本記事では安価で高速なブロックチェーンを標榜するソラナ(Solana)のエコシステム近況を共有します。Solanaは新興のスマートコントラクトプラットフォームで、トランザクションの実行にかかる手数料が安く、またトランザクションが完了するまでの時間が早いことからDEX(分散型取引所)をはじめとするアプリケーションの基盤として注目されています。
最近の主な出来事としては、コミュニティ投票によってステーキング報酬が実装されたこと、DEXを開発するレイディウム(Raydium)がSolanaエコシステムに加わったこと、ブロックチェーン上のデータプロバイダーであるThe Graphが将来的なSolanaのサポートを発表したことが挙げられます。
ステーキング報酬
Solanaが採用するオンチェーンガバナンスの仕組みではSOLトークンの保有者がブロックチェーン上で透明性を保ったまま投票を行うことが可能で、今回は保有者による投票によって民主的にステーキング報酬の導入が可決された形です。
SolFlareというステーキング機能をサポートするウォレットを利用することで、ユーザーはSOLのステーキングに参加し、報酬を得ることが可能となります。SolFlareはLedger NanoやSolFlareのキーファイルから利用することが可能です。SOLの新規発行に伴うインフレ率は初年度の8%を基準として毎年15%ずつ下落していく仕様となっています。最終的にはインフレ率1.5%で固定され、ネットワークの保守運営に関わるバリデーターへのインセンティブを確保し、ネットワークへの攻撃コストを高め、セキュリティを強固なものとすることを目的としています。現時点で2.4億SOLがステークされています。
The Graphのサポート
The Graphはイーサリアム(Ethereum)をはじめとするさまざまなプラットフォームのデータを提供しており、The Graph自体もGRTという独自トークンを核とし、分散的に運用されているプロジェクトです。
The Graphは将来的なSolanaのサポートを表明し、APIを通じたより簡単で利便性の高いデータ提供を可能とします。The GraphによってSolanaがサポートされることで、Solanaの開発者は自分たちのプロダクトの開発に専念することができ、より効率的な開発が可能となります。
Raydiumの加入
RaydiumはSolana上で構築されるAMM(Automated Market Maker)で指値注文をサポートしています。通常、ブロックチェーン上に構築される分散型取引所で指値注文やオーダーブックを実現させるには技術的な工夫が必要となりますが、Solanaのような安価で高速なブロックチェーンを使うことで、これを可能としています。
RaydiumはFTXが開発しているSerumのようなオンチェーンのオーダーブックに紐付けられた形でトークンの交換が可能で、これによってSerumとRaydiumの両方のプラットフォームでオーダーが可能となり、ユーザーがアクセスできる流動性が向上することで、価格の滑りを限定的にすることが可能です。Raydiumの独自トークンRAYはユーザーへのインセンティブ付与のために利用され、手数料の分配や流動性提供による利回りの獲得機会を提供します。
Serumのほうも取引高を順調に伸ばしており、2月末までに1000億円相当の取引が既に実行されています。イーサリアムとスマートコントラクト領域を競いプロジェクトとしてはコスモス(COSMOS)やポルカドット(Polkadot)の名が挙がることが多いですが、SolanaとSerum、Raydiumによって形成されるエコシステムは急速に拡大しており、ブロックチェーンの専門家のみならず、ユーザーや投資家も無視できない規模の経済圏が形成されつつあると言って良いでしょう。