ブロックチェーン学習サービス「PoL」を開発する田上社長が目指す学習歴社会の実現

ブロックチェーンに関してオンライン学習ができるサービス「PoL(ポル)」が、6月13日に「PoLトークン」をリリースしました。学習するほどトークンがもらえるというコンセプトの基に開発された「PoL」について、そのトークンが必要な理由やサービスが作られた背景など、techtec(テックテク)株式会社代表取締役の田上智裕社長にお話を聞かせていただきました。

「PoL」の開発経緯と今後の行方

コインチョイス編集部(以下、編):どうして「PoL」を作ろうと思ったのですか?
田上智裕社長(以下、田上氏):開発の背景として、リクルートという会社でブロックチェーン関連業務を1年半やっていましたが、ビジネスモデルが「リボン図」という中央に集約していく仕組みであるため、非中央集権を掲げるブロックチェーンとの相性が良くありませんでした。

ブロックチェーンはエンジニアファーストで進んでいるものの、既存事業の場合は意思決定者がビジネスサイドの人たちで決まっており、ブロックチェーンへの知識がなければ、受け入れられることが難しい状況なんですよね。

そこで、ビジネスサイドの方々にブロックチェーンの知識を学んでもらえる機会を作るために、ビジネス向けの学習サービスを作ろうとしたのが、主なきっかけです。

編:このような学習サービスを作ろうとお考えになったエピソードなどありますか?
田上氏:「PoL」を開発する前は、ブロックチェーン業界向けメディアとライターのマッチングサービスを作ろうと考えていたのですが、ライターの質を担保できなかったため、それならライターが学習できる環境を用意したいと考えました。

ブロックチェーンのことは詳しいけれど、ライティング技術が不足していたり、その逆にライティングは問題ないものの、ブロックチェーンの知識が不足していて、内容が薄くなったりしてしまうことがあります。「PoL」は、そのギャップを埋められるものになるようにしたいですね。

田上社長インタビューその2

編:現状のブロックチェーンの学習の問題はどのようなところにあると思いますか?
田上氏:ブロックチェーンの業界では、これまでずっとブロックチェーンに触れ、親しんできた人と、最近になって関わり始めた人の知識の差が大きく開いてしまっていると思うんです。断片的な情報から理解を少しずつ深めることもできますが、本当に初めての人にいきなり、アルゴリズムの問題点やアルトコインの技術の話をしても分からないですよね。

メディアが発信する情報はフロー型となり、流れていくだけで勉強にはなりません。なので、体系的な学習形態がないのが、問題だと思いました。「PoL」はそんな環境において、カリキュラムに沿ってやっていけば理解が深められるように作っています。

編:ブロックチェーンのカリキュラムはどんな人が作っているのですか?
田上氏:基本的に、私ひとりで作成しています。ただ、税金などの問題については、税務大学校で税務を教えられている安河内誠氏と共にコンテンツを作成させてもらいました。今後も活用事例として、各国のブロックチェーンプロジェクトと連携して、ブロックチェーンで何ができるのかといったコンテンツを一緒に作っていきたいとは考えています。

編:現在HP上にある4つのコース(ビジネス、ライター、エンジニア、英語)以外にどのようなコンテンツを作っていこうと思われますか?
田上氏:ベースになる仮想通貨とブロックチェーンの基礎的なコンテンツは既に提供していて、その先につながるコンテンツを作成していこうとは思っています。現在はブロックチェーン業界に特化した英語のコーチングをリリースしていて、次はライターコース、そしてビジネスコースもリリースする予定です。

また、エンジニアのコースに関しては、ブロックチェーン業界に向けたものを作っていくつもりですが、既にサービスが多くあるため、今はビジネス・ライターコースへの注力をしようと思っています。

編:「uPort」や「e-scroll」など既存の学歴証明システムとの決定的な違いとはなんでしょうか?
田上氏:これまでの学歴証明システムだと、卒業したかどうかという事柄のみを担保するシステムになっています。それに対して、「PoL」では学習履歴も残し、その経過に基づいて卒業しているという証明を残せるサービスを目指しました。

「オラクル問題」に関係しますが、記録する予定の卒業証明書がそもそも間違ったまま、ブロックチェーンに記録されてしまうと、それが正しいものとして残ってしまいます。「PoL」は、その問題を解決するため、まずは卒業証明書の担保をしなければいけないという考えを持って開発しています。

編:アプリでのリリース予定はないのでしょうか?
田上氏:ブロックチェーン業界だと、やはり非中央集権への意識が強く、AppleやGoogleを通してリリースしてしまうと、それは中央集権的であって、非中央集権であるという仮想通貨の根底の考え方が揺らいでしまうような気がしています。

しかし、ユーザーファーストを掲げているため、使いやすさを考えれば、アプリケーションであった方がいいという声もあるので、難しいところではありますね。

ただ、Progressive Web App というWeb上でアプリケーションのように動かせる技術もあるため、そういった方向性は視野に入れて、開発を進めていきます。

田上社長インタビューその2

学習経過の価値を保存するシステムとは?

編:「PoLトークン」とは、どのようなものですか?
田上氏:他にないスキームでやっているもので、現状で明言することはできませんが、一旦はPoLの中で閉じたものになります。仮想通貨やLINEコインのような存在でもなく、また買い物で付くポイントとも、また違います。一言で表すには非常に難しいですが、ユーザーのステータスを示す指標になるものと捉えてください。

編:イーサリアムなどのプラットフォーム型をベースとしたトークンなのでしょうか?それとも独自のブロックチェーンプラットフォームを構築して発行されているものなのでしょうか?
田上氏:今はまだブロックチェーンで作成されているものではありません。現状の選択肢としてはイーサリアムのERCトークンに移行するのも考えられますが、これからのことを考えると、よりよい選択肢が出てくるかもしれないとは思っています。

編:「PoLトークン」は有料コンテンツへの支払いに利用可能となるとのことですが、それ以外の用途も追加されていくのでしょうか?
田上氏:トークンの価値を上げていくとなると、需要を取らなくてはいけないので、これから方法を検討していきます。想定ですが、「PoLトークン」は学習するほど貯まるものであるため、保有量が多い人ほど、学習量が多いという証明になります。例えば、転職サービスの指標のひとつとして用いられたり、ライターコースと連携して、保有量が多い人ほど依頼が増えるような仕組みなどができるかもしれません。

編:トークンが支払いに用いられると保有量の減少が起こりますが、「知識の証明」への影響はないのでしょうか?
田上氏:トークンは2種類用意しようと考えています。内部ではストック型とフロー型と呼んでいますが、この2種類のトークンは、学習するごとに両方が貯まっていき、学歴を証明するためにはストック型トークンの保有量を参照し、支払いについてはフロー型トークンを用いる仕組みにする予定です。

編:そのフロー型トークンは外部の支払いにも用いることはできるのですか?
田上氏:すでに提携先として、いくつかご相談させてもらっているところもあります。ただ、外部で使うとなると、諸々の法律が関わってくるので、その点については、弁護士と話し合いながら進めていきます。

編:「PoL」が目指す学習歴社会とは、どのようなものですか?
田上氏:日本は学歴社会という文化が根強く、良いとされる大学に入った人は卒業後も評価されるのが一般的になっています。スポーツを頑張った人や、エンジニアのように専門的技能を高めた人など学歴だけでは推し測れない能力もあります。そこで、学歴による判断だけでなく、そういった人たちが正しく評価されるような社会を実現したいと思います。

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