移動することにより、LUNAへの交換が追いつかなくなってしまいました。

最終的にはオンチェーンのスワップスプレッドは40%にもなり、支えきれないほどの圧力によってLUNAとUSTの価格は急激に下落して、デススパイラルに陥ったのです。

今回のUSTとルナの騒動は、アルトコインのプロジェクトは未だ実験的なものがあることを再認識させられる事例となったのではないでしょうか。

参考
WHAT TERRA’S COLLAPSE TEACHES ABOUT ‘CRYPTO’ AND BITCOIN

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