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※本記事は、2026年9月1日時点で確認できた金融庁、SBIホールディングス、SBI新生信託銀行、SBI VCトレードなどの公開情報をもとに作成しています。
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金融庁が、信託型ステーブルコインをめぐる税務手続きの見直しを求めています。
金融庁は2026年8月31日、令和9(2027)年度の税制改正要望を公表しました。
「金融イノベーションの推進」の項目として盛り込まれたのが、特定信託受益権、いわゆる信託型ステーブルコインに係る税務書類の提出義務の見直しです。
現在の制度では、信託の受益者が変わった場合などに、受託者が「信託に関する受益者別調書」や「信託の計算書」などを税務署へ提出する仕組みがあります。
しかし、信託型ステーブルコインは、不特定多数の利用者間を転々と流通し、頻繁かつ多数の取引に利用されることが想定されています。
そのため、受託者である信託銀行等が、ステーブルコインを保有する受益者の氏名やその変更を把握することは難しくなります。
さらに金融庁の資料では、受益者が信託型ステーブルコインを保有することによって収益を得ることも想定されていないと説明されています。
そこで金融庁は、特定信託受益権について、こうした書類の提出を不要とするなどの措置を求めました。
ただし、今回のニュースを「ステーブルコインを使う人の税金が安くなる」と捉えるのは正確ではありません。
今回見直しが求められているのは、主に受託者に求められる税務書類の提出制度です。
では、この改正が実現すると、日本のステーブルコインは本当に使いやすくなるのでしょうか。
この記事では、金融庁の税制改正要望の内容と、国内でステーブルコインを利用する人や事業者にどのような変化が考えられるのかを解説します。
目次
- 1 金融庁が信託型ステーブルコインの税務手続き見直しを要望
- 2 そもそも信託型ステーブルコインとは?
- 3 なぜ従来の税務手続きと相性が悪い?
- 4 利用者の税金が安くなるわけではない
- 5 日本のステーブルコインは使いやすくなる?
- 6 JPYSCは現在、外部ウォレットへ出庫できない
- 7 JPYSCなら100万円を超える送金も可能?
- 8 外国発行の信託型ステーブルコインについても税制整備を要望
- 9 【独自視点】日本の課題は「発行できるか」から「実際に流せるか」へ
- 10 税制改正要望はまだ決定ではない点に注意
- 11 自分に合う国内仮想通貨取引所を診断
- 12 まとめ:税金が安くなるのではなく「流通の壁」を減らす改正
- 13 出典・参考
金融庁が信託型ステーブルコインの税務手続き見直しを要望
金融庁は8月31日に公表した令和9年度税制改正要望で、「金融イノベーションの推進」の主な要望として「特定信託受益権(信託型ステーブルコイン)に係る所要の措置」を挙げました。
対象となるのは、特定信託受益権に該当する信託型ステーブルコインです。
現行の相続税法では、信託の効力が生じた場合や受益者等が変更された場合などに、受託者は受益者等の氏名や信託財産の価額などを記載した「信託に関する受益者別調書」を税務署長へ提出する仕組みがあります。
所得税法でも、受益者等の氏名や信託財産に帰せられる収益・費用などを記載した「信託の計算書」等の提出が求められます。
通常の信託であれば、受託者が受益者を把握することを前提にこうした仕組みを運用できます。
ところが、信託型ステーブルコインでは事情が異なります。
金融庁は、信託型ステーブルコインについて、法定通貨と価値が連動する決済手段として不特定多数の利用者間を転々流通し、頻繁かつ多数の取引に利用されることが想定されると説明しています。
利用者Aから利用者B、さらに利用者Cへ移転していけば、受益者も次々と変わっていきます。
こうした仕組みでは、受託者が受益者の氏名やその変更を把握することが難しくなります。
また、受益者が信託型ステーブルコインを保有することによって収益を得ることも想定されていません。
金融庁は、こうした信託型ステーブルコインの性質を踏まえ、受益者等の変更などに伴う受益者別調書や信託の計算書について、提出を不要とするなどの措置を要望しています。
そもそも信託型ステーブルコインとは?
ステーブルコインとは、円や米ドルなどの法定通貨と価値が連動するよう設計されたデジタルな決済手段などの総称です。
日本では、一定の法定通貨連動型ステーブルコインが資金決済法上の「電子決済手段」として扱われています。
BTCやETHなどの暗号資産は市場の需給によって価格が大きく変動しますが、円建てステーブルコインであれば、基本的には1コイン=1円など一定の交換価値を維持することを目指します。
その一つが「特定信託受益権」を利用した信託型ステーブルコインです。
信託銀行等が信託財産を管理し、その信託受益権を電子的に移転できる仕組みを利用します。
国内では2026年6月24日、SBI新生信託銀行が発行する信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供が開始されました。
SBIグループによると、資金決済法上の「電子決済手段」として取り扱われる円建てステーブルコインのうち、信託型スキームによる発行として国内初です。
JPYSCはSBI新生信託銀行を受託者、SBI VCトレードを委託者兼当初受益者とする円建ての特定信託受益権です。
なぜ従来の税務手続きと相性が悪い?
今回の税制改正要望を理解するポイントは、信託型ステーブルコインが「保有し続ける金融商品」というより、不特定多数の間を移転する決済手段として使われることが想定されている点です。
通常の信託であれば、受益者が頻繁に入れ替わるケースばかりではありません。
一方、ステーブルコインが決済や企業間送金などに利用されれば、短期間に何度も保有者が変わる可能性があります。
例えば、ある企業が取引先へステーブルコインを送金し、受け取った企業が別の取引先への支払いに同じステーブルコインを利用するといった使い方です。
この仕組みに従来の信託向け税務手続きをそのまま当てはめると、次のような問題が生じます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常の信託 | 受託者が受益者等を把握することを前提に税務書類を作成 |
| 信託型ステーブルコイン | 不特定多数の利用者間を頻繁に移転することが想定される |
| 実務上の問題 | 受託者が受益者の氏名やその変更を把握することが難しい |
| 金融庁の要望 | 一定の場合の受益者別調書や信託の計算書を提出不要とするなどの措置 |
つまり、今回の見直しは「ステーブルコインだから税制を優遇する」というより、既存の信託向け税務制度と、不特定多数の利用者間を移転するデジタル決済手段とのミスマッチを解消するための見直しと考えた方が分かりやすいでしょう。
利用者の税金が安くなるわけではない
「金融庁がステーブルコインの税制改正を要望」と聞くと、利用者にかかる税率が下がったり、ステーブルコインの取引が非課税になったりすると考える人もいるかもしれません。
しかし、今回公表された要望はそうした内容ではありません。
中心となっているのは、信託型ステーブルコインについて受託者に求められる法定調書等の提出制度を見直すことです。
そのため、今回の要望が実現したとしても、それだけで「ステーブルコインを利用すれば税金がかからなくなる」「個人の確定申告が不要になる」といったことにはなりません。
利用者自身に生じる所得や、ステーブルコインを利用した個別の取引に関する税務上の取扱いは、今回の法定調書提出義務とは別の論点です。
日本のステーブルコインは使いやすくなる?
では今回の税制改正要望が実現した場合、利用者には何も影響がないのでしょうか。
直接的に利用者の税負担を減らす制度ではありませんが、信託型ステーブルコインを広く流通させる際の税務実務上の障壁が一つ減る可能性があります。
ステーブルコインをパブリックチェーン上で広く流通させるためには、法律上発行できる制度だけを整えても十分ではありません。
不特定多数の間を移転するたびに、受託者側で現実的に対応することが難しい税務手続きが発生するのであれば、広く流通させるうえで課題になります。
今回の要望によってこうした税務実務の一部が整理されれば、信託型ステーブルコインを実際に流通させるための制度環境が前進する可能性があります。
利用者から見ると「税金が安くなる」というより、「ステーブルコインを実際に使える環境を整えるための制度上の壁が一つ見直されようとしている」と考える方が近いでしょう。
JPYSCは現在、外部ウォレットへ出庫できない
今回の税制改正要望を考えるうえで注目したいのが、国内ですでに信託型ステーブルコインの提供が始まっていることです。
SBIグループとStartale Groupは2026年6月24日、信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供を開始しました。
ただし、2026年9月1日時点ではSBI VCトレードの口座内限定で提供されており、外部ウォレットへの出庫には対応していません。
SBI VCトレードは、信託型ステーブルコインをパブリックチェーン上で流通させるための関係法令・税務実務上の取扱いが整理され次第、監督当局の確認を前提として、国内外でパブリックチェーン上の流通を可能とする体制への移行を目指すとしています。
つまり、国内ではすでに信託型ステーブルコインを発行・提供する段階には進んでいるものの、自由にブロックチェーン上を移転できるようにするためには、なお法令や税務実務の整理が必要です。
今回の金融庁による要望も、信託型ステーブルコインを広く流通させた場合に生じる税務上の課題を見直そうとする動きです。
ただし、今回の税制改正要望はJPYSCだけを対象としたものではありません。
税制改正が実現しただけでJPYSCの外部出庫やパブリックチェーン流通が自動的に始まるわけではなく、SBI側も関係法令・税務実務上の取扱いの整理と監督当局の確認を前提としています。
SBI VCトレード
SBI VCトレードでは、信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」を取り扱っています。
2026年9月1日時点ではSBI VCトレード内での提供となっており、JPYSCの入出庫には対応していません。
今後のパブリックチェーン上での流通状況については、公式サイトで最新情報を確認してください。

JPYSCなら100万円を超える送金も可能?
ステーブルコインをめぐっては、「100万円」という数字が紹介されることがあります。
ただし、すべての日本円ステーブルコインに一律で「100万円まで」という上限が設定されているわけではありません。
SBIグループは、JPYSCについて、先行する資金移動業型のステーブルコインとは異なり、滞留や送金にかかる100万円の制限を受けないと説明しています。
また、第3号電子決済手段の特徴として、金額の制限なく1回あたりの送金や移動ができ、口座内の残高についても金額制限がないとしています。
そのためSBIグループは、パブリックチェーン移行後の用途として、大口の資金移動やオンチェーン金融市場での決済などを想定しています。
ただし、2026年9月1日時点ではJPYSCの外部への入出庫自体が開始されていません。
また、今回の税制改正要望は100万円の金額制限を撤廃するための制度ではありません。
今回見直しが求められているのは、信託型ステーブルコインを不特定多数へ流通させた場合などに受託者へ生じる法定調書等の提出義務です。
JPYSCが100万円の制限を受けないことと、今回の税務書類の見直しは別の論点として考える必要があります。
外国発行の信託型ステーブルコインについても税制整備を要望
今回の令和9年度税制改正要望では、国内の特定信託受益権とは別に、外国発行の信託型ステーブルコインに関連する項目も盛り込まれました。
金融庁は「その他の要望項目」として、「一定の外国発行の信託型ステーブルコインを電子決済手段として規定することに伴う所要の措置」を挙げています。
日本では2026年6月1日から、我が国の電子決済手段に関する法制度との同等性が確保された外国の法令に基づく一定の信託受益権を、電子決済手段として規定する制度改正が施行されています。
金融庁はこの改正について、一定の外国の信託銀行等が発行する信託受益権方式のステーブルコインについて、国内で決済手段として取り扱えることを明確にするためのものと説明しています。
今回の税制改正要望でも外国発行の信託型ステーブルコインに関する項目が盛り込まれており、国内発行だけでなく、海外で発行されたステーブルコインを国内で取り扱うための制度整備も続いていることが分かります。
【独自視点】日本の課題は「発行できるか」から「実際に流せるか」へ
今回のニュースをCoinChoice独自の視点で見ると、日本のステーブルコインをめぐる課題が「法律上発行できるか」という段階から、「発行したステーブルコインを実際に広く流通させられるか」という段階へ移り始めている点に注目したいところです。
日本では2023年6月から、法定通貨連動型ステーブルコインなどを「電子決済手段」とする制度が始まりました。
2026年6月には信託型円建てステーブルコインJPYSCも実際に提供開始されています。
さらに2026年6月1日からは、電子決済手段等取引業者や暗号資産交換業者の委託を受け、電子決済手段や暗号資産の売買・交換の媒介を行う「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の制度も開始されました。
制度だけを見ると、国内でステーブルコインを発行・取り扱うための土台は少しずつ整ってきています。
ところが、実際に不特定多数の利用者へ流通させようとすると、従来の信託を前提に作られた税務制度との間に新たな問題が生じます。
JPYSCが現在SBI VCトレードの口座内限定で提供され、関係法令や税務実務上の取扱いが整理されてからパブリックチェーンへの移行を目指していることも、実利用までには制度面の整理が必要であることを示しています。
今回の税制改正要望が重要なのは、「新しい税制優遇が受けられるから」ではなく、すでに発行できるようになった信託型ステーブルコインを実際に流通させる際の制度上の問題を整理しようとしている点です。
今後、日本のステーブルコイン市場を見る際には、新しいコインが発行されたかだけではなく、「外部ウォレットへ送れるのか」「パブリックチェーン上を流通できるのか」「実際の決済やオンチェーン取引に使えるのか」といった実利用の部分にも注目する必要がありそうです。
税制改正要望はまだ決定ではない点に注意
今回公表されたのは、金融庁による令和9年度の「税制改正要望」です。
2026年9月1日時点で、信託型ステーブルコインに関する法定調書等の提出義務がすでに廃止されたわけではありません。
今後、税制改正に向けた議論などを経て、実際にどのような措置が講じられるかが決まります。
また、税務手続きが整理されたとしても、国内のステーブルコインがすぐに一般店舗などで広く利用できるようになるとは限りません。
実際に利用を広げるには、対応するウォレットや取引サービス、決済システム、オンチェーン上のサービスなどの整備も必要です。
制度改正は重要な一歩ですが、「制度上流通しやすくなること」と「私たちが日常的に使えるようになること」は分けて確認した方がよいでしょう。
自分に合う国内仮想通貨取引所を診断
国内取引所は、売買方法、取扱銘柄、手数料、最低注文金額、積立や運用サービスなどが異なります。
どの取引所が自分に合うか迷っている場合は、暗号資産をどのように購入・保有したいのかを整理したうえで比較してみましょう。

まとめ:税金が安くなるのではなく「流通の壁」を減らす改正
金融庁は2026年8月31日、令和9年度税制改正要望で、信託型ステーブルコインに関する法定調書等の提出制度を見直すよう求めました。
信託型ステーブルコインは不特定多数の利用者間を頻繁に移転することが想定され、受託者が受益者の氏名やその変更を把握することが難しいためです。
また金融庁は、受益者が信託型ステーブルコインを保有することによって収益を得ることも想定されていないとしており、一定の場合について受益者別調書や信託の計算書を提出不要とするなどの措置を求めています。
今回の見直しは、ステーブルコイン利用者の所得税率を引き下げたり、ステーブルコインそのものを非課税にしたりする要望ではありません。
一方で、信託型ステーブルコインを流通させる際の税務実務が整理されれば、実際にパブリックチェーン上で利用するための制度上の障壁が一つ減る可能性があります。
SBI新生信託銀行が発行するJPYSCも、2026年9月1日時点ではSBI VCトレードの口座内限定となっており、関係法令や税務実務等が整理された後のパブリックチェーン流通を目指しています。
今回の税制改正要望は、「ステーブルコインを持つと税金で得をする」というニュースではなく、「日本で信託型ステーブルコインを実際に流通させるうえで生じている制度上の問題を見直す動き」と捉える方が適切です。
日本のステーブルコインが本当に使いやすくなったかを判断するには、税制改正の行方だけでなく、JPYSCなどが外部ウォレットへ送れるようになるのか、パブリックチェーン上の決済やサービスで実際に利用できるようになるのかも確認する必要があります。
出典・参考
- 金融庁「金融庁の令和9年度税制改正要望について」2026年8月31日
- 金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」
- 金融庁「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令等の公布及びパブリックコメントの結果等について」2026年5月19日
- 金融庁「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業を行うみなさまへ」
- SBIホールディングス「国内初の信託型円建てステーブルコイン『JPYSC』の提供開始に関するお知らせ」2026年6月24日
- SBI新生信託銀行「ステーブルコイン JPYSC」
- SBI VCトレード「JPYSC」
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