ソラナ(Solana)がブロックチェーン上にテザー社のステーブルコインUSDTをローンチしたことを発表しました。今回のソラナとの統合発表により、USDTはイーサリアム、EOS、Algorand、Liquid Network、Omni、Tron、Bitcoin Cash’s Standard Ledger Protocolの8つのチェーンをサポートすることになります。
ソラナはFTXに支えられたクロスチェーン可能な分散型取引所セラム(Serum)のローンチをはじめ、シームレスな鍵管理システムを実現するトーラス(Torus)、分散型オラクルのチェーンリンク(Chainlink)などとの統合計画を進めており、「超高速レイヤー1」というソラナの性質を活かしたDeFiエコシステム構築の道を着実に歩んでいます。
DeFi(分散型金融)領域に力を入れる新興ブロックチェーンであるソラナにとって、今回のUSDT統合は今後のDeFiエコシステム構築に大きな意味を持つ出来事です。今回はDeFi領域におけるUSDTについて解説します。
ソラナについて基礎的な情報はこちらの「Solanaとは?秒間5万トランザクションを処理できるブロックチェーン」で紹介しています。
DeFi領域におけるUSDTの存在感
USDTをはじめとする米ドル価格に連動するステーブルコインは、数年前は暗号資産取引時の一時的なリスクヘッジ先、つまり暗号資産の不確実性を吸収するものとして用いられることが多いという印象でした。しかし、昨今のDeFi領域の高利回りを期待して分散型貸付プロトコルの担保資産やAMM(自動マーケットメイカー)に対する流動性提供等に用いられる機会が増加するようになりました。
参照:CoinGecko
まずステーブルコインという領域でUSDTがどれほどの存在感を持つのか、その立ち位置を見てみましょう。(上図表参照)
執筆時点でのステーブルコイン25種全体の時価総額はおよそ180億ドルです。そのうち140億ドル、つまり全体の8割はUSDTが占めており、2番手であるUSDCの時価総額およそ18億ドルと、その差を大きく開いてステーブルコインの中でUSDTが圧倒的な存在感を示していることが分かるでしょう。
参照:COINMETRICS
上図表は現在の主要DeFiプラットフォームであるイーサリアム上で流通しているステーブルコインのボリュームを示しています。USDTは9月9日時点でおよそ88億ドルです。2020年初旬から急激に供給量が増加し始め、今夏のDeFiの盛り上がりに比例するかのように供給量をさらに増加させています。
ブロックリサーチ(The Block Research)によると、9月9日時点での主要DeFiプロトコル(Uniswap、Aave、Curve)にロックされているUSDTの合計は8.63億ドルと、DeFi領域で最も使用されているステーブルコインの一つになっています。
ソラナに期待、DeFiの発展の障害となる要素の解決策に
今回の発表でテザー社も触れているように、ソラナは毎秒50,000トランザクションを超える速度で(多くの場合、トランザクションあたり0.00001ドル未満で)USDT取引を可能にします。イーサリアムの現在の容量は1秒あたり約15トランザクションであり、現在の平均取引コストはトランザクションあたり約2.65ドルです。
「取引速度」と「コスト」の2つの要素は、今後DeFi領域がさらなる発展を遂げる上での大きな障害となることは明らかであり、その課題を解消する手段としてソラナブロックチェーンに期待できることはあるでしょう。ソラナは2020年にメインネットベータをローンチしたばかりの新興のブロックチェーンではありますが、今回のような既存の大きなプレイヤーも惹きつけてながら着実にそのエコシステムを拡大させており、今後のDeFiエコシステムでその認知度を高めていく可能性はあるでしょう。